55 / 103
第三章
5 ポーション
しおりを挟む
イネアルさんにあることを相談された僕は、チェスタのパーティの皆に会いに行った。
チェスタ本人は奥さんの実家に行っていて不在だが、家は自由に使えとアトワが合鍵を持っている。
集まれる人だけでいいからと声をかけたら、チェスタ以外の全員が来てくれた。
キュアンは僕を見つけるなり足元に視線を移し、ヒイロをターゲッティングすると素早い身のこなしで抱き上げてモフモフを堪能した。
イネアルさんの頼まれごととは、ローズが作ったポーションの効果を試して欲しい、というものだ。
僕自身は怪我をしたり魔力を著しく消耗することが少なく、ポーションを飲む機会が殆どない。
ローズ作のポーションを鞄やマジックボックスに入れておいても、使うのは僕以外の人のことが多い。
「申し訳ないのですが、僕はポーションのモニターに不向きですよ」
「わかってるよ。ヨイチが信頼する冒険者を紹介して欲しいんだ」
というわけで、チェスタの家にチェスタ以外のいつものパーティメンバーと、イネアルさんがいるという状態になった。
「これが話にあったポーションか」
「色が薄い、というか澄んでいるな」
各々に治癒ポーションや魔力回復ポーションを渡していく。
ローズ作のものはコルク栓に印が入っているが、色を見れば一目瞭然だった。
リヤンが印の入ったポーションを翳して感想を述べると、横でミオスも同じ動作をして頷いた。
「確かに、ヨイチが譲ってくれたポーションを飲んだときは効きが良いと思ったことがある」
「本当かい? 詳しく」
アトワの発言に、イネアルさんが早速食いつく。
「その時はヨイチのマジックボックスに入っていたポーションだから、ヨイチの魔力が移ったとか、気のせいかと思ったんだ。すまん」
マジックボックスにそんな効果はないよね?
「なるほど。ヨイチが手ずから渡したのなら、そう考えるのも仕方ないかもね」
「イネアルさん?」
僕にそんな特殊能力はないですよ?
「冗談はさておき。どちらのポーションもいつも通り使って、印のある方を飲んだ時の普段との違いに気を留めて欲しい」
「具体的には?」
「それが、なんとも言えなくてね。だからこうして試用を頼んでいるのだよ」
「ポーションとしての出来は期待していいの?」
「ああ。約束する」
皆とイネアルさん達の質疑応答の最中、僕の冒険者カードが振動した。
「このタイミングで……。すみません、呼ばれました。ヒイロ、行くぞ」
「忙しいのにありがとう、ヨイチ。後は私と皆さんで話をしておくよ」
「はい。じゃあ、またね」
「ヒキュン!」
「気をつけてね」
「武運を!」
皆に手を振りつつ、その場で転移魔法を発動した。
リートグルク城下町から半径二十キロメートルは、大体移動しつくした。
どこが荒野で、どのあたりから森で、どの方角に丘や山があるかは把握済みだ。
だから冒険者ギルドからの通達にある魔物出現地点へ直に転移魔法で飛ぶことが多くなっている。今回もそうした。
「また蜘蛛かぁ」
リートグルクの森には虫系の魔物が多い。今回は毒蜘蛛ではなく、蜘蛛の頭の部分から人の上半身が生えた「アラクネ」という魔物で、不気味さと危険度は毒蜘蛛より上だ。
更に違う部分を言えば、毒蜘蛛のようにわさわさ群れていない。一体のみが口に何かの動物から引きちぎった部位を咥えて、こちらを睨みつけている。
「ヨイチ、視線合わせると石化させられるよ」
「早く言ってよ!?」
睨まれたのに、僕の身体に石化の兆候はない。
「大丈夫みたいだね」
「何で?」
「石化は魔力で縛るようなモノだからね。ヨイチの魔力量を縛りきれなかったんだよ」
僕の魔法の使いっぷりを見た人から「多すぎる」と言われ続け、いい加減僕も自覚した。
普段の使い方で底をついたことはない。転移魔法を日に二十回使っても、余裕があった。
さすがに無限ではないだろうけど、自然回復量も多いからちょっとやそっとでは枯渇しない。
「今日はこいつだけかな」
「見てこようか」
「うん」
ヒイロは一瞬で大きくなると、そのまま空高く飛び上がった。
僕らが暢気な会話をしている間、アラクネは咥えた何かをもぐもぐと咀嚼しながらこちらを睨み続けていた。
