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魔界内乱編

思わぬ自己紹介

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「あはは、うける~!こんな細っこいのが魔王様な訳ないじゃーん☆」


派手な髪の少年は口から棒付き飴を取り出すと、それで僕を指差してゲラゲラと笑っている。

うっ!そんな純粋な顔で言われると心苦しい!

そうだよね、こんな弱そうなのが魔王とか思わないよね…。


「そ、そうですよ…ネム様が魔王様だなんて…!そ、そんな訳…!」


リッパー慌てすぎて目がバシャバシャ泳いじゃってるよ…!


「え、ガチ…?」


リッパーの異常な慌て具合を見て、派手な髪の少年は飴で指差すのをやめると、僕の方をぽかんと口を開けた表情で、また見た。

誤魔化しようが無いかな…。


「…うん…そうだよ、僕が魔王だよ。」


僕は困ったように笑った。


「え~!すっごーい!どっからどう見ても人間にしか見えないんだけどぉ~!」


少年は近づいてくるとペタペタと僕の体を触り、確かめている。


「ん、…か、体は人間だから…。」


僕が少年の手つきに反応しないように体に力を入れていると、ニヤニヤとした顔の男が拍手をしながら近づいてきた。


「ふひひ、これはこれは魔王様…!すぐに気づけなくて申し訳ございませんねぇ…!」


ニヤニヤとした男は少年を退かすと床に膝をつき僕の手をとり、手の甲にキスをした。


「ふひ、私は、マッドと申します。気軽にお呼びください。」


マッドの視線は僕を下から舐めるように上がってきて、目が合うと長い舌をシュルシュルと蛇のように出し、ジュルリと涎を飲み込んだ後、ふひひっと笑われる。

なんか、マッドってよく笑ってるけどなんか怖い…。

僕が若干怯えていると目の前に棒付き飴が現れる。


「ずっるーい!僕が先に喋ってたんだよぉ!?ね、ね、魔王様!僕はカラメロだよんっ!気軽にメロちゃんって呼んでねっ☆」


カラメロは僕より背が低くて、僕の腰にぎゅっと抱きつくと、上目遣いでキラキラと星みたいに光る目をパチパチと閉じて瞬きしている。


「め、メロちゃん…?」

「なぁに~?」


最初はなんか、恐そうな子かなと思ったけどキラキラしてて可愛い子だな…。

カラメロと目を合わせていると僕達を大きな影が覆った。


「…………。」

「…んーと、えっと……?」


無表情な青年はじーっと僕の顔を見ている。


「えっ、うわぁっ!」


僕の脇に手を入れたかと思うと高く上に上げられる。

僕を高く上げながらくるくると回され、そしてすぐにぎゅーっと抱きしめられる。


「えっ!あ、あの…!」

「あー、ティタンって見かけによらず、ぬいぐるみとか好きだから魔王様を人形扱いしてるのかも…。」

「ええっ!?人形…!?」


カラメロは僕に彼の名前を教えてくれたが、助ける気は無いようで、抱きしめられている僕を下から見ているだけだ。

あわあわしていると二本の角が生えた鬼のような男が眉間にシワを寄せて僕に近づいてきた。


「ティタン、魔王様に対する態度ではないだろう。降ろしなさい。」

「……ぅ…ごめん…なさい…。」


ティタンは少し悲しそうにしながら僕を降ろした。

よしよしと頭を撫でるとティタンはふにゃふにゃと笑った。


「魔王様も魔王様だ、あの厳しかった魔王様がこんな別人になるなんて気付けるほうがおかしいだろう。」


…うん、リッパーっておかしかったんだね。

僕が言う前に魔王の生まれ変わりだって気づいてたし。


「うん、ごめんなさい…。それで、君の名前は…?」

「私はデモニオだ。」

「デモニオさん…。」

「デモニオでいい、魔王様にさん付けなどされても困る。」

「は、はい…デモニオ。」


僕がデモニオにじっと見られてむず痒くなり、目をそらすと奥にいるサヴァンと目が合う。


「…っ!」


サヴァンは僕と目が合うと苦しそうな顔をして目を逸らし、僕の横を通り過ぎてドアから出てってしまう。


「サヴァン様…!」


イカルドも慌てて僕の方をチラチラと見ながら、サヴァンを追いかけこの部屋から出ていった。


「ネム様。」

「ベルナード…。」

「ふふっ、大丈夫です。ネム様が考えていることぐらい分かりますよ。」


僕がしょぼくれた顔をするとよしよしとベルナードに頭を撫でられる。


「皆様がお気づきの通り、ネム様は魔王様でおられます。しかし、このことは人間には伝えぬようお願いしますね。」


ベルナードが全体に声をかけるとカラメロがぴょんぴょんと飛び跳ねながら手を上げている。


「どうしましたか、カラメロ。」

「んーと、なんでネム様が魔王だよーって言わないの?魔王が生きてたって伝えたほうが人間にマウント取れるし、良くない??」


やっぱりみんな人間と敵対するつもりなのかな…。


「えっと、僕が人間とも仲良くしたいから…かな。」


僕がそう声を掛けるとみんな真剣に聞いているが、マッドだけニヤニヤと笑いながら長い舌を出した。


「ふひひ、人間と仲良くですか…面白いこと言いますねえ…」

「お、面白い…?」

「ふひっ!実現不可能なことを、そんな可愛らしい真っ赤な顔で言うんですから、ふひひ…」


じ、実現不可能って…そんなバッサリ…。


「僕は人間と仲良くするのいいと思うっ☆人間は甘いお菓子とか作るの上手だし!うんうん!」

「私は魔王様に従うまでです。」

「俺も…魔王様に…従う…。」


マッド以外は僕に協力的みたいだ。


「ふひひ、大丈夫ですよ。出来ないとは思っていますが邪魔はしませんから…。」


マッドも協力はしないけど邪魔はしないって言ってるから大丈夫…かな…?

それよりもサヴァンだよね…。

魔王のこと嫌いだったって言ってたし、僕のこと嫌いになっちゃったかな…。


「あの、みんな…僕ちょっとサヴァンの様子見てくるね。」

「いいんじゃない?あんなやつは放っといて。普段から浮いてたし、この際魔王候補って枠から外したっていいでしょ。魔王様はいるわけだし☆」


う、浮いてたって…そんな…。


「いいですよ、ネム様。この場は私にお任せください。」


ベルナードは僕に微笑むとドアの方へ背中を押してくれた。


「うん!ありがとう!…そ、それと…あ、あの…ベルナードとも話したいことがあるから…その…。」

「ふふっ、私の部屋で待ってますよ。」


ベルナードは優しく微笑んで、僕の頬を撫でた。
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