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73話

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少し気まずい空気の中チーム分け。
3対3でいいだろうと言ったが、審判もいるのではと誰かが言い始め、ペアを組むことになった。

揉めるだろうなと覚悟はしていたのだが、咲山兄弟は2人で組むといい、若松くんが俺を誘ってくれたため、残った蜂須賀と京本は拒否権なく組まされた。

「蛍様と敵同士…うぅ…」

反論の余地がなかった蜂須賀が見るからに落ち込んでいる。
チームということで隣にやってきた若松くんが、元気いっぱいの笑顔を向けてくれた。
それに応えて俺も笑顔を返す。蜂須賀が膝から崩れ落ちて発狂しているのは、きっと幻覚だろう。

「頑張ろうか若松くん。」

「おう!俺のミラクルスーパーサーブをお見舞いしてやるぜ!」

初戦は俺と若松くんペア対咲山ペア。
放心している2人はそのままにして、さっさと遊ぼうと塁斗に急かされたためだ。

審判が機能しないというのも意味がないとは思うのだが、じゃんけんで勝った若松くんからのサーブでゲームが始まる。

「くらえ!超ウルトラスーパーサーブ!」

後ろで高らかにサーブ名を宣言してからボールを打つ音が聞こえる。
それなりのスピードのサーブが真斗と塁斗の間に向かうが手前にいた塁斗に難なく取られてしまった。

「よっと…真斗、ほい。」
「オッケー!」

塁斗とレシーブによって高く上げられたボールを真斗が狙いを定めてアタック。

「おっと、いけるか若松くん。」
「任せろ!」

思ったより白熱したゲーム、5本先取で勝ったのは咲山ペア。悔しがっている若松くんを宥めつつ、2回戦。

咲山ペアと蜂須賀と京本ペアのゲームが始まる。
サーブ権のじゃんけんの際、ネット越しに何か話したかと思えば蜂須賀と京本の雰囲気が殺伐とする。

「ぜってー勝つ!!」
「叩き潰してやる…」

飄々とした態度の咲山兄弟を睨みつけ、ゲーム開始。塁斗のサーブを京本がとり、それを蜂須賀がジャンプアタック。
最速で放たれたアタックは真斗の真横の砂を抉った。

「うっそ~ん…煽りすぎた?」
「みたいだね…」

冷や汗をかいている咲山兄弟に同情の目を向けてやろう。さっきの仕返しだ。

結果、5対0のストレートで蜂須賀と京本ペアの勝ち。

「何をあんなに怒っていた。」

コートから戻ってきた蜂須賀に聞いてみると、さっきまでの近付き難い雰囲気から一転、まるで子犬が憑依した様子で俺の元へやってくる。

「それは秘密っすけど、蛍様補給させて~。」

いつもの如く、真正面から抱きついてくる。
いつもと違う点は蜂須賀の上半身が裸であることと汗をかいていること。

妙にドキドキする。後ろ触られたときよりも。

「おい、俺も活躍してた。蛍こっちこい。」

首に腕を回され後ろに引っ張られ、蜂須賀から離される。

機嫌が戻っていた蜂須賀の額に青筋が見える。

「常々考えてたんすけど…お猿会長とは一度話し合いしないとっすよねぇ……」

「なー!次俺らとやろうぜ!」

先にコートで手を振って待機している若松くん。
とてもありがたいよ。能天気と言ったら悪いが、険悪な雰囲気をぶち壊してくれて。

この後のゲーム結果、こてんぱんという表現が正しいだろう。完全勝利した蜂須賀と京本ペア。

意外にも息が合っていて、普段の仲の悪さからは考えられない。

まあそのことを言ったら、また喧嘩が始まるだろうから言わないがな。
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