僕が殆ど動かないのに、石になっている様子もないから戸惑っているのだろう。
念の為に、こっそり結界魔法を展開しておく。そこへヒイロが戻ってきた。
「周囲に強そうな魔物はいなかったよ」
「じゃあ、こいつには悪いけど、付き合ってもらうか」
蜘蛛の魔物は大半が素材にならない。この前せっかく持ち帰った大量の蜘蛛も、殆ど焼却処分となった。
素材として使えるのは蜘蛛が吐く糸で、蜘蛛が生きていないと意味がない。
生きた蜘蛛の魔物を町に持ち込むなんて、当然禁止だ。
アラクネに関して冒険者カードで調べると、素材になる部分は足のみと書いてあった。
つまり、足以外は消滅させても問題ないということだ。
しゃああ、とアラクネが糸を吐いてくるが、全て結界が阻んだ。
[魔眼]でアラクネの周囲を見る。自然にある魔力を辿って自分の魔力を放出し、アラクネを取り囲んだ。
「ギッ!?」
アラクネの足全てに、魔力の糸を隙間なくしっかり巻きつける。これは拘束と同時に、防具だ。
弓に聖属性魔法で作った矢をつがえて、構える。
矢には魔力を大量に注ぎ込んだ。
「それでどのくらい?」
「半分……の、半分かな」
四分の一ほどで、既に周囲の草木や石が消し飛ぶ程の余波が出てしまっている。
これ以上は自然を破壊しかねない。
全力を出したかったが、仕方ない。
アラクネめがけて矢を射ると、チュン、とちいさな音が出て命中した、らしい。
その場には、魔力の糸で守られた足以外、何も残っていなかった。
「蒸発するみたいに消えたねぇ……」
ヒイロがぶるる、と震える。
「怖かったか」
「ううん。ヨイチがあの力をぼくやヒスイ達には絶対向けないと思うから、大丈夫」
「向けるわけないよ」
ヒスイの名前が出て、ローズのポーションを思い出した。
せっかくだから飲んでみよう。
「……ぷは。えっ!?」
「どうしたの?」
「全快、したっぽい」
「ヒキュンッ!?」
ヒイロが珍しく素で驚き、僕の顔に鼻を近づけてふんふんと嗅いだ。
「ほんとだ、魔法を使う前のヨイチのにおいだ」
「そんな匂いまで解るのか、凄いな」
大きなままのヒイロは尚も僕に身体を擦り付けてくる。褒められたのが嬉しかったらしい。頭を撫でてやった。
「イネアルさんに報告しないと。まずはリートグルクの冒険者ギルドへ行こう」
クエストの報告時にアラクネの足八本だけ器用に持ち帰ってきたことについて説明を求められたが、冒険者カードの情報が全てですと言い張っておいた。
イネアルさんのお店の扉には「休業日」の看板が下がっていた。
「そういえば午後から泉へ行くって言ってたっけ」
モルイ北東の森の中に、精霊が祝福を与えたとされている泉がある。
以前、亜院がその近辺で暴れて泉を穢した時に、僕が泉と周辺を浄化したことがある。
イネアルさんのお店で出されているポーションは、全てその泉の水から作っているため、定期的に補充しに行っていた。
泉の水の消費期限は短く、月に二度は採取する必要がある。
採取にはローズも同行しているので、今日は帰りが遅くなるだろう。
ポーションのことをちゃんと話すのは、明日以降にするしかないな。
自宅へ帰ると、ほぼ同じタイミングでヒスイも帰ってきた。
「只今戻りました、ご主人さま。昼食はもうお召し上がりに?」
「まだなんだ。頼んでいい?」
「お任せください!」
一人のときは自分で作るのだが、ヒスイに見つかってしまったからには頼まないと、彼女らの機嫌を損ねる。
自分で作るよりヒスイが作ったほうが美味しいから僕は全く問題ないが。
そして出てくる料理が、とても豪華なのが若干怖い。
「イデリク牛の赤ワイン煮込みは昨夜仕込んでおいたの。スープも作り置き。私が今なにかしたのはサラダくらいよ」
そのサラダも、レタス千切ってプチトマト、みたいな簡単なものじゃない。マッシュポテトに潰したゆで卵やきゅうり、アボカド等を和えたものに鳥ハムが添えてあって、そこに砕いたナッツ類の入ったドレッシングが掛かっている。僕だったら小一時間かけないと作れなさそうな代物だ。ヒスイはこの手の込んだサラダ他、全ての料理を数分でセッティングしたのだ。
何? ヒスイは料理スキルとかそういうの持ってるの?
