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28.
しおりを挟む「お話しよっか、環ちゃん。」
そう僕に跨った辰也さんが言った。
布団を挟んでいるため、身動きができない。
せっかく辰也さんが僕と目を合わせて口を聞いてくれているというのに、触ることすらできない。
「あのね、環ちゃん。俺は環ちゃんの隣に立ちたい。顔だけの嫁にはなりたくない。」
辰也さんの顔は素晴らしいですよ。ていうか嫁でいいんですかって言いたいけど、今はそういう話をしている場合じゃない。
「ええ、同じことを考えていました。辰也さんに僕と隣を歩んでほしい。これからの人生。」
苦しいときもあると思うけど、一緒に乗り越えていきたい。
でもなるべく人の目につかせたくないって言うのは僕の本音だけど、辰也さんは外が似合う。
毎日変わらない部屋の中じゃなく、色んな場所に行く方が、新しい発見、思い出ができていいと思う。
「俺、環ちゃんが当主になりたくなかったこと知ってるよ。俺のためって自惚れていいんでしょ?俺が支えるから、一緒に頑張ろ。」
こ、小首傾げてる…かわいい!!!
こんな可愛いのに、身動きできないから抱きしめられない!
「ふはっ!環ちゃん、すごい顔してるよ。」
「へぇ、どんな顔です?」
「…俺のこと可愛いって、大好きって言ってる顔。んっ……」
可愛いことを言った後、辰也さんからキスをしてくれた。
首をできる限り伸ばし応える。
舌を絡ませて、辰也さんの瞳に飢えた獣のような目をした僕が映る。
「んふふ…だーめ。やらないよ、俺まだ痣残ってるもん。」
「うっ…その節はどうもすみません……」
寝間着の前をはだけさせ、肩の痣を見せつけてくる辰也さん。申し訳なさが勝ち、興奮状態から一気に冷静になる。
「だから、この痣がなくなったら…俺のこと、うんと優しく抱いてね。」
それで完全に仲直りってことだろうか。
辰也さんには敵わないな……聖母だよ、この人は。だって後光見えるし。
「分かりました。時間をかけてゆっくり愛してあげます。」
そう言うと、満足そうな顔をして僕の上から降り布団の中に潜ってきた。
「するのはダメだけど、一緒に寝るのはいいよね?」
ん~ッ小悪魔がいます!!!
あれ拷問かな?
しちゃダメ宣言されたのにくっついて寝るの?
お触り禁止?
どんな高等テクだ!僕じゃなかったら怒ってますよ!
「環ちゃん、当主の勉強頑張ってね。俺も手伝うから。」
「……はい。頑張ります。」
こうなったら泣き言言わないで腹括るしかない。
勉強ももっと頑張って、上位をキープしなきゃだし、経営の方も学ぶことが多い。
大御所との繋がりや、顔見せとかもあるだろうし……
でも、辰也さんが隣にいるっていうのはこんなにも心強いものなんだとわかった。
守るだけじゃなくて、守られるっていうのも悪くないな……
ぎゅっと抱きしめて、抱きしめられて、互いにおやすみと呟き眠りにつく。
感じる人肌は確かにこの腕の中にある。
僕のものだ。ね、辰也さん。
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