TRPGの世界に召喚されて全滅した仲間を生き返らせて元の世界へ帰るために、チート能力「ダイス目操作」を駆使してこの世界を蹂躙します。

桐山じゃろ

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06 初仕事へ

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 貰った冒険者カードには、「冒険者ランクB」と書かれていた。
 あと、なんとなく本名を名乗るのは今更だったので名前は「デガ」にしておいた。

「ランクBってどういうこと?」
 受付さんから説明がなかったので、ベルに尋ねた。
「冒険者ランクはGからSSSまであります。普通は一番下のGからはじまり、冒険者自身の強さや仕事の成功回数などによって変動します」
「Gから……じゃあどうして僕はいきなりBからなの?」
「ギルド長は必ずランクA以上の方が就任します。その方に圧勝したのですから、Sでもおかしくないはずですよ。ギルドの体裁がどうとか言ってましたね」
 何故かベルが憤慨していらっしゃる。全身から黒いオーラまで出てる。それ聖女が出してもいいやつ? 違うよね?
「それで、ランクが違うと何が違うの?」
 僕が重ねて質問すると、ベルは出していた黒いオーラを引っ込めた。
「請けられる仕事の内容が変わります。簡単に言えば、Gだといちばん簡単で安い仕事しか請けられません。ランクが上がるごとに請けられる仕事内容が難しくなり、報酬も上がります」
 だいたい予想通りの内容だった。
「よくわかったよ。ベルはAって凄いね」
 受付さんが名前を見て驚いたり、ギルドの建物の中に居た人の視線を集めるほどだ。冒険者として有名なのだろう。視線に関してはベルが美人なせいもあるかもしれないけど。
 僕の言葉に、ベルは頬を赤く染めて顔を逸らしてしまった。
「これは、わたくしが聖女だからです」
「その聖女についても詳しく聞いていい?」
 これもだいたい予想通りの返答だった。

 この世界には魔力があり、魔法がある。
 魔法には属性が存在し、生まれつきの素養で決定するものだ。
 強力な癒やしの力を発揮する聖属性を持つ人間は十万人に一人とされ、聖属性持ちだと判明すると、強制的に教会預りとなり、大体十五歳前後で聖者や聖女に認定される。
 聖女認定されてから冒険者登録をすると、自動的にAからスタートになるのだそうだ。
 とはいえ、冒険者になる聖女は少ない。殆どは教会に属して人々のために癒やしの力を振るう……って、あれ?

「ベル、ここにいていいの?」
「はい。わたくしは神の声を聞いたので」



 世界に救世主が現れたという神の声を聞き、救世主をサポートする任を授かったベルは、冒険者として経験を積みつつ、各地を旅していたのだとか。

「そっか。じゃあ、改めてよろしく、ベル」
 僕はベルと仲間として握手しようと手を差し出した。
「っ! は、はい、よろしくお願いします」
 ベルは何故か、顔を紅潮させて僕の手を両手で握り返した。手から震えが伝わる。
「ごめん、これは前の世界に居た時の挨拶なんだけど、嫌だった?」
「違いますっ! 握手はこの世界でも挨拶の意味です……ああ、デガさんの手、直に触れてしまったわ……」
「?」
 挨拶でも僕との握手は嫌だったのかな。今後は控えよう。


「ところで、オークの素材やアイテムは換金しますか?」
 気を取り直したらしいベルが、腰に下げているポーチから牙を取り出した。
「そうだった。えっと、これとこれなんだけど」
 僕が牙を十本と斧を取り出すと、ベルが僕の手元を二度見した。
「オークアックス!? レアじゃないですか!」
「これレアだったんだ。幾らで売れるかな」
「二十万はくだらないですよ! 運がいいですね」
 にじゅうまん。大金だけど、一人分の蘇生費用にすら遠い。でも、当面の宿代には困らないな。
「それはよかった。宿代返せるし、今後は僕が払うよ」
「宿代はいいんです。牙も、一匹から十本も出たのですか?」
「うん」
 ダイスがクリティカル出すからね。
「凄い……さすがは救世主様です!」
 救世主関係あるかなぁ。

 冒険者ギルド内には魔物の素材を買い取ってくれるカウンターもあった。
 早速、牙と斧を換金した。
 斧はベルの言った通り二十万マグ、牙は一本五百マグだから十本で五千マグになった。
「今後魔物を倒すときは、冒険者カードを肌見放さず持っていてくださいね。魔物を討伐した記録が残れば、報酬が貰えますので」
 冒険者カードには、魔物の討伐状況が記録されるのだとか。魔法で動いているらしい。不思議。
 カードを持っていたら、オークは一匹五千マグの報酬が出ていたそうだ。当時の僕は冒険者じゃなかったし、そもそもオークが自爆してたから、どちらにしろノーカウントだったんじゃないかな。

