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第四章
6 稀代の虚言者
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「俺の名はディヘイエルド。長いからエルドとでも呼んでくれ。この空間は時空の流れを絶ってあるから、ここにどれだけいようとも元の世界の時間は動いておらぬし、お主らが年単位でここにいようとも年は取らぬ。あと何か聞きたいことはあるか? 安心できるまでいくらでも答えよう」
エルドというやつは僕たちと同じ位置に降りてきて、ぺらぺら喋りだした。
とりあえず今の説明で、この世界にいることで何かに影響はしない判断できた。
「どうやったらここを出られる?」
「話が終わったら速やかに解放しよう。まあ、上位魔人のお主なれば、自力で出られるだろうがな」
「魔力が全く使えないけど?」
「それでも、だ。魔眼とは魔力を視て操るだけの力ではないよ」
言われて、少し集中してみると魔眼が発動した。魔力は動かせないし視えないのに、自分で自分の瞳の色が理解できた。
「本当だ……。どうして?」
「その話も必要なので、これからする」
「僕がこの世界から無理矢理脱出したら?」
「話を聞いてくれるまで呼び戻す。どうしても嫌だというなら、諦める。だが、聞いておいたほうが良いぞ」
僕は腕を組んで考えた。
何の話をするのか見当もつかないし、一旦無理やりここへ連れてきた癖に、こちらの意思を汲む姿勢を見せている。
なんとなく、嘘をついているようには思えなかった。
「ヒスイは今のうちに聞きたいことは?」
背後のヒスイに水を向けてみた。
「どんな話で、どうして私達なのか、先に触りを教えてもらえないかしら」
僕に聞かれる前から答えを用意していた。
向き直って、エルドに告げる。
「それもそうだな。こういうことだ」
エルドは一泊置いて、一息に話した。
「預言者は嘘をついた。知っているのは、最初に異世界から召喚させられた我々のみだ。魔王はこの世界の瘴気から生まれたのではない。異世界から来た人間が、多くの魔物をその身に取り込んだ存在だ」
言われた言葉の意味を考えている間に、ヒスイが質問を返した。
「それなら、魔王が再臨するのも嘘よね? 何のために勇者や聖女を喚ばせているの?」
「己が撒いた種を、再び余所者に押し付けるためだ」
「つまり、自分で一度喚んでおいて、そいつが魔王になったから、尻拭いのために別の人に喚ばせて……歯止めが効かなくなったのが今の状況ってことか?」
「大体そうだ。飲み込みが早いな」
エルドは一瞬、にやりと口元を歪ませたが、すぐに真面目な顔に戻った。
「詳しい話を聞く準備はもういいか? まあ、今語ったことがほぼ全てだがな」
僕はヒスイと顔を見合わせてからエルドに向き直り、同時に頷いた。
***
預言者は予知能力者などではなく、マッドサイエンティストならぬ狂魔道士だった。
自身の才能と貴族の出自を利用し、好きな研究に好きなだけ没頭した結果、異世界から人間を召喚する術を編み出した。
その頃には、彼女の研究のお陰で世界の文明は進み、貴族は元より平民までも生活は楽になった。
周囲は「召喚」を「誘拐行為」と認識できても、止められるものは誰もいなかった。
世界を跨いだ人間は、元の世界と今の世界の差を埋めるために、自身の防衛本能から強大な力を発現させる。
預言者はこのことに気がつくと、狂喜乱舞した。
最初に喚んだ一人目を実験動物のように扱い、悪逆非道な人体実験を繰り返した結果、廃人にした。
使えなくなったと見るや、すぐさま二度目の召喚を行った。
召喚陣は改良が加えられた結果、次は七人も喚び出すことに成功した。
彼らも、最初の一人と似たような目に遭った。
「ヨイチよ。怒りは分かるが、今は話に集中してくれ」
「……ああ、すまん」
預言者のあまりの行動に、思わず力が入っていた。
