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18.
しおりを挟む車に乗り込み、南雲さんに出してもらって暫く、辰也さんがもじもじして、たまにチラッと僕を見てくる。
可愛らしさ仕草なのだが、もっと触れ合いたい僕としては少し生殺し状態だ。
「どうしました、辰也さん。僕の顔に何かついてます?」
ノックアウトさせる気で笑顔を向けてそう聞くと、両手で顔を隠し指の隙間から僕を見つめる辰也さん。観念したのか声を絞り出して話してくれた。
「かっこ良すぎるよ環ちゃん…スーツって…オールバックって!!なんなの?俺のこと殺す気?!」
あ、そういえばそうだと今の格好を言われて思い出す。
つまり、萌え死にしそうだと言うことか…ふーん?
「辰也さん、この格好気に入ったんですか?」
「うっ…悪い笑顔になってるよ環ちゃん。」
シートベルトを外して辰也さんの方へとにじみ寄る。膝と膝が触れる距離になり、辰也さんの太腿に手を滑らせる。
「部屋に戻ったら、脱がせてくれますか?」
顔を真っ赤にして目を瞑り、必死に僕から距離を取ろうと、上半身を窓へと逸らす無駄な抵抗をする辰也さん。
僕だけを考えている辰也さんが愛しい。
気まずそうな南雲さんの視線は無視して、手を絡ませる。
車でやるのもいいと思うけど、それはいつか免許を取ったとき、2人っきりの空間でのお楽しみにとっておく。
だけどまあ…キスはいいよね?
チュッとリップ音をたてて、辰也さんの首筋、頬、唇にキスを落とす。
「口、開けてほしいです…」
上目遣いで辰也さんにお願いすると、観念してくれたのか口を開けて舌をそろ~っと出してくれる。あー可愛い。
遠慮なく舌を絡ませ、だらしなく涎を垂らし貪るようにキスをする。
水音と吐息が響く車内で、とろんとした目に変わった辰也さんが僕の首に腕を回す。
時折こくんと混ざり合った唾液を飲んでいる姿が僕の気持ちをざわつかせる。
本能のままに手が辰也さんの太腿から中心へと移る。触られたことで一瞬腰が引けていたが、すぐ腿を擦り付けあい僕の手を巻き込む。
「ふっ…んんっあっ環ちゃっ…」
唇が離れ、辰也さんの首筋を舐め、キスマークをつけるとすがりついていた腕が強く締まる。
「ふふ…か~わい♡もっと気持ちいいことします?」
「んっげふんげふん!んんっ!環さま、着きましたよ。」
わざとらしい咳のお陰で、思考が冷静になった。
外の光景を覗くと、実家の門が開き車が進んでいるところだ。
玄関には心配そうな母と姉が立っている。
そのことに気づいた辰也さんが、腕を下ろし主張している股間を服の裾で隠し始めた。
いいところだったが、続きはすぐ出来るし…
玄関の前に止まり、辰也さんのシートベルトを外している間に外からドアを開けてもらう。
「…歩けますか?」
「意地悪…誰のせいでこうなったと思ってんの?」
主張が治らない辰也さんが、羞恥の涙目で睨んでくる。それだけ感じてくれていたというのは嬉しいし、今だって子猫の威嚇ぐらいにしか思えない。
「僕の責任ですね。じゃあまたお姫様抱っこでいいですか?」
「……んっ。」
腕を広げて抱っこを所望の辰也さんに鼻の下伸ばしたまま持ち上げる。
そんな僕たちを見て、興奮気味の母と姉は何かを察知したのか、おじいちゃん家に泊まるから夕飯は冷蔵庫から食べてと耳打ちされた。
それじゃあ遠慮なく。
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