モブ令嬢は仲良くなりたい

桜餅

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モブ令嬢はお礼がしたい

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「う…やっぱりいない…」

逃げてきたことを猛烈に後悔し急いで階段の所まで戻ってきたが、ルディ君はいなかった。
きちんとお礼したかったな…
せめて、私がヒロインや悪役令嬢に転生してたら自信もあったんだけど…残念ながら私、ユリアはモブ中のモブ。銀髪とは言い難いくすんだ灰色の髪に茶色の瞳…と、この世界ではありふれた容姿だ。
この学校は広すぎるしまた会えるかも難しいだろう…

「うーん、どうしたものか…」

「何やまた落ちる気か?」

「ぎゃっ!?!?」

ぬっと背後に現れた影に驚いて、変な声が出てしまった…。

「なんやねん恩人に向かってその態度…今度は助けたらんで?」

こんな関西弁を喋る方なんてルディ君に決まっている。カラカラと笑うルディ君のなんとも可愛いことか…うわ、推しが色んな言葉を喋ってる…数パターンあるセリフを一つ一つ噛み締めていた前世に比べると、なんと贅沢な事だろう。

「…まただんまりか自分」

ハッとしてルディ君の方を見ると、つまらなさそうな顔をしてこちらをじとーっと見ている。そんな顔もかわい…じゃなくて、

「し、失礼しました!!私、ユリア・ステュアートと申します。さ、先程はすみません!」

「おー、気にすんなや。…てかその為に戻ってきたんか?」

「え?は、はい」

「わざわざ戻ってくるなんて変な奴やなー!」

「ええ!?!?」

お、推しに変な奴認定された…でもルディ君が笑っている。…可愛いのでOKです!

「あ、でも、それだけじゃないんです!!何かお礼したくて…」

「お礼?」

ルディ君の目の色が変わった。

「はい!一歩間違えれば大怪我をしていたでしょうし、本当に感謝しております…!私にできることなら何なりと!!」

ゲームをしていたプレイヤーなら皆知っているけど、ルディ君はかなり守銭奴だ。情報だって毎回聞くごとに、可愛いアリスちゃんからお金を巻き取っていた。私は喜んで貢いでいたけど。
これは、チャンスだ…
この世界でも、お礼とかこつけて推しに貢ぎまくれる…!!あわよくばお友達に…!!

「ふーん。…それなら、ちょっと手伝ってくれん?」

ルディ君は、ニヤッと笑って私にそう告げた。

「…え?」

オテツダイ?…お金じゃなくて?




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