空間に罅が入っている。
魔眼でそこを撫でるように見ることで、罅を修復することができた。
エルドが表情を動かした。驚いているようだ。
「これは、想像以上だな。やはり、お主らにしか出来ぬことがある」
「何だ?」
「とりあえず、話が済んでからだ」
「わかった」
「七人のうち一人が魔物との相性を調べるとかいう実験で、魔物に近づけた。預言者が何をしたかったのかは、俺には未だに理解できん。そいつは近づいた魔物を……食ったんだ」
「生で?」
ヒスイのツッコミに、その場が和む。
「問題はそこじゃなくない?」
「大事よ。生の魔物肉って豚肉なんか目じゃないほど危ないのに」
「俺の言い方が拙かったな。食欲を満たすという意味で食べたわけじゃない。魔物の力を取り込んだのだ」
「はあ……」
ヒスイは腑に落ちないといった風だが、今はこのまま続きを聞くことにしてくれたようだ。
「で、預言者はそいつに次々と魔物を食わせ……取り込ませた。そいつは魔物の力の分よりも、どんどん強くなった」
そして強くなりすぎた結果、ある日突然人としての自我を失い、暴走した。
研究施設はおろか、辺り一帯が地平線まで更地になるほどの破壊をしたが、預言者は自分だけ生き延びた。
他国に逃げ、顔を変えて『預言者』を名乗り、魔王討伐には異世界から召喚した人間が必要だと説いて回った。
「あとは今伝わっている話のとおりだ。スタグハッシュとアマダンが当たりを引いた。魔王は勇者と聖女の手によって倒された。しかし、魔王誕生時の破壊で生き延びたのは、預言者だけではなかった」
察しの悪い僕にも、それが誰か見当がついた。
「エルド達、魔王にならなかった六人?」
「そうだ。俺たちも人体実験の果てに不老長寿と魔王には劣るが力を得た。中には身体を失っても活動できるやつもいた」
「召喚された人間達を操ったり、城で人間に影響を与えていた連中か」
「ああ」
「エルドも、僕を操るつもりで?」
僕がただ、疑問に思っただけだから口に乗せた言葉に、ヒスイが反応し、僕の前に出た。
「ヨイチくんに何するつもり?」
「ヒスイ、大丈夫だよ。エルドは僕に何も出来ない」
「その通りだ。操るつもりは毛頭ない。そもそも手出しできぬ。あの預言者に何もされずに、ここまで強くなれた人間はいない」
「ほらね。ありがとう、ヒスイ」
庇おうとしてくれたことにお礼を言うと、ヒスイは「それなら、いいのだけど……」と小声で言いながら、僕の後ろに戻った。
「フフ、聖女殿も素晴らしいな」
「あの、それなんですけど……」
「アマダンで聖女ではないと判定されたことだな? あの石は間違っていないが、石の使い方を間違えたのだ」
「使い方? 手を置くだけじゃ駄目なの?」
「いいや、手を置くことは合っている。間違っていたのは……聖女を一人と決めつけたことだ」
頭の上に疑問符を浮かべる僕達に、エルドが続けた。
「まず聖女の定義から説明しようか。勇者の助けとなる存在とは聞いているな? 具体的には、魔王討伐に必要な道具や装備を整え、献身で勇者の力を高める存在だ。献身とはつまり、食事だ。最初の聖女は一人で全てをこなしたが」
「ああ、そういう」
「納得したわ」
だからローズのポーションが僕だけにものすごい効き目を叩き出したり、ツキコの作った武器がおかしくなったりしたのか。
そして、食事はヒスイが作ってくれたものを、一日一食以上は必ず食べている。いつも美味しいとは思っていだけど、それ以上の意味があったのだ。
「今代の聖女は三人。つまり、三人一緒に石に手を置けば光ったはずだ」
アマダン城の石はリートグルクが保管している。
三人が「自分の目で確認したい」とか言ったら、王様に頼んでみようかな。
いや、待てよ。
「聖女はわかったけど、勇者が僕っていうのは合ってるの?」
エルドは自信たっぷりに首を縦に振った。
「勇者とは、聖女に愛される存在のことだ」
