67 / 93
62話
しおりを挟む
脱走犬は葉山の犬であることが判明。
世間は狭いな、なんて思いながらその日は引き取ってもらった。
それから数日、今日は蜂須賀が泊まりに来る日だ。
両親は予定を空けていたが、急遽お得意様との会議が入り2人仲良く海外出張。
友達を一目でも見たいと言っていたが飛行機の便に間に合わなくなるため泣く泣く向かっていた。
本音を言うと蜂須賀にあの両親を合わせたくなかったから丁度いい、なんて思ってしまった。
「…何でこいついんの?」
「つれないこと言うなよ、俺と嵐雪の仲だろ?」
「うっざ、部活行けよ。」
「今日はメンテナンス日で休みなんですぅ。見ろよ、ジャージじゃなくてかっこいい私服だろ?」
リビングで蜂須賀を迎えに行こうと準備をしている俺の他に、ソファで寛ぎ口論するのは嵐雪と葉山。
朝からやってきた葉山は嵐雪の宿題を見てやるとの名目で遊びに来た。追い返すのも忍びないと思い招いたのだが、嵐雪に悪いことしたな。
そんな2人を尻目に玄関へと向かう。
すると丁度、玄関のインターホンが鳴る。
「はい、どちら様でしょうか。」
インターホンに応答する松田さんの後ろから、ちらりとカメラの画面を確認すると、見慣れた金髪が映る。
「仲神蛍様のお宅でしょうか、蜂須賀流星です。今日伺うと連絡してました。」
笑顔でカメラに向かっている蜂須賀は、身嗜みをきちんとして背筋を正しているのがよく分かる。
「今お迎えにあがります。」
「お手数おかけします。」
通話を切り、玄関へと鍵を開けに行こうとする松田さんを止めて、俺の客だからと迎えを代わってもらう。
駅前に着いたら連絡するって言ってたのに、まさか家まで来てくれるなんて。驚きを隠せない。
玄関の鍵を開け、ドアをそっと開くと見上げた先に蜂須賀が立っていた。
「いらっしゃい、流星。よく来たな。」
「あは♡蛍様だ。会いたかったっす。」
松田さんとのやりとりがまるで別人のように感じていたが、今は間違いなく俺の知ってる蜂須賀だ。
「荷物はこのボストンバッグだけか?」
「はい、あと細かいのはこっちにあるんで。」
開いたドアを押さえてくれている蜂須賀の荷物を運びこみ、中に入るよう促す。
「本物の蛍様…はぁぁ。蛍様の匂いがする。」
「疲れただろ、少し休むといい。」
蜂須賀の実家からそう遠くはないが、まあ電車の乗り換えとか大変だったろう。
鍵を施錠し直す俺に蜂須賀が抱きつき離れない。
先に荷物を運んで部屋で休ませるか…と考えていたら、リビングから怒鳴りながら嵐雪が飛び出して来た。
「あーもう!葉山うざい!俺はすることあんだから、お前に構ってる暇ないの!」
脇目も振らずに廊下を走って来た嵐雪は、足元のボストンバッグに気づかず、思いっきりつまづいた。
「嵐雪!」
そのまま前のめりに転びそうになった嵐雪を、どうにか支えることができた。
一瞬何が起きたのか理解できていない嵐雪が瞬き、我に返って立ち上がった。
「兄貴ありがと。」
「いや、あの荷物は俺が置いてしまったものだからな。すまなかった。」
玄関先にまで走って来たということは、このまま2階へ行き、部屋に籠るつもりなのだろう。
それにしても、ここまで嫌がるなんて葉山は一体何をした。
玄関でそんな一悶着が起き、静まり返ると口を開いたのは蜂須賀だった。
「蛍様の弟さんっすね。初めまして蜂須賀流星っす。お世話になります。長い付き合いになると思うんで今後ともよろしくお願いします。」
自己紹介を済ませると、深々とお辞儀をする蜂須賀に嵐雪が少し慌てる。
「あ、はい。嵐雪です。」
礼儀正しい嵐雪、少し兄バカなのかもしれないが2人のやりとりを微笑ましく眺めていたらリビングからのそっと現れた葉山が、こちらをみてから蜂須賀に怪訝な目を向けつつ近づいてくる。
「嵐雪くーん、俺はダメなのにそいつはいいんだ。へー…」
蜂須賀を上から下までじろじろと観察をした葉山が、何かに満足したのか嵐雪の肩に腕を置き一応と言いたげな挨拶をする。
「俺は嵐雪の兄ポジだから、あんたの邪魔はしねーよ。」
「そうっすか、それならいいです。」
「おい、肩!重いんだよ!」
「いつまで玄関で話すつもりだ、流星上がってくれ。」
葉山からの逃亡に失敗した嵐雪はそのままリビングに連れて行かれ、俺は蜂須賀を部屋に案内するため2階へ向かう。
……葉山、嵐雪の兄ポジとか言ってたような気がするがそれ以上の感情はないよな?
学園で生活してから、恋愛に結びつけてしまいそうになるが、違うよな?
世間は狭いな、なんて思いながらその日は引き取ってもらった。
それから数日、今日は蜂須賀が泊まりに来る日だ。
両親は予定を空けていたが、急遽お得意様との会議が入り2人仲良く海外出張。
友達を一目でも見たいと言っていたが飛行機の便に間に合わなくなるため泣く泣く向かっていた。
本音を言うと蜂須賀にあの両親を合わせたくなかったから丁度いい、なんて思ってしまった。
「…何でこいついんの?」
「つれないこと言うなよ、俺と嵐雪の仲だろ?」
「うっざ、部活行けよ。」
「今日はメンテナンス日で休みなんですぅ。見ろよ、ジャージじゃなくてかっこいい私服だろ?」
リビングで蜂須賀を迎えに行こうと準備をしている俺の他に、ソファで寛ぎ口論するのは嵐雪と葉山。
朝からやってきた葉山は嵐雪の宿題を見てやるとの名目で遊びに来た。追い返すのも忍びないと思い招いたのだが、嵐雪に悪いことしたな。
そんな2人を尻目に玄関へと向かう。
すると丁度、玄関のインターホンが鳴る。
「はい、どちら様でしょうか。」
インターホンに応答する松田さんの後ろから、ちらりとカメラの画面を確認すると、見慣れた金髪が映る。
「仲神蛍様のお宅でしょうか、蜂須賀流星です。今日伺うと連絡してました。」
笑顔でカメラに向かっている蜂須賀は、身嗜みをきちんとして背筋を正しているのがよく分かる。
「今お迎えにあがります。」
「お手数おかけします。」
通話を切り、玄関へと鍵を開けに行こうとする松田さんを止めて、俺の客だからと迎えを代わってもらう。
駅前に着いたら連絡するって言ってたのに、まさか家まで来てくれるなんて。驚きを隠せない。
玄関の鍵を開け、ドアをそっと開くと見上げた先に蜂須賀が立っていた。
「いらっしゃい、流星。よく来たな。」
「あは♡蛍様だ。会いたかったっす。」
松田さんとのやりとりがまるで別人のように感じていたが、今は間違いなく俺の知ってる蜂須賀だ。
「荷物はこのボストンバッグだけか?」
「はい、あと細かいのはこっちにあるんで。」
開いたドアを押さえてくれている蜂須賀の荷物を運びこみ、中に入るよう促す。
「本物の蛍様…はぁぁ。蛍様の匂いがする。」
「疲れただろ、少し休むといい。」
蜂須賀の実家からそう遠くはないが、まあ電車の乗り換えとか大変だったろう。
鍵を施錠し直す俺に蜂須賀が抱きつき離れない。