思わず[鑑定]してみると……本当に持ってる!?
「ごめん、ヒスイのこと[鑑定]スキルで見ちゃった。[料理]スキル持ってたんだね」
「へ?」
何故か虚を突かれたような表情を浮かべるヒスイ。それから自分のステータスを表示させた。
「ええ? いつのまに……」
「気付いてなかったのか」
「自分のステータスなんてあまり見ないもの」
冒険者じゃなくても、この世界の住人なら誰でも自分のステータスを見ることができる。
気にするのはレベルアップが身近な戦う職業の人に多く、ヒスイ達非戦闘員は「貧弱なステータスを見ても面白くない」だそうだ。
僕もスタグハッシュで一人だけレベルが上がりにくかったときは、なるべく見ないようにしていたから、ちょっとわかる。
[料理]スキル自体の鑑定結果はこうだ。
[料理]
ありとあらゆる料理を失敗なく作ることができる
料理時間の短縮(レベル5・70%短縮)
料理に入った毒物を見ただけで判別できる
「ああ、それでなのね」
「心当たりが?」
「プラム食堂で、私が煮物を作るといつもより早く出来上がるの。おかみさんが『不思議だけど便利ね』って、お給料上げてもらっちゃった」
ヒスイがおおらかな方なのは知ってたけど、プラム食堂のおかみさんも相当だなぁ。
「でも味に関してはスキルにないから、ヒスイの腕が良いんだね。今日も美味しい」
給仕に徹するため斜め後ろに控えているヒスイに感想を伝えると、ヒスイが顔をほころばせた気配がした。
チェスタ本人は奥さんの実家に行っていて不在だが、家は自由に使えとアトワが合鍵を持っている。
集まれる人だけでいいからと声をかけたら、チェスタ以外の全員が来てくれた。
キュアンは僕を見つけるなり足元に視線を移し、ヒイロをターゲッティングすると素早い身のこなしで抱き上げてモフモフを堪能した。
イネアルさんの頼まれごととは、ローズが作ったポーションの効果を試して欲しい、というものだ。
僕自身は怪我をしたり魔力を著しく消耗することが少なく、ポーションを飲む機会が殆どない。
ローズ作のポーションを鞄やマジックボックスに入れておいても、使うのは僕以外の人のことが多い。
「申し訳ないのですが、僕はポーションのモニターに不向きですよ」
「わかってるよ。ヨイチが信頼する冒険者を紹介して欲しいんだ」
というわけで、チェスタの家にチェスタ以外のいつものパーティメンバーと、イネアルさんがいるという状態になった。
「これが話にあったポーションか」
「色が薄い、というか澄んでいるな」
各々に治癒ポーションや魔力回復ポーションを渡していく。
ローズ作のものはコルク栓に印が入っているが、色を見れば一目瞭然だった。
リヤンが印の入ったポーションを翳して感想を述べると、横でミオスも同じ動作をして頷いた。
「確かに、ヨイチが譲ってくれたポーションを飲んだときは効きが良いと思ったことがある」
「本当かい? 詳しく」
アトワの発言に、イネアルさんが早速食いつく。
「その時はヨイチのマジックボックスに入っていたポーションだから、ヨイチの魔力が移ったとか、気のせいかと思ったんだ。すまん」
マジックボックスにそんな効果はないよね?
「なるほど。ヨイチが手ずから渡したのなら、そう考えるのも仕方ないかもね」
「イネアルさん?」
僕にそんな特殊能力はないですよ?
