世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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70話

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夕方、蜂須賀を駅まで送りまた来週と別れを告げた。

「で?本当にヤってないんだよな?」

「しつこいぞ嵐雪。というかそういうものは聞くな。」

夜、夕飯も風呂も済ませ俺の部屋でダラダラしている嵐雪が髪を濡らしたまま聞いてくる。

ネットに夢中なのか、携帯から目を離さない。

自分で使っていたタオルを嵐雪の頭に被せ、その上から拭いてやる。
寮では人のこと言えないが、実家に帰ると嵐雪の世話を焼くのが日常。

「ところで、宿題は進んでいるのか?」

されるがままの嵐雪は携帯を置き、はぁと聞こえるように溜息を吐いた。

「ドリル系は終わらせたけど…」

「ドリル終わったのか?凄いじゃないか。」

夏期休暇のまだ前半中に多教科のドリルが終わったというのに、どこか浮かない様子の嵐雪。
何か困っているのだろうか。

卒業生として思い出してみるが、あとは作文と自由研究とかか?

「社会の自由研究さ、テーマ決まってるんだよね。身近な職業、親とか親戚から話を聞いてまとめろって……」

だいぶ乾いただろうと、タオルを外す。
俯いていた嵐雪が顔を上げて諦めたような顔で話す。

「松田さんに聞いたら、1度父さんか母さんにも聞いてみろってさ。ダメなら執事の職業って書いていいらしい。」

嵐雪は親が嫌いなわけじゃない。期待していないだけだ。
あの2人は愛してくれている。でも我慢していることもあるだろう。

「でもさ、社長職って書いたところでつまんないじゃん。絶対執事についてまとめた方がみんなも気になると思うし。」

「ん?嵐雪は松田さんのことを書きたいのか?」

きょとんとした顔でさも当然のように当たり前だろと言い放つ。

俺は誤解していたな。こいつは強かだ。
親恋しさよりも研究内容。

「は?もしかして兄貴、俺が父さんの迷惑とか考えてるとか思ったの?んなわけねーじゃん。」

「そうだな。お前の頼みなら父さんはすっ飛んでくるだろう。」

嵐雪のおねだりはほとんど叶えているからな、父さん。
仕事について聞きたいなんて言ったら、1日社会科見学みたいに会社に連れて行かれるだろう。

「それに、兄貴の今後のためにじいちゃんと父さんには色々話聞いてるから。そうだ完璧御曹司にそろそろ婚約者ができるかもだって。」

完璧御曹司ってもしかして京本のことか?
婚約者、まあそうだろうなとしか思えない。

「仲神との血縁を結ぶ話もあったけど、妙齢の女がいないから流れそう。まあ年上でいいならいるけどね。」

親戚、従姉妹たち合わせても高校生の女の子はいないな。
1番近くて24歳だったか?

姉さんたちを思い出すが、親戚の集まりでしか会わないからあまり知らないなと改めて思う。

話の区切りもついたし、濡れたタオルを洗濯室へ持って行こうかとどあのほうへ向かうとき、嵐雪が呟く。

「……やっぱ蜂須賀流星のほうか。」

蜂須賀の名前が聞こえたが、それが何を意味するのか分からない。

「何か言ったか?」

「何でもない。海行きたかったなぁって。」

素直に聞き返してみたが誤魔化される。

「じゃ、おやすみ。」

「ああ、おやすみ。」

そそくさと部屋を出て行き、廊下を挟んだ向かいにある嵐雪の部屋へと入って行く。

ちらりと見えたが壁一面に何かが貼り付けられていた。調べ物でもしているのかと思ったが、勝手に入るのは嫌われそうだ。そう考え本来の目的である洗濯室へ向かう。
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