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第三章
15 因業
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ランクSの冒険者はギルドの指示なしに固定パーティに身を置くことはできない。
しかし、僕がチェスタのパーティとしょっちゅう行動を共にしていることは、もはや周知の事実だ。
統括から何も言われないどころか、どちらか一方のみでクエストに出かけようとすると「今日は皆と一緒ではないのか」なんて聞かれたりする。
チェスタにベエマスの革鎧を試着してもらった後、揃って冒険者ギルドへ赴いた。
勿論クエストを請けるためだ。
「ヨイチ、今日はパーティか。もうクエストは決まってしまったか?」
統括が少し慌てた様子で僕に声をかけてきた。
ランクA以上の冒険者はギルドから、週の半分は待機せよと命令が下されている。
魔物が相手の仕事だから、毎日そう都合よくスケジュールが決まることは多くない。
ギルド命令であっても、先にクエストを請けていればクエストを優先させる。
「チェスタ」
「ああ、こっちは気にするな」
「ありがとう」
まだクエストを決める前だったので、僕は統括について統括室へ入った。
「つい最近、モルイの北の山へ行かなかったか?」
ベエマスを討伐したことは、ギルドに報告していない。
ベエマスの討伐クエストは出ていなかった。相手は魔物なので、倒すのに問題はないはずなのだけど……まずかったかな。
「行きました。ベエマスの素材が欲しくて、四体討伐しました」
正直に話しつつ、家でメイドをしている元ベエマスのモモのことは、なんとなく伏せておく。
「なるほど。いや、そのこと自体は全く問題ないのだが」
僕が不安になっているのを察してくれたのか、統括がすかさずフォローしてくれた。
「例の国が、理屈は不明だが……北に魔王が出たなどと言い始めてな」
例の国っていうのはスタグハッシュだ。リートグルク国やモルイの冒険者ギルドが総力を挙げて召喚や横暴の阻止を図っているのに、今のところ目立った効果はない。
「魔王?」
「半月ほど前、北の山に魔物以外の気配を察知したと」
「僕ですね、それ」
「話を聞く限りそうだろうな」
人の踏み入らない山に魔物以外の気配がしたなら、魔王だと早とちりするのも仕方ない、のかな。
「魔王は魔物の王なのだから、魔物に似た気配だろうに。スタグハッシュから遠い北の山の気配を探り、それを魔物ではないと断じておきながら、何故魔王と決めつけるのか。理解しがたい」
「確かに」
「魔王が出現したというなら、公式発表までに半月の時間差があることも解せない。つまり魔王出現は、嘘だ」
断言しちゃったよ。
「僕もそう思います」
あの山には確かに危険度Sクラスの魔物の気配がたくさんあったが、魔王かと問われたら首を捻らざるを得ない。
すべての魔物を統率し、世を混乱に陥れるような存在だとしたら、少なくともベエマス四体よりは強いはずだ。
「だというのに、スタグハッシュは魔王討伐に向けて勇者たちへの支援を要求してきた。不思議なことに、召喚した人間だけに負担を強いることはできないから、ランクSの冒険者を寄越せと」
召喚した人間に負担を強いることは……って、今更、何を。
「断れませんか」
「当然断った。だが、向こうも簡単に諦めない。仕方なく、スタグハッシュに潜伏中のアンドリューに打診した」
アンドリューは、よほど理不尽な内容じゃない限り、仕事を拒まないタイプだ。
「アンドリューには潜伏調査のほかに、スタグハッシュ周辺の高危険度クエストを任せていた。そこが手薄になる」
スタグハッシュの冒険者ギルドには、専属のランクSが一人もいない。
全ての冒険者ギルドは週に一度、他のギルドに定期報告を出しているのに、スタグハッシュだけはここ数年殆ど無音状態だという。
さすがにおかしいので他の冒険者ギルドから度々調査が入るが、毎回はぐらかされてしまう。
だから今回アンドリューはスタグハッシュに長期滞在し、調査のことは一切表に出さずに冒険者の仕事をしているように見せかけて、いろいろと探っていた。