数秒置いて、僕とヒスイが同時に顔を耳まで赤くする。そっとヒスイを伺うと、ヒスイも僕を見ようとしていた。視線が合って、同時に目をそらした。
「なんだ、初々しいな。少し外そうか」
「いや、話を!」
「話を続けてください!」
「俗な言い方をすれば、ヒスイが筆頭聖女だな。お互いに想い合っている」
話を続けてとお願いしたのはこちらだ。自業自得なのだけど、追い打ちをかけられている。
「他の二人もヨイチに好意を抱いている。今は別の者を愛し始めたようだが、ヨイチへの好意は変わっていない。聖女としての資格は十分にある」
ヒスイは完全に顔を覆ってしまった。
「初代勇者と聖女が一人ずつなのは、その二人の間にしか恋慕が発生しなかったせいであろうな。ヨイチは三人から同時に好意を持たれ、筆頭聖女からは更に愛されている。なかなかできることじゃないぞ。二人を同時にここへ呼べたのも、その愛ゆえだ」
「ごめんなさいわかりましたからそのくらいで勘弁してください」
先に音を上げたのは僕だった。
「そうか、理解したか。では、俺の頼みを一つ聞いてくれないか」
突然の羞恥タイムから一転して、真面目な話に戻った。
まだ顔は熱いが、仕方ない。
「その力で、アジャイルを滅してくれ」
***
見つかった。
影の中にいる間に誰かに見つかることなんて初めてだ。
とんでもない光量でカーテンの影に追い込まれた時は、流石に駄目かと思った。
助けてくれたのは、ババアだ。
「手強い男よのう。女はもう護りに守られておる」
「他に何か手はないのか?」
「お主がもうすこし上手くやれば済んだのじゃ」
「八つ当たりか、ババア」
「うるさい!」
キイキイわめくババアよりも、オレは横伏が気に食わない。
女の影にいた三日間、ずっとあいつを観察していた。
他にも女を侍らせてやがった。
ハーレムじゃんか。そういうポジションって、勇者のオレがやるやつじゃねぇの?
「あいつは絶対許さん。どんな手でも使う。何か考えろ」
ババアに命令すると、ババアは喚くのをやめて押し黙った。
「ふん、多少はマシなことを言うようになったの。では……」
ババアの提案を聞くために、オレは何人かを殺し、建物を手に入れ、金を盗んだ。
たったこれだけの準備で、横伏を捻じ伏せられるなら楽なもんだ。
エルドというやつは僕たちと同じ位置に降りてきて、ぺらぺら喋りだした。
とりあえず今の説明で、この世界にいることで何かに影響はしない判断できた。
「どうやったらここを出られる?」
「話が終わったら速やかに解放しよう。まあ、上位魔人のお主なれば、自力で出られるだろうがな」
「魔力が全く使えないけど?」
「それでも、だ。魔眼とは魔力を視て操るだけの力ではないよ」
言われて、少し集中してみると魔眼が発動した。魔力は動かせないし視えないのに、自分で自分の瞳の色が理解できた。
「本当だ……。どうして?」
「その話も必要なので、これからする」
「僕がこの世界から無理矢理脱出したら?」
「話を聞いてくれるまで呼び戻す。どうしても嫌だというなら、諦める。だが、聞いておいたほうが良いぞ」
僕は腕を組んで考えた。
何の話をするのか見当もつかないし、一旦無理やりここへ連れてきた癖に、こちらの意思を汲む姿勢を見せている。
なんとなく、嘘をついているようには思えなかった。
「ヒスイは今のうちに聞きたいことは?」
背後のヒスイに水を向けてみた。
「どんな話で、どうして私達なのか、先に触りを教えてもらえないかしら」
僕に聞かれる前から答えを用意していた。
向き直って、エルドに告げる。
「それもそうだな。こういうことだ」
エルドは一泊置いて、一息に話した。
「預言者は嘘をついた。知っているのは、最初に異世界から召喚させられた我々のみだ。魔王はこの世界の瘴気から生まれたのではない。異世界から来た人間が、多くの魔物をその身に取り込んだ存在だ」
言われた言葉の意味を考えている間に、ヒスイが質問を返した。
「それなら、魔王が再臨するのも嘘よね? 何のために勇者や聖女を喚ばせているの?」
