目黒くんの夏休み

二藤ぽっきぃ

文字の大きさ
上 下
30 / 30

28.

しおりを挟む


「お話しよっか、環ちゃん。」

そう僕に跨った辰也さんが言った。

布団を挟んでいるため、身動きができない。
せっかく辰也さんが僕と目を合わせて口を聞いてくれているというのに、触ることすらできない。

「あのね、環ちゃん。俺は環ちゃんの隣に立ちたい。顔だけの嫁にはなりたくない。」

辰也さんの顔は素晴らしいですよ。ていうか嫁でいいんですかって言いたいけど、今はそういう話をしている場合じゃない。

「ええ、同じことを考えていました。辰也さんに僕と隣を歩んでほしい。これからの人生。」

苦しいときもあると思うけど、一緒に乗り越えていきたい。
でもなるべく人の目につかせたくないって言うのは僕の本音だけど、辰也さんは外が似合う。
毎日変わらない部屋の中じゃなく、色んな場所に行く方が、新しい発見、思い出ができていいと思う。

「俺、環ちゃんが当主になりたくなかったこと知ってるよ。俺のためって自惚れていいんでしょ?俺が支えるから、一緒に頑張ろ。」

こ、小首傾げてる…かわいい!!!
こんな可愛いのに、身動きできないから抱きしめられない!

「ふはっ!環ちゃん、すごい顔してるよ。」

「へぇ、どんな顔です?」

「…俺のこと可愛いって、大好きって言ってる顔。んっ……」

可愛いことを言った後、辰也さんからキスをしてくれた。
首をできる限り伸ばし応える。
舌を絡ませて、辰也さんの瞳に飢えた獣のような目をした僕が映る。


「んふふ…だーめ。やらないよ、俺まだ痣残ってるもん。」

「うっ…その節はどうもすみません……」

寝間着の前をはだけさせ、肩の痣を見せつけてくる辰也さん。申し訳なさが勝ち、興奮状態から一気に冷静になる。

「だから、この痣がなくなったら…俺のこと、うんと優しく抱いてね。」

それで完全に仲直りってことだろうか。
辰也さんには敵わないな……聖母だよ、この人は。だって後光見えるし。

「分かりました。時間をかけてゆっくり愛してあげます。」

そう言うと、満足そうな顔をして僕の上から降り布団の中に潜ってきた。

「するのはダメだけど、一緒に寝るのはいいよね?」

ん~ッ小悪魔がいます!!!
あれ拷問かな?
しちゃダメ宣言されたのにくっついて寝るの?
お触り禁止?

どんな高等テクだ!僕じゃなかったら怒ってますよ!

「環ちゃん、当主の勉強頑張ってね。俺も手伝うから。」

「……はい。頑張ります。」

こうなったら泣き言言わないで腹括るしかない。

勉強ももっと頑張って、上位をキープしなきゃだし、経営の方も学ぶことが多い。
大御所との繋がりや、顔見せとかもあるだろうし……

でも、辰也さんが隣にいるっていうのはこんなにも心強いものなんだとわかった。

守るだけじゃなくて、守られるっていうのも悪くないな……


ぎゅっと抱きしめて、抱きしめられて、互いにおやすみと呟き眠りにつく。

感じる人肌は確かにこの腕の中にある。
僕のものだ。ね、辰也さん。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

フラグ回収率

ぬるあまい
BL
「腐男子攻めを流行らせたい?じゃあ協力してやるよ」 男前腐男子×鈍感男前/クール会計×鈍感男前≪三角関係≫

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

処理中です...