TRPGの世界に召喚されて全滅した仲間を生き返らせて元の世界へ帰るために、チート能力「ダイス目操作」を駆使してこの世界を蹂躙します。

桐山じゃろ

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07 レベルアップ

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 D&Tはレベルアップのとき、上昇する能力値のポイント数を1d100で決める。出目が2~10なら5ポイント、11~20なら6ポイントといった具合だが、この時クリティカルである1を出せば1レベルにつき99ポイントを、好きな能力値に割り振ることができるのだ。
 どうやらレベル20ぶん、全て最高値ということになったらしい。

 きっと今後もこの調子だろう。細かく考えるのが面倒になった僕は、全ての能力値に均等に割り振った。

+++

 名前:デガ
 種族:ヒューマン
 レベル:21
 年齢:18
 筋力:338
 敏捷力:342
 耐久力:339
 知力:338
 判断力:338
 魅力:339
 特殊能力:ダイス目操作 レベル1

+++


「お見事でした!」
 ベルが音を出さないように拍手しながら僕の近くへやってきた。
「あはは、転んだ拍子に偶然倒せただけなんだけどね」
「あの気配に敏いハヌマーンを相手に、後ろから一撃なんて普通はできませんよ」
 ベルが手放しで褒めてくれるのがこそばゆい。

 早速ハヌマーンをルートしようとして、その前に首に刺さったままのダガーを抜こうとしたら、柄のところから刃がボキリと折れてしまった。
「!?」
「そういえばそのダガー、あのクソ王国……んんっ、ドルズブラで受け取ったものでしたね。ひと仕事してくれただけでも儲けものだと思っておきましょう」
 ベル今クソ王国って言った? ベルさん? あの国にヘイトぶち当てすぎじゃない?
「予備があるから大丈夫だよ」
 僕がバッグの中からもう一本のダガーを取り出してみせた。
「少々見せていただいても?」
「いいよ。はい」
 ベルはダガーを鞘から抜き、陽に翳してしげしげと眺めてから、鞘に収めて僕に返してくれた。
「そのダガーもろくなものではないですね。ハヌマーン一匹倒せるかどうか、怪しいところです。すみません、武器のことを失念しておりました。わたくしがもっと早く気づいていれば……」
「ベルは悪くないでしょ。それに、そうだ。折れた方は皆がいる場所の近くで土掘ったりしたから、歪んでたのかも」
 俯くベルに僕がフォローを入れると、ベルは顔を上げ、それから自分のバッグを漁りだした。
「ひとまずこれをお使いください。これはわたくし専用の自決用ナイフなのですが、切れ味と品質は保証します」
「自決用!?」
 物騒な単語と共に取り出されたのは、鞘に金の装飾が見事な細身のナイフだ。
 抜いてみると、刃にも細かい装飾が施されている。
「はい。もし万が一、魔物に囚われたり、魔に侵されそうになったときは自決せよという名目で聖女、聖者に与えられるものです」
「な、なるほど。でもそんな大事なナイフを、僕が使ってもいいの?」
「救世主様に使っていただけるのですから全く問題ありません」
 これは間違いなくベルの独断だな。とはいえ現状、まともに使える武器がないのも事実だ。
「じゃあ有り難く借りておくよ」
「はい。ではハヌマーンを漁りましょう」

<探知:大成功 魔物たちから距離をとることができる>

「ベル、一旦こっちへ」
 例の「ざわり」がしたので、ベルを引き止めて近くの茂みに身を潜めた。
「どうなさったのですか」
 ベルも何かを察して小声だ。
「多分ハヌマーンが、大量にいる」
 ここまでは解るが、具体的に何匹いるのか、僕とベルで倒せるのかどうか、判断ができない。ここで様子見するしかないのかな。

<先制:大成功 相手は襲撃に気付かない>
<命中:大成功 クリティカルヒット>
<攻撃:大成功 即死>
<先制:大成功 相手は襲撃に気付かない>
<命中:大成功 クリティカルヒット>
<攻撃:大成功 即死>
<先制:大成功 相手は襲撃に気付かない>
<命中:大成功 クリティカルヒット>
<攻撃:大成功 即死>……

「ちょちょちょ」
「ど、どうなさいました!?」
 頭の中に大量のダイスロールの結果が流れた。
 魔物一体に対し先制、命中、攻撃がワンセットだとしたら、百匹近くは流れたんじゃないかな。
 今僕が気配を察知してる魔物全部に、先制即死攻撃ができるってこと?
 そんなことが可能なのか?
「ベル、もしハヌマーンが百匹いたとしたら、全部倒せる?」
 僕が小声で問いかけると、ベルはすぐに答えを出した。
「無理です。同時に相手できるのは五匹が限度です」
「だよねぇ」
 ふと、先程能力値を割り振った自分のステータスを思い出してみる。
「ステータスの数値を聞くのって失礼かな」
 TRPGではお互いのステータスの数値はある程度把握しあっているが、ここはリアルだ。念のため、ワンクッション置いた。
「いいえ。わたくしのステータスが気になるのでしたら、どうぞ」
 ベルは何の躊躇もなく、目の前にスクリーンを表示させると僕に見えるようにしてくれた。こんなこともできるのか。


+++

 名前:フィンベル・ミヒャエル
 種族:ヒューマン
 レベル:36
 年齢:18
 筋力:10
 敏捷力:18
 耐久力:20
 知力:55
 判断力:17
 魅力:50
 魔力:72
 クラス:聖女

+++

「同い年なんだね」
 まず年齢を見て思ったことを口に出してしまった。ベルは「そうでしたか」と笑顔で返してくれたが。
 年齢を知りたかったわけじゃない、能力値だ。
 レベルは僕より高いのに、能力値は僕より低い。
「僕の能力値見てどう思う?」
 ステータス表示、と念じると、ベルと同じようにスクリーンを出せた。それを、ベルに見せる。
 ベルは僕の能力値を見て、息を呑んだ。
「素晴らしいですね。全て三百を超えていて……」
「これなら、どうかな。ハヌマーン百匹と戦えると思う?」
 ベルは少し考える素振りをしてから、僕に質問で返した。
「先程のハヌマーンを倒した時のステータスは覚えていらっしゃいますか?」
「ええと、さっきのでレベルが二十上がって、全部の能力値に三百三十ずつ割り振ったんだ。だから倒す前は今の能力値から全部三百三十引いた数字だよ」
「それでハヌマーンを倒せたのですよ。デガさんなら、ハヌマーンが千匹いたところで軽く一捻りです」
「流石に言い過ぎでしょ」

 ぐだぐだしているうちに、とうとう、ハヌマーンの群れが見えるところに現れた。
 仲間の死体の臭いを嗅いで、辺りを警戒している。
 この状態から本当に先制取れるのかな……。

 だけど、躊躇している場合じゃない。
 ダイスで行動が決定されているんだ。やるしかない。
「ベルはここにいて」
 僕は意を決して、茂みから飛び出した。

 最初のハヌマーンは座っていたから気付かなかったけど、こいつら、でかい。
 僕の三倍くらいの身長に、横も大きい。百匹近い群れの中に僕が飛び込んでも、僕が相対的に小さくて気付かれなかった。
 これ幸いと、手近なやつから三つの首の付け根を狙って、ハヌマーンの背を駆け上がり、ナイフを突き刺していく。
 ハヌマーンは声もあげず、大きく痙攣してどさりと倒れる。
 何匹か繰り返したところでさすがに気付く奴も出てきたが、僕の方はレベルアップと能力値割り振りでステータスが急上昇したお陰か、走り回っても息が切れないし、倒す速度も上がっていった。

 最終的に、九十九匹のハヌマーンを、僕一人で倒した。

「すっ……凄い、凄いです! デガさん!」
 僕が周囲を見渡して大きく息を吐くと、茂みからベルが飛び出した。
 歓声を上げて、僕に抱きつく。
「素晴らしかったですっ!」
「のっ、ベルっ、あのっ」
 体に押し付けられる、大きな柔らかい感触。ローブ姿で目立たないが、ベル、その……大きいな。
「ありがとう、落ち着いて。ルート手伝ってくれる?」
「はい、おまかせください!」
 僕はベルの柔らかい誘惑をどうにか振り切り、ハヌマーンのルートを始めた。

「これも……救世主様のお力なのですね」
「救世主かどうかはさておいて、まぁその、多分」

 この世界の魔物は、ルートすると消えてしまう。肉や皮など体の一部が欲しい場合はルート前に取ればいい。死体の処理には困らなくて便利だ。
 ハヌマーンからは一匹あたり「神猿の爪」五個と、「ヴァジュラ」という特殊な形状の武器が出た。ヴァジュラは一匹につき一個出たから、全部で百個。

「使用すると稲妻の魔法が打てますから一つ二つは手元に残してもかまわないと思いますが……今回入手したアイテムだけで、一億近くになりますよ」

 ようやく一人分の蘇生が見えてきた。
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