「己が撒いた種を、再び余所者に押し付けるためだ」
「つまり、自分で一度喚んでおいて、そいつが魔王になったから、尻拭いのために別の人に喚ばせて……歯止めが効かなくなったのが今の状況ってことか?」
「大体そうだ。飲み込みが早いな」
エルドは一瞬、にやりと口元を歪ませたが、すぐに真面目な顔に戻った。
「詳しい話を聞く準備はもういいか? まあ、今語ったことがほぼ全てだがな」
僕はヒスイと顔を見合わせてからエルドに向き直り、同時に頷いた。
***
預言者は予知能力者などではなく、マッドサイエンティストならぬ狂魔道士だった。
自身の才能と貴族の出自を利用し、好きな研究に好きなだけ没頭した結果、異世界から人間を召喚する術を編み出した。
その頃には、彼女の研究のお陰で世界の文明は進み、貴族は元より平民までも生活は楽になった。
周囲は「召喚」を「誘拐行為」と認識できても、止められるものは誰もいなかった。
世界を跨いだ人間は、元の世界と今の世界の差を埋めるために、自身の防衛本能から強大な力を発現させる。
預言者はこのことに気がつくと、狂喜乱舞した。
最初に喚んだ一人目を実験動物のように扱い、悪逆非道な人体実験を繰り返した結果、廃人にした。
使えなくなったと見るや、すぐさま二度目の召喚を行った。
召喚陣は改良が加えられた結果、次は七人も喚び出すことに成功した。
彼らも、最初の一人と似たような目に遭った。
「ヨイチよ。怒りは分かるが、今は話に集中してくれ」
「……ああ、すまん」
預言者のあまりの行動に、思わず力が入っていた。
空間に罅が入っている。
魔眼でそこを撫でるように見ることで、罅を修復することができた。
エルドが表情を動かした。驚いているようだ。
「これは、想像以上だな。やはり、お主らにしか出来ぬことがある」
「何だ?」
「とりあえず、話が済んでからだ」
「わかった」
「七人のうち一人が魔物との相性を調べるとかいう実験で、魔物に近づけた。預言者が何をしたかったのかは、俺には未だに理解できん。そいつは近づいた魔物を……食ったんだ」
「生で?」
ヒスイのツッコミに、その場が和む。
「問題はそこじゃなくない?」
「大事よ。生の魔物肉って豚肉なんか目じゃないほど危ないのに」
「俺の言い方が拙かったな。食欲を満たすという意味で食べたわけじゃない。魔物の力を取り込んだのだ」
「はあ……」
ヒスイは腑に落ちないといった風だが、今はこのまま続きを聞くことにしてくれたようだ。
「で、預言者はそいつに次々と魔物を食わせ……取り込ませた。そいつは魔物の力の分よりも、どんどん強くなった」
そして強くなりすぎた結果、ある日突然人としての自我を失い、暴走した。
研究施設はおろか、辺り一帯が地平線まで更地になるほどの破壊をしたが、預言者は自分だけ生き延びた。
他国に逃げ、顔を変えて『預言者』を名乗り、魔王討伐には異世界から召喚した人間が必要だと説いて回った。
「あとは今伝わっている話のとおりだ。スタグハッシュとアマダンが当たりを引いた。魔王は勇者と聖女の手によって倒された。しかし、魔王誕生時の破壊で生き延びたのは、預言者だけではなかった」
察しの悪い僕にも、それが誰か見当がついた。
「エルド達、魔王にならなかった六人?」
「そうだ。俺たちも人体実験の果てに不老長寿と魔王には劣るが力を得た。中には身体を失っても活動できるやつもいた」
「召喚された人間達を操ったり、城で人間に影響を与えていた連中か」
「ああ」
「エルドも、僕を操るつもりで?」
僕がただ、疑問に思っただけだから口に乗せた言葉に、ヒスイが反応し、僕の前に出た。
「ヨイチくんに何するつもり?」
「ヒスイ、大丈夫だよ。エルドは僕に何も出来ない」
「その通りだ。操るつもりは毛頭ない。そもそも手出しできぬ。あの預言者に何もされずに、ここまで強くなれた人間はいない」
「ほらね。ありがとう、ヒスイ」