「冗談はさておき。どちらのポーションもいつも通り使って、印のある方を飲んだ時の普段との違いに気を留めて欲しい」
「具体的には?」
「それが、なんとも言えなくてね。だからこうして試用を頼んでいるのだよ」
「ポーションとしての出来は期待していいの?」
「ああ。約束する」
皆とイネアルさん達の質疑応答の最中、僕の冒険者カードが振動した。
「このタイミングで……。すみません、呼ばれました。ヒイロ、行くぞ」
「忙しいのにありがとう、ヨイチ。後は私と皆さんで話をしておくよ」
「はい。じゃあ、またね」
「ヒキュン!」
「気をつけてね」
「武運を!」
皆に手を振りつつ、その場で転移魔法を発動した。
リートグルク城下町から半径二十キロメートルは、大体移動しつくした。
どこが荒野で、どのあたりから森で、どの方角に丘や山があるかは把握済みだ。
だから冒険者ギルドからの通達にある魔物出現地点へ直に転移魔法で飛ぶことが多くなっている。今回もそうした。
「また蜘蛛かぁ」
リートグルクの森には虫系の魔物が多い。今回は毒蜘蛛ではなく、蜘蛛の頭の部分から人の上半身が生えた「アラクネ」という魔物で、不気味さと危険度は毒蜘蛛より上だ。
更に違う部分を言えば、毒蜘蛛のようにわさわさ群れていない。一体のみが口に何かの動物から引きちぎった部位を咥えて、こちらを睨みつけている。
「ヨイチ、視線合わせると石化させられるよ」
「早く言ってよ!?」
睨まれたのに、僕の身体に石化の兆候はない。
「大丈夫みたいだね」
「何で?」
「石化は魔力で縛るようなモノだからね。ヨイチの魔力量を縛りきれなかったんだよ」
僕の魔法の使いっぷりを見た人から「多すぎる」と言われ続け、いい加減僕も自覚した。
普段の使い方で底をついたことはない。転移魔法を日に二十回使っても、余裕があった。
さすがに無限ではないだろうけど、自然回復量も多いからちょっとやそっとでは枯渇しない。
「今日はこいつだけかな」
「見てこようか」
「うん」
ヒイロは一瞬で大きくなると、そのまま空高く飛び上がった。
僕らが暢気な会話をしている間、アラクネは咥えた何かをもぐもぐと咀嚼しながらこちらを睨み続けていた。
僕が殆ど動かないのに、石になっている様子もないから戸惑っているのだろう。
念の為に、こっそり結界魔法を展開しておく。そこへヒイロが戻ってきた。
「周囲に強そうな魔物はいなかったよ」
「じゃあ、こいつには悪いけど、付き合ってもらうか」
蜘蛛の魔物は大半が素材にならない。この前せっかく持ち帰った大量の蜘蛛も、殆ど焼却処分となった。
素材として使えるのは蜘蛛が吐く糸で、蜘蛛が生きていないと意味がない。
生きた蜘蛛の魔物を町に持ち込むなんて、当然禁止だ。
アラクネに関して冒険者カードで調べると、素材になる部分は足のみと書いてあった。
つまり、足以外は消滅させても問題ないということだ。
しゃああ、とアラクネが糸を吐いてくるが、全て結界が阻んだ。
[魔眼]でアラクネの周囲を見る。自然にある魔力を辿って自分の魔力を放出し、アラクネを取り囲んだ。
「ギッ!?」
アラクネの足全てに、魔力の糸を隙間なくしっかり巻きつける。これは拘束と同時に、防具だ。
弓に聖属性魔法で作った矢をつがえて、構える。
矢には魔力を大量に注ぎ込んだ。
「それでどのくらい?」
「半分……の、半分かな」
四分の一ほどで、既に周囲の草木や石が消し飛ぶ程の余波が出てしまっている。
これ以上は自然を破壊しかねない。
全力を出したかったが、仕方ない。
アラクネめがけて矢を射ると、チュン、とちいさな音が出て命中した、らしい。
その場には、魔力の糸で守られた足以外、何も残っていなかった。
「蒸発するみたいに消えたねぇ……」
ヒイロがぶるる、と震える。
「怖かったか」
「ううん。ヨイチがあの力をぼくやヒスイ達には絶対向けないと思うから、大丈夫」
「向けるわけないよ」
ヒスイの名前が出て、ローズのポーションを思い出した。
せっかくだから飲んでみよう。
「……ぷは。えっ!?」
「どうしたの?」
「全快、したっぽい」
「ヒキュンッ!?」
ヒイロが珍しく素で驚き、僕の顔に鼻を近づけてふんふんと嗅いだ。
「ほんとだ、魔法を使う前のヨイチのにおいだ」
「そんな匂いまで解るのか、凄いな」