「話は分かりましたが……正直不安というか」
城に入るわけではないし、元クラスメイト達と城下町でかち合う確率はかなり低い。それでも、少し怖い。
「俺や近くにいる人間は気づき難いが、ヨイチの見た目は来た時に比べ、かなり変わっている。身体は成長し、顔つきも精悍になった。スタグハッシュにいたトウタと別人だと強く言い張れば、身元が暴かれることもないだろう」
「……そうですか?」
「まあ、本人が一番気づかないのは仕方ない」
統括は口元をニヤリとゆがめた。
身体が大きくなったのは、防具のこともあって自覚している。顔つきは……よくわからないや。
スタグハッシュへ行くこと自体は不安だけど、今の僕には転移魔法がある。何かあってもその場からすぐに逃げ出せる。
それに、アンドリューの代わりは、自惚れではなく事実僕にしかできない。
「わかりました。やります」
アンドリューの代わりということは、スタグハッシュに滞在しなければならない。
今回はリートグルクの時のように、いつでも出入りできる無料の宿泊施設は用意してもらえない。
しかもスタグハッシュの冒険者ギルドはランクA以上の冒険者に待機命令を出していないので、高危険度のクエストが出ても呼び出しは行っていない。
毎日自分でギルドに足を運び、クエストを探すしかないのだ。
……冒険者の大半がやっている作業なのに、ランクA以上の期間の方が長い上パーティの時はチェスタ達任せだから、そういうものだということが頭から抜けていた。
宿泊場所の方は、統括の提案で解決した。
「向こうにアンドリューが借りてる小さな家があるから、そこに住んでる振りをしようと思うんだ」
メイドさん達へ話をするために、一旦家に帰ってきた。
「夜は転移魔法でこっちに帰ってきて、朝からクエストが終わるまでは向こうで過ごすことになる」
「でしたら主様、私はスタグハッシュの家に住みましょう」
申し出てくれたのは、モモだ。
確かに、誰の気配もしない家よりカモフラージュの成功率は上がる。
「いいの? 聖獣ってソウルリンクした人の近くにいた方がいいって……」
「それはそうですが、緊急事態ですもの。一日一度、主様のそばに居られる時間があれば十分です」
モモはすっかり板ついたメイドしぐさで頭を下げた。
「じゃあ、お願いするよ」
「モモちゃん、しっかり頼んだわ」
「はい、お任せください!」
メイドさん達がその場で頷きあっている。何? 何を通じ合っているの?
統括から話のあった二日後、僕は因縁の地であるスタグハッシュに足を踏み入れていた。
雰囲気は……モルイに比べると暗い。
城下町だというのに人通りはモルイの半分もいないし、道行く人にやたらジロジロと見られる。
僕の目つきが悪くて怖がられているのではなく、警戒されている。
ただし悪意は感じられない。余所者が珍しいという雰囲気だ。
早速アンドリューが借りている家へ向かった。
キッチンと部屋が二つの、一人暮らしには十分すぎる大きさだ。
整理整頓はされているが、アンドリュー自身がほとんど寝に帰ってくるのみだそうで、部屋の隅に埃が積もっている。
「私はここでメイド業に専念いたします」
モモはいつのまにか両手や背後に家事道具一式をビシッと構えて仁王立ちしていた。
うん。随分な仕上がりになっております。
「よろしくね」
僕とヒイロはいろいろと諦めて、モモを残して家を出た。
冒険者ギルドハウスは、街中以上に閑散としていた。
受付さんや職員が一人もおらず、クエストボードと受付さんが使う端末のみが『ご自由に』という張り紙と共に置いてある。
セルフでクエスト受注から終了、報酬手続きまでやれということのようだ。
一見合理的に見えるけれど、冒険者にとって重要なのは『人づてに聞いた情報』だ。
冒険者カードは、望めば様々な情報を読むことができるが、その数は膨大だ。
ギルドの受付さんや事務の人は、それらの情報をまとめ整頓し、冒険者が必要な分だけ正しく伝えてくれる司書のような存在だ。
その人たちがいないということは、全て自分の目と足で魔物に対応しなければならない。
「問題なくない?」
足元のヒイロが意思疎通で話しかけてくる。
確かに僕は、危険度Sの群れにバックアタックやサイドアタックされたとしても、一つも負ける気がしない。
「ほかの冒険者は、ここじゃ活動し辛いだろ」
「そっか」
ヒイロは座り込み、興味なさそうに後ろ足で首元を掻いた。
クエストの数自体も少ないが、危険度Sがひとつ貼られていた。
それを手に、セルフクエスト受注機の前へ進む。
「おい、それはやめとけ」
後ろから声がかかる。男口調だけど、声をかけてきたのは女性だ。
真っ赤な髪をポニーテールにして、剣士風の装備を着ている。ダークブラウンの瞳には真面目な雰囲気が漂っていた。
「何故?」
「あんた、アンドリューの代わりに来たランクS冒険者だろ? そのクエストは誰にも達成できないようになっている」
クエスト内容はいたってシンプルで、西の森の一番深いところにいる『レッドキャップ』という魔物の討伐だ。
珍しいのは、討伐数が十に満たない場合はクエスト失敗と見做される、という点。
「十もいないってこと?」
「逆だ。百以上いる。光属性でも倒すのが難しいアンデッドが、全てまとめて襲い掛かってくるんだ。アンドリューも他の冒険者の忠告を聞いて取りやめた」
「そんな恐ろしいものを放置しておくわけには」
「それが貼られたのはもう何年も前だが、未だに町や人を襲ったことはない。そっとしておくのが一番だ」
「なるほど。全部倒せばいいわけですね」
「話聞いてたか!?」
スタグハッシュ西の森なら何度も行っている。モルイの冒険者ギルドでも、森のクエストは貼られる。
でもレッドキャップという魔物は初耳だし、百体以上の群れと化しているなら討伐隊が結成されてもおかしくない。
こんな怪しいクエスト、放っておけない。
「聞いてたよ。心配してくれてありがとう」
ポニーテールの人が何か言う前に、冒険者カードとメモを受注機に通した。これでクエストを請けたことになる。
「……私はファウラ。ランクはA+。一応、光属性を持っている」
「? はい」
「臨時で構わないから、パーティに入れてくれ。そのクエストには因縁があるんだ」
なんだか断り切れない雰囲気だったし、ヒイロが警戒しなかったので、ファウラと組むことにした。
しかし、僕がチェスタのパーティとしょっちゅう行動を共にしていることは、もはや周知の事実だ。
統括から何も言われないどころか、どちらか一方のみでクエストに出かけようとすると「今日は皆と一緒ではないのか」なんて聞かれたりする。
チェスタにベエマスの革鎧を試着してもらった後、揃って冒険者ギルドへ赴いた。
勿論クエストを請けるためだ。
「ヨイチ、今日はパーティか。もうクエストは決まってしまったか?」
統括が少し慌てた様子で僕に声をかけてきた。
ランクA以上の冒険者はギルドから、週の半分は待機せよと命令が下されている。
魔物が相手の仕事だから、毎日そう都合よくスケジュールが決まることは多くない。
ギルド命令であっても、先にクエストを請けていればクエストを優先させる。
「チェスタ」
「ああ、こっちは気にするな」
「ありがとう」
まだクエストを決める前だったので、僕は統括について統括室へ入った。
「つい最近、モルイの北の山へ行かなかったか?」
ベエマスを討伐したことは、ギルドに報告していない。
ベエマスの討伐クエストは出ていなかった。相手は魔物なので、倒すのに問題はないはずなのだけど……まずかったかな。
「行きました。ベエマスの素材が欲しくて、四体討伐しました」
正直に話しつつ、家でメイドをしている元ベエマスのモモのことは、なんとなく伏せておく。
「なるほど。いや、そのこと自体は全く問題ないのだが」
僕が不安になっているのを察してくれたのか、統括がすかさずフォローしてくれた。
「例の国が、理屈は不明だが……北に魔王が出たなどと言い始めてな」
例の国っていうのはスタグハッシュだ。リートグルク国やモルイの冒険者ギルドが総力を挙げて召喚や横暴の阻止を図っているのに、今のところ目立った効果はない。
「魔王?」
「半月ほど前、北の山に魔物以外の気配を察知したと」
「僕ですね、それ」
「話を聞く限りそうだろうな」
人の踏み入らない山に魔物以外の気配がしたなら、魔王だと早とちりするのも仕方ない、のかな。