「次は仕事を探しましょう。あそこの板に貼ってあります。適当なのを見繕ってきますので、ここで待っていてください」
 そう言ってベルが板の場所へ向かい、「すみません」と言うと、ベルの顔を見た人が慌てて立ち位置を譲った。やっぱり有名人なのかな。
 ベルは悠々と仕事のメモを見比べ、三つほどメモを板から剥がすと、僕のところへ戻ってきた。
「お待たせしました。このあたりは如何でしょう」
「ねえ、ベルって有名人だったりする?」
 メモを見比べながらベルに問うと、ベルは首を傾げた。
「どうでしょうか。ランクAはこの町に五人だけだそうなので、珍しいだけかと」
 完全に有名人だった。

 ベルが持ってきたメモは、対象冒険者ランクB以上、魔物一体の討伐報酬は十万マグ以上と、かなり高額なものばかりだった。
「場所がよくわからないな。ここからどのくらいかかるの?」
「ワイバーンでひとっ飛びです」



<騎乗(翼竜):大成功 懐かれる>



 町を出て三十分後、僕は空にいた。
「意外と、乗り心地良いね」
「デガさんも流石ですね。クウちゃんがこんなに素直に他人を乗せるの、初めて見ました」
 ワイバーンは町を出て少し歩いてから、ベルが竜の形の笛を吹くと、青い体の翼竜が空から降りてきた。
 ベルが使役しているワイバーンで、名前はクウちゃん。
 クウちゃんはベルが僕を紹介すると、「クルルル」と鳴きながら僕の体に頭を擦り付けてきた。懐いた時の仕草だそうだ。
 誰かに使役されているワイバーンが初対面の人間に懐くのは珍しいらしい。

「ワイバーンを使役するのって、常識なの?」
「聖女や聖者が空飛ぶ獣を手懐けることはよくあります。冒険者が馬を飼うのと似たような感覚ですよ」
 だいぶ慣れてきたベル語を翻訳すると、一般的にはかなり珍しいということだ。
「ん? 獣? ワイバーンは魔物じゃないの?」
「魔物ではありません。魔物のワイバーンも居ますが、クウちゃんは竜族です。こう見えても大人しい良い子ですよ」
 ベルがクウちゃんの首筋を撫でると、クウちゃんはキュロロロ、と気持ちよさそうに鳴いた。
「へぇ」
 色々と驚くことが多くて、僕は生返事しか返せなかった。

 クウちゃんに乗ること暫し。僕たちは町の外の森を抜けた荒野に降り立った。
 あちこちに大きな岩が転がり、枯れかけた木や背の高い草がぽつぽつと群生している。
「ひとつめの仕事で指定されている魔物は、この近くにいます。ここからは、用心してくださいね」

<探知:大成功 魔物の背後をとることができる>

「ベル、あっちだ」
 不意に胸元がざわりとした。僕は周囲を見渡して、「ざわり」を強く感じる方へ、なるべく気配を殺して歩く。ベルも静かについてきた。

 岩陰に、頭が三つ、腕が八本もある、ゴリラを茶色くしてふた周り大きくしたような、猿の魔物が座り込んでいた。頭についている目は全て閉じられている。眠っているようだ。
「ハヌマーンです。どうしますか?」

<先制:大成功 相手は襲撃に気付かない>
<命中:大成功 クリティカルヒット>
<攻撃:大成功 即死>

「僕が」
 短く答えてダガーを抜き、ハヌマーンの背後に駆け寄った。
 僕の脳内イメージでは、この後華麗にハヌマーンの三つある頭を一閃で落としていたのだが……。

 僕はハヌマーンのすぐ近くで盛大にコケた。

「わ、わっ」

 転んだ勢いでダガーを持った手がハヌマーンの首元に届き、ダガーが三つの首の中心を突き刺した。
 ハヌマーンは座り込んだ姿勢のまま、びくりと大きく痙攣した。

 えっと、ダガーがちょうど急所に当たって、即死した……のかな。
 かっこ悪い倒し方になったけど、結果オーライだ。

<レベルアップしました! レベル1→21>
<能力値:1980ポイントを割り振ってください>
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