大きなままのヒイロは尚も僕に身体を擦り付けてくる。褒められたのが嬉しかったらしい。頭を撫でてやった。
「イネアルさんに報告しないと。まずはリートグルクの冒険者ギルドへ行こう」
クエストの報告時にアラクネの足八本だけ器用に持ち帰ってきたことについて説明を求められたが、冒険者カードの情報が全てですと言い張っておいた。
イネアルさんのお店の扉には「休業日」の看板が下がっていた。
「そういえば午後から泉へ行くって言ってたっけ」
モルイ北東の森の中に、精霊が祝福を与えたとされている泉がある。
以前、亜院がその近辺で暴れて泉を穢した時に、僕が泉と周辺を浄化したことがある。
イネアルさんのお店で出されているポーションは、全てその泉の水から作っているため、定期的に補充しに行っていた。
泉の水の消費期限は短く、月に二度は採取する必要がある。
採取にはローズも同行しているので、今日は帰りが遅くなるだろう。
ポーションのことをちゃんと話すのは、明日以降にするしかないな。
自宅へ帰ると、ほぼ同じタイミングでヒスイも帰ってきた。
「只今戻りました、ご主人さま。昼食はもうお召し上がりに?」
「まだなんだ。頼んでいい?」
「お任せください!」
一人のときは自分で作るのだが、ヒスイに見つかってしまったからには頼まないと、彼女らの機嫌を損ねる。
自分で作るよりヒスイが作ったほうが美味しいから僕は全く問題ないが。
そして出てくる料理が、とても豪華なのが若干怖い。
「イデリク牛の赤ワイン煮込みは昨夜仕込んでおいたの。スープも作り置き。私が今なにかしたのはサラダくらいよ」
そのサラダも、レタス千切ってプチトマト、みたいな簡単なものじゃない。マッシュポテトに潰したゆで卵やきゅうり、アボカド等を和えたものに鳥ハムが添えてあって、そこに砕いたナッツ類の入ったドレッシングが掛かっている。僕だったら小一時間かけないと作れなさそうな代物だ。ヒスイはこの手の込んだサラダ他、全ての料理を数分でセッティングしたのだ。
何? ヒスイは料理スキルとかそういうの持ってるの?
思わず[鑑定]してみると……本当に持ってる!?
「ごめん、ヒスイのこと[鑑定]スキルで見ちゃった。[料理]スキル持ってたんだね」
「へ?」
何故か虚を突かれたような表情を浮かべるヒスイ。それから自分のステータスを表示させた。
「ええ? いつのまに……」
「気付いてなかったのか」
「自分のステータスなんてあまり見ないもの」
冒険者じゃなくても、この世界の住人なら誰でも自分のステータスを見ることができる。
気にするのはレベルアップが身近な戦う職業の人に多く、ヒスイ達非戦闘員は「貧弱なステータスを見ても面白くない」だそうだ。
僕もスタグハッシュで一人だけレベルが上がりにくかったときは、なるべく見ないようにしていたから、ちょっとわかる。
[料理]スキル自体の鑑定結果はこうだ。
[料理]
ありとあらゆる料理を失敗なく作ることができる
料理時間の短縮(レベル5・70%短縮)
料理に入った毒物を見ただけで判別できる
「ああ、それでなのね」
「心当たりが?」
「プラム食堂で、私が煮物を作るといつもより早く出来上がるの。おかみさんが『不思議だけど便利ね』って、お給料上げてもらっちゃった」
ヒスイがおおらかな方なのは知ってたけど、プラム食堂のおかみさんも相当だなぁ。
「でも味に関してはスキルにないから、ヒスイの腕が良いんだね。今日も美味しい」
給仕に徹するため斜め後ろに控えているヒスイに感想を伝えると、ヒスイが顔をほころばせた気配がした。
14
お気に入りに追加
1,604
あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる
名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。
冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。
味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。
死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる