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64話
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「松田さん、こいつ追い出して!」
「嵐雪様、お友達を邪険にしてはいけませんよ。」
昼食の用意をしてくれている松田さんに、ソファ越しで訴えかける嵐雪。その様子をにやにやと楽しそうに眺めている葉山に呆れた顔を向けてから松田さんの元へ向かう。
俺に気づいた松田さんは、サッとコップを2つ用意して、冷蔵庫から2リットルのお茶をトレーに乗せ始める。
飲み物を取りに来たと、すぐ把握したみたいだ。
「ありがとう松田さん。聞きたいことがあるんですが、俺のアルバムってありますか?」
トレーを受け取り、もう一つの用件を伝える。
アルバムと聞くと、松田さんは目を輝かせて大きく頷いた。
「ええ、ええ!ございますとも!社長夫妻にしっかりと成長を伝えるのが仕事ですからね。ちゃんと人を雇って密かにお撮りしていました。」
松田さんが撮っていた記憶がなかったから、ないと思っていたんだが、他にも人がいたのか。
「保管は、私の分と社長と奥様の分がございます。手っ取り早くご覧になりたいなら、社長のお部屋にあるはずですよ。」
「なぁ、それって嵐雪のもあるってことだろ?俺も見たい!」
腕の中にすっぽりと嵐雪を収めて会話に入ってきた葉山がそう言う。
嵐雪は、抵抗するのを諦めたのか腕の中で携帯を弄っている。目が死んだ魚みたいだ。
「それなら鑑賞会と致しましょう。蛍様のお友達も呼んで、動画にまとめたものもありますので。シアタールームで見ながらポップコーンでも食べます?」
「塩!多めに作って!」
ポップコーンと言われて、誰よりも早くに反応を示す嵐雪。生気が戻ったな。
「畏まりました。いや~やっぱり人が多いといいですね。作りがいがあります。」
いそいそとポップコーンの準備に取り掛かる松田さんを確認してから、蜂須賀を待たせている自室へと戻る。
「流星、アルバムがあるそうだ。シアタールームで鑑賞会になってしまったんだが、いいか?」
ノックもせずに話しながら部屋に入ると、俺のベッドにうつ伏せで枕に顔を埋めている蜂須賀の姿。
スーッという音が聞こえるが、何を吸ってるんだ?
「りゅ、流星?どうした?」
「蛍様の匂いを摂取してました。アルバムあるんすね!小さい蛍様…どんなのか楽しみっす。」
さらっと行動の理由を答え、ベッドから離れた蜂須賀は流れるように俺を正面から抱きしめる。
匂いを摂取って何だ…
まあ、蜂須賀のこういう行動は学園のときから害はないし放置でいいだろう。
アルバム、なくてもいいって言ってくれてが、この喜び様…あってよかった。
蜂須賀の笑顔を見ると、いい気分だ。
俺も嬉しくなる。
「じゃあ、下に行こうか。」
そう言うと、蜂須賀は自分の手を俺の手に絡めて握りしめる。
その手を眺めて嬉しそうにしている蜂須賀の顔。
握りかえしてやると、みるみる照れて顔を赤くする。
俺の一挙一動で変わる蜂須賀の表情。
愛しいという気持ちなのだろうが、これが恋かは分からない。だが、この空気は心地いい。
もう少しだけ、待ってくれ……
「嵐雪様、お友達を邪険にしてはいけませんよ。」
昼食の用意をしてくれている松田さんに、ソファ越しで訴えかける嵐雪。その様子をにやにやと楽しそうに眺めている葉山に呆れた顔を向けてから松田さんの元へ向かう。
俺に気づいた松田さんは、サッとコップを2つ用意して、冷蔵庫から2リットルのお茶をトレーに乗せ始める。
飲み物を取りに来たと、すぐ把握したみたいだ。
「ありがとう松田さん。聞きたいことがあるんですが、俺のアルバムってありますか?」
トレーを受け取り、もう一つの用件を伝える。
アルバムと聞くと、松田さんは目を輝かせて大きく頷いた。
「ええ、ええ!ございますとも!社長夫妻にしっかりと成長を伝えるのが仕事ですからね。ちゃんと人を雇って密かにお撮りしていました。」
松田さんが撮っていた記憶がなかったから、ないと思っていたんだが、他にも人がいたのか。
「保管は、私の分と社長と奥様の分がございます。手っ取り早くご覧になりたいなら、社長のお部屋にあるはずですよ。」
「なぁ、それって嵐雪のもあるってことだろ?俺も見たい!」
腕の中にすっぽりと嵐雪を収めて会話に入ってきた葉山がそう言う。
嵐雪は、抵抗するのを諦めたのか腕の中で携帯を弄っている。目が死んだ魚みたいだ。
「それなら鑑賞会と致しましょう。蛍様のお友達も呼んで、動画にまとめたものもありますので。シアタールームで見ながらポップコーンでも食べます?」
「塩!多めに作って!」
ポップコーンと言われて、誰よりも早くに反応を示す嵐雪。生気が戻ったな。
「畏まりました。いや~やっぱり人が多いといいですね。作りがいがあります。」
いそいそとポップコーンの準備に取り掛かる松田さんを確認してから、蜂須賀を待たせている自室へと戻る。
「流星、アルバムがあるそうだ。シアタールームで鑑賞会になってしまったんだが、いいか?」
ノックもせずに話しながら部屋に入ると、俺のベッドにうつ伏せで枕に顔を埋めている蜂須賀の姿。
スーッという音が聞こえるが、何を吸ってるんだ?
「りゅ、流星?どうした?」
「蛍様の匂いを摂取してました。アルバムあるんすね!小さい蛍様…どんなのか楽しみっす。」
さらっと行動の理由を答え、ベッドから離れた蜂須賀は流れるように俺を正面から抱きしめる。
匂いを摂取って何だ…
まあ、蜂須賀のこういう行動は学園のときから害はないし放置でいいだろう。
アルバム、なくてもいいって言ってくれてが、この喜び様…あってよかった。
蜂須賀の笑顔を見ると、いい気分だ。
俺も嬉しくなる。
「じゃあ、下に行こうか。」
そう言うと、蜂須賀は自分の手を俺の手に絡めて握りしめる。
その手を眺めて嬉しそうにしている蜂須賀の顔。
握りかえしてやると、みるみる照れて顔を赤くする。
俺の一挙一動で変わる蜂須賀の表情。
愛しいという気持ちなのだろうが、これが恋かは分からない。だが、この空気は心地いい。
もう少しだけ、待ってくれ……
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