庇おうとしてくれたことにお礼を言うと、ヒスイは「それなら、いいのだけど……」と小声で言いながら、僕の後ろに戻った。
「フフ、聖女殿も素晴らしいな」
「あの、それなんですけど……」
「アマダンで聖女ではないと判定されたことだな? あの石は間違っていないが、石の使い方を間違えたのだ」
「使い方? 手を置くだけじゃ駄目なの?」
「いいや、手を置くことは合っている。間違っていたのは……聖女を一人と決めつけたことだ」
頭の上に疑問符を浮かべる僕達に、エルドが続けた。
「まず聖女の定義から説明しようか。勇者の助けとなる存在とは聞いているな? 具体的には、魔王討伐に必要な道具や装備を整え、献身で勇者の力を高める存在だ。献身とはつまり、食事だ。最初の聖女は一人で全てをこなしたが」
「ああ、そういう」
「納得したわ」
だからローズのポーションが僕だけにものすごい効き目を叩き出したり、ツキコの作った武器がおかしくなったりしたのか。
そして、食事はヒスイが作ってくれたものを、一日一食以上は必ず食べている。いつも美味しいとは思っていだけど、それ以上の意味があったのだ。
「今代の聖女は三人。つまり、三人一緒に石に手を置けば光ったはずだ」
アマダン城の石はリートグルクが保管している。
三人が「自分の目で確認したい」とか言ったら、王様に頼んでみようかな。
いや、待てよ。
「聖女はわかったけど、勇者が僕っていうのは合ってるの?」
エルドは自信たっぷりに首を縦に振った。
「勇者とは、聖女に愛される存在のことだ」
数秒置いて、僕とヒスイが同時に顔を耳まで赤くする。そっとヒスイを伺うと、ヒスイも僕を見ようとしていた。視線が合って、同時に目をそらした。
「なんだ、初々しいな。少し外そうか」
「いや、話を!」
「話を続けてください!」
「俗な言い方をすれば、ヒスイが筆頭聖女だな。お互いに想い合っている」
話を続けてとお願いしたのはこちらだ。自業自得なのだけど、追い打ちをかけられている。
「他の二人もヨイチに好意を抱いている。今は別の者を愛し始めたようだが、ヨイチへの好意は変わっていない。聖女としての資格は十分にある」
ヒスイは完全に顔を覆ってしまった。
「初代勇者と聖女が一人ずつなのは、その二人の間にしか恋慕が発生しなかったせいであろうな。ヨイチは三人から同時に好意を持たれ、筆頭聖女からは更に愛されている。なかなかできることじゃないぞ。二人を同時にここへ呼べたのも、その愛ゆえだ」
「ごめんなさいわかりましたからそのくらいで勘弁してください」
先に音を上げたのは僕だった。
「そうか、理解したか。では、俺の頼みを一つ聞いてくれないか」
突然の羞恥タイムから一転して、真面目な話に戻った。
まだ顔は熱いが、仕方ない。
「その力で、アジャイルを滅してくれ」
***
見つかった。
影の中にいる間に誰かに見つかることなんて初めてだ。
とんでもない光量でカーテンの影に追い込まれた時は、流石に駄目かと思った。
助けてくれたのは、ババアだ。
「手強い男よのう。女はもう護りに守られておる」
「他に何か手はないのか?」
「お主がもうすこし上手くやれば済んだのじゃ」
「八つ当たりか、ババア」
「うるさい!」
キイキイわめくババアよりも、オレは横伏が気に食わない。
女の影にいた三日間、ずっとあいつを観察していた。
他にも女を侍らせてやがった。
ハーレムじゃんか。そういうポジションって、勇者のオレがやるやつじゃねぇの?
「あいつは絶対許さん。どんな手でも使う。何か考えろ」
ババアに命令すると、ババアは喚くのをやめて押し黙った。
「ふん、多少はマシなことを言うようになったの。では……」
ババアの提案を聞くために、オレは何人かを殺し、建物を手に入れ、金を盗んだ。
たったこれだけの準備で、横伏を捻じ伏せられるなら楽なもんだ。
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