目黒くんの夏休み

二藤ぽっきぃ

文字の大きさ
上 下
2 / 30

2.

しおりを挟む
「ここが環ちゃんの実家…お土産これでよかったかな?あ、待って俺変じゃない?」

駅からバスに乗り10分、バス停から5分。

僕の実家、それなりに広い庭付きの家のセキュリティがしっかりした門の前で、あわあわしてる辰也さん。
学園の最寄駅で買った土産を見てはこれでよかったのかなと悩み、服装や髪型はおかしくないかと尋ねてくる。

「緊張している辰也さんも可愛いです。」

そう言うとぼっと顔を赤く染めて顔を隠してしまった。可愛いがすぎるな本当!可愛いの暴力!

深呼吸で気持ちを落ち着かせてからインターホンを鳴らし、暫くして応答の声がする。

「ただいま帰りました。門開けて。」

「あらまあ、随分早かったわね。今解除するわ。」

ピッという音が聞こえて、門が開く。

開いた門から中へと辰也さんをエスコートして、玄関前まで荷物を運ぶ。

玄関のドアを開けようと、ドアノブに手をかけると同時に、ドアが開いた。

「おかえり~。恋人連れ帰るなんて、すっごく楽しみだったのよ。」

「母さんただいま。こちら西條辰也さん。僕の恋人。辰也さん、こちら母です。」

玄関へと入り、ドアの施錠をしてから軽く挨拶をする。
いつ見ても僕に似ている母さん。背は僕の方が高いが、姿勢も良くて特に差を感じたことはない。

髪を伸ばした僕の女装姿って感じだろうな。
授業参観ですぐお前の母さんだろと言われるほどのそっくり。

「は、初めまして!環ちゃんとお付き合いしています。西條辰也です!ご厚意に甘えて居候させて頂きます。」

「まあ、そんなに堅くならなくていいのよ。しっかりした子なのね、それに環の好きな顔…やったじゃないの。」

口元を手で隠しながらにししと笑い、肘で小突いてくる母には頭が上がらない。
何故なら、この親にしてこの子ありとは僕の家族だろう。

姉さんの部屋で薄い本と出会って暫く、姉弟でこそこそと嗜んでいたが母にも見つかりまさかの参戦。

父以外は見事に腐っているという結果になった。
まあ、父は母に頭が上がらず、オタクのよき理解者で偏見もない。
今回も恋人を連れて帰ると言った時、あっさり許可してくれた。ここが我が家のいいところ。

「さあさ、疲れたでしょ。冷房点けてるから、リビングにおいでなさい。」

「お邪魔します。」

ああ、靴をしっかり揃えて端に置いてる!
お行儀いい辰也さん、この後もいつもみたいに手洗いうがいをするのだろう。

「辰也さん、洗面所はこちらです。母さん!手、洗ってくる!」

「はーい。荷物運んでおくわね。」

「ありがとー!」

玄関から左手に曲がったところにある洗面所へ案内し、でかい鏡の前に2つ設置された蛇口でそれぞれ手洗いとうがいをする。
辰也さんと一緒にいて、僕も癖がついてきた。

恋人の癖がうつるとか最高かよ。

「ねぇ環ちゃん。俺ちゃんとできてた?」

心配でたまらないといった顔の辰也さんにきゅんとしながら、笑顔で答える。

「ええ、とても可愛らしかったです。1つ気になるのは…居候じゃなくて花嫁修行でもよかったんですよ?あとお邪魔します、じゃなくてただいまって言ってください。」

気になったのはそのくらいか。少し意地悪をしたと自覚はあるが、目の前で口をあうあうさせている辰也さんを見たいがためだ。

僕と付き合う前、学園の親衛隊と関係を持っていたと聞いていたが、処女は僕がもらったし。トラウマに押しつぶされないよう依存していただけで恋愛とかじゃなかったって話してくれた。

今は僕だけの辰也さんだから、多目にみよう。
それにキャラとして暗い過去のある元ヤリチンチャラ男受けとか最高です。

「ほんっとさぁ…環ちゃんってタラシの自覚ある?」

タラシている自覚はないが、辰也さんがそう感じているならそれは貴方をいつも思っての言動だと思う。

顔を両手で隠し、指の間からこちらを窺う辰也さんに意味深に微笑む。

考えは心に秘めておこう。
慣れず赤面になる貴方が可愛いから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

フラグ回収率

ぬるあまい
BL
「腐男子攻めを流行らせたい?じゃあ協力してやるよ」 男前腐男子×鈍感男前/クール会計×鈍感男前≪三角関係≫

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

ヒリスの最後の願い

志子
BL
気付けば小説の中の傲慢な王の子どもに生まれ変わっていた。 どうせ主人公に殺される運命なんだ。少しぐらいわがままを言ってもいいだろ? なぁ?神様よ? BL小説/R-15/流血・暴力・性暴力・欠損表現有 誤字脱字あったらすみません。

処理中です...