「魔王は魔物の王なのだから、魔物に似た気配だろうに。スタグハッシュから遠い北の山の気配を探り、それを魔物ではないと断じておきながら、何故魔王と決めつけるのか。理解しがたい」
「確かに」
「魔王が出現したというなら、公式発表までに半月の時間差があることも解せない。つまり魔王出現は、嘘だ」
断言しちゃったよ。
「僕もそう思います」
あの山には確かに危険度Sクラスの魔物の気配がたくさんあったが、魔王かと問われたら首を捻らざるを得ない。
すべての魔物を統率し、世を混乱に陥れるような存在だとしたら、少なくともベエマス四体よりは強いはずだ。
「だというのに、スタグハッシュは魔王討伐に向けて勇者たちへの支援を要求してきた。不思議なことに、召喚した人間だけに負担を強いることはできないから、ランクSの冒険者を寄越せと」
召喚した人間に負担を強いることは……って、今更、何を。
「断れませんか」
「当然断った。だが、向こうも簡単に諦めない。仕方なく、スタグハッシュに潜伏中のアンドリューに打診した」
アンドリューは、よほど理不尽な内容じゃない限り、仕事を拒まないタイプだ。
「アンドリューには潜伏調査のほかに、スタグハッシュ周辺の高危険度クエストを任せていた。そこが手薄になる」
スタグハッシュの冒険者ギルドには、専属のランクSが一人もいない。
全ての冒険者ギルドは週に一度、他のギルドに定期報告を出しているのに、スタグハッシュだけはここ数年殆ど無音状態だという。
さすがにおかしいので他の冒険者ギルドから度々調査が入るが、毎回はぐらかされてしまう。
だから今回アンドリューはスタグハッシュに長期滞在し、調査のことは一切表に出さずに冒険者の仕事をしているように見せかけて、いろいろと探っていた。
「話は分かりましたが……正直不安というか」
城に入るわけではないし、元クラスメイト達と城下町でかち合う確率はかなり低い。それでも、少し怖い。
「俺や近くにいる人間は気づき難いが、ヨイチの見た目は来た時に比べ、かなり変わっている。身体は成長し、顔つきも精悍になった。スタグハッシュにいたトウタと別人だと強く言い張れば、身元が暴かれることもないだろう」
「……そうですか?」
「まあ、本人が一番気づかないのは仕方ない」
統括は口元をニヤリとゆがめた。
身体が大きくなったのは、防具のこともあって自覚している。顔つきは……よくわからないや。
スタグハッシュへ行くこと自体は不安だけど、今の僕には転移魔法がある。何かあってもその場からすぐに逃げ出せる。
それに、アンドリューの代わりは、自惚れではなく事実僕にしかできない。
「わかりました。やります」
アンドリューの代わりということは、スタグハッシュに滞在しなければならない。
今回はリートグルクの時のように、いつでも出入りできる無料の宿泊施設は用意してもらえない。
しかもスタグハッシュの冒険者ギルドはランクA以上の冒険者に待機命令を出していないので、高危険度のクエストが出ても呼び出しは行っていない。
毎日自分でギルドに足を運び、クエストを探すしかないのだ。
……冒険者の大半がやっている作業なのに、ランクA以上の期間の方が長い上パーティの時はチェスタ達任せだから、そういうものだということが頭から抜けていた。
宿泊場所の方は、統括の提案で解決した。
「向こうにアンドリューが借りてる小さな家があるから、そこに住んでる振りをしようと思うんだ」
メイドさん達へ話をするために、一旦家に帰ってきた。
「夜は転移魔法でこっちに帰ってきて、朝からクエストが終わるまでは向こうで過ごすことになる」
「でしたら主様、私はスタグハッシュの家に住みましょう」
申し出てくれたのは、モモだ。
確かに、誰の気配もしない家よりカモフラージュの成功率は上がる。
「いいの? 聖獣ってソウルリンクした人の近くにいた方がいいって……」
「それはそうですが、緊急事態ですもの。一日一度、主様のそばに居られる時間があれば十分です」
モモはすっかり板ついたメイドしぐさで頭を下げた。
「じゃあ、お願いするよ」
「モモちゃん、しっかり頼んだわ」
「はい、お任せください!」
メイドさん達がその場で頷きあっている。何? 何を通じ合っているの?
