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第7話 もう一つの能力①

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 言葉にならなかった。
 時間にしてわずか数秒だったが、その黒装束の3人組はその場を駆け抜け、どこかへ逃げた。
 姿は一瞬にして見えなくなる。
  
「は? なにが起こっているんだ……」

 頭が働かない。
 ……なんで? どうして? いきなり?
 理解が出来ない。

「どうしてサクヤが……」
 
 ただ、実際にサクヤはさらわれた。
 なにも出来ず、さらわれたのだ。

 そう思ったとき――怒りが湧いた。
 物凄い怒りだ。今までの中でも最大級の怒りといっても過言ではない。
 俺はそれを剥き出しにする。
 
「ふ、ふざけるなあああああああああああああ!」

 俺は怒りのままに走り出す。
 黒装束のやつらの姿は見えないが、走り去った方向はわかる。
 そっちの方に足を動かす。

「くそが馬鹿にしやがって!!」

 しかし、追いつける気がしない。
 いくら何でも早すぎる。というかもう、どこにいるのかさえわからない。
 間違いなく、魔法だろう。詠唱も唱えていたし。
 ならば、こうだ!

「我の体に導かれし、風よ。聖なる力によって汝から逃げる速さを! 【ウィンド】」

 俺もあいつらと同じ詠唱を唱えて、魔法を使う。
 今度は前とは違い、あの声は聞こえなかったが、魔法は簡単に使えた。
 なぜなのかわからないが、いまはそんなことを考えている暇などない。

「絶対に追い付いてやる!」

 物凄い速さで道を走って行く。速さで道には風が舞う。 
 幸い走るところには人がおらず、迷惑にはならなかった。

「見つけた!」

 結構走り、やっと奴らを見つける。
 手にはサクヤが捕まっていた。

「うわ、なんだあの子供! おい、なんか追いかけて来る人が来てるぞ!」

「なに、子供だと!?」

 どうやら俺の存在に気付いたらしい。

「ああ、子供だよ。しかも、こいつ俺たち同じ【ウィンド】使ってやがる」

「な、なに!? 魔法が使える子供だと……いやな予感がする。早く逃げろ!!」

「もう遅い!」

 そんな話をしている間に追い付いた。
 
「行くぞ。我が体に導かりし、水よ。聖なる力で汝を打ち砕かん! 【ウォーター】」

「「ッ!?」」

 手から勢いよく水が出て、前にいた奴を攻撃する。
 だが、その水は当たらなかった。

「くそ、走りながら魔法を使うのって難しいな……」

 当たると思って使ったのに全然違うところに飛んで行った。
 意外と難しい……
 俺もあいつらも走ってるからタイミング調整が難しいんだ。
 一体、どうやったら当たるんだよこれ……

「危なかった。こいつの攻撃はヤバい……当たったら一撃でやられるレベルだ」

「そんなに、か……マズいな」

「……仕方ない。俺がここに残ってこいつを潰す。後はお前たちに任せる」

「おお、わかった。そっちは任せる!」

「終わったらいつもの場所で合流だ!」

「おうよ」

 そう言って、一人のやつと二人のやつの二手に分かれた。
 俺はサクヤが捕まっている二人の方を追おうとすると。

「ふふ、見せてやるぜ。俺の力、スキル《無効化》!」

「な……」

 一人だった方に足止めされた。
 具体的に言えば魔法が使えなくなった。
 走るのが遅くなり、結果的に二人の方には逃げられ、こいつと一対一になる。
 
「……ここで逃げ出しても追いつかれるだけだな……」

 二人組の方を追いにいっても多分、追いつかれて意味がない。 
 なら、戦うしかないってことなのか。

 その瞬間。

『ユニークスキル《完全記憶能力》の【記憶解析】を開始します』

 またあの声が聞こえて来る。

『解析完了。結果は以下の通りです』

「今度はなんだ!?」
 
 頭の中に情報が入ってくる。

 スキル《無効化》
 
 説明:あらゆる魔法の攻撃を一度、無効化できる。
    効果範囲は半径3mまでで広範囲魔法は自分のところまでしか無効化できない。
 欠点:一日のうち最大3回までしか使えず、それ以上使おうとしても不可。

『これにて解析結果を終了します』

 その声が聞こえると説明はみえなくなり、元に戻る。

「うぅ……いまのはどういうことなんだ……」
 
 スキルの説明とやらが流れ込んできた。
 なんなんだ、一体……

「なにぶつぶつ独り言しゃべってやがる。それといい、子供のくせに魔法といい、お前さん……なにかあるな」

「……うるせぇ。それよりも、サクヤをどこにやるつもりだ」

「サクヤ? もしかして……さらった子供の名前か?」

「ああ、そうだよ。なんでそんなことするんだ。意味ないだろ。放せよ!」

「ふん、子供のくせに威勢のいいことだ。……なら、こうしよう。俺に勝ったら教えてやる。簡単なことだろう」

「勝つって……」

「ぶっ倒すってことだ」

「……」

 人を倒す。つまり、やり合うってことだ。

「まあ、でも無理だろうな。お前の攻撃など俺には効かないんだから」

「……効かない、だと?」

「ああそうだ。さっきも見ただろ。お前の魔法を無効化したんだ。これは俺のスキル《無効化》の能力だよ。すべての魔法を無効化するってな。最強だろ?」

 ニヤリと笑う。
 勝利を確信している顔だ。

「俺はお前を認めるよ。確かにお前は凄いさ。まだ小さいのに魔法を使える。しかも今のところ二つの種類も使った。だが、無効化されちゃうんなら話は別だろう。お前に勝ち目などない」

 そう言われる。
 
 くそ、どうしたら……っていや、待てよ。こいつの話と頭に流れて来た情報は妙に合致している。
 もしも、今のがユニークスキルである俺の能力で、本当に解析ができているのだとしたら……

「やるしか、ない……」

 人と戦うことを決意する。
 殴り合ったことなど一度たりともないが、俺には魔法がある。
 これであいつを倒して、サクヤを助けに行く。これが最善の手だ。

「……結局やるのかよ。大人しくしてりゃなにもしなかったのに。残念だ」

 後、二回スキルを使わせるしかない。
 話はそれからだ。
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