統括から話のあった二日後、僕は因縁の地であるスタグハッシュに足を踏み入れていた。
雰囲気は……モルイに比べると暗い。
城下町だというのに人通りはモルイの半分もいないし、道行く人にやたらジロジロと見られる。
僕の目つきが悪くて怖がられているのではなく、警戒されている。
ただし悪意は感じられない。余所者が珍しいという雰囲気だ。
早速アンドリューが借りている家へ向かった。
キッチンと部屋が二つの、一人暮らしには十分すぎる大きさだ。
整理整頓はされているが、アンドリュー自身がほとんど寝に帰ってくるのみだそうで、部屋の隅に埃が積もっている。
「私はここでメイド業に専念いたします」
モモはいつのまにか両手や背後に家事道具一式をビシッと構えて仁王立ちしていた。
うん。随分な仕上がりになっております。
「よろしくね」
僕とヒイロはいろいろと諦めて、モモを残して家を出た。
冒険者ギルドハウスは、街中以上に閑散としていた。
受付さんや職員が一人もおらず、クエストボードと受付さんが使う端末のみが『ご自由に』という張り紙と共に置いてある。
セルフでクエスト受注から終了、報酬手続きまでやれということのようだ。
一見合理的に見えるけれど、冒険者にとって重要なのは『人づてに聞いた情報』だ。
冒険者カードは、望めば様々な情報を読むことができるが、その数は膨大だ。
ギルドの受付さんや事務の人は、それらの情報をまとめ整頓し、冒険者が必要な分だけ正しく伝えてくれる司書のような存在だ。
その人たちがいないということは、全て自分の目と足で魔物に対応しなければならない。
「問題なくない?」
足元のヒイロが意思疎通で話しかけてくる。
確かに僕は、危険度Sの群れにバックアタックやサイドアタックされたとしても、一つも負ける気がしない。
「ほかの冒険者は、ここじゃ活動し辛いだろ」
「そっか」
ヒイロは座り込み、興味なさそうに後ろ足で首元を掻いた。
クエストの数自体も少ないが、危険度Sがひとつ貼られていた。
それを手に、セルフクエスト受注機の前へ進む。
「おい、それはやめとけ」
後ろから声がかかる。男口調だけど、声をかけてきたのは女性だ。
真っ赤な髪をポニーテールにして、剣士風の装備を着ている。ダークブラウンの瞳には真面目な雰囲気が漂っていた。
「何故?」
「あんた、アンドリューの代わりに来たランクS冒険者だろ? そのクエストは誰にも達成できないようになっている」
クエスト内容はいたってシンプルで、西の森の一番深いところにいる『レッドキャップ』という魔物の討伐だ。
珍しいのは、討伐数が十に満たない場合はクエスト失敗と見做される、という点。
「十もいないってこと?」
「逆だ。百以上いる。光属性でも倒すのが難しいアンデッドが、全てまとめて襲い掛かってくるんだ。アンドリューも他の冒険者の忠告を聞いて取りやめた」
「そんな恐ろしいものを放置しておくわけには」
「それが貼られたのはもう何年も前だが、未だに町や人を襲ったことはない。そっとしておくのが一番だ」
「なるほど。全部倒せばいいわけですね」
「話聞いてたか!?」
スタグハッシュ西の森なら何度も行っている。モルイの冒険者ギルドでも、森のクエストは貼られる。
でもレッドキャップという魔物は初耳だし、百体以上の群れと化しているなら討伐隊が結成されてもおかしくない。
こんな怪しいクエスト、放っておけない。
「聞いてたよ。心配してくれてありがとう」
ポニーテールの人が何か言う前に、冒険者カードとメモを受注機に通した。これでクエストを請けたことになる。
「……私はファウラ。ランクはA+。一応、光属性を持っている」
「? はい」
「臨時で構わないから、パーティに入れてくれ。そのクエストには因縁があるんだ」
なんだか断り切れない雰囲気だったし、ヒイロが警戒しなかったので、ファウラと組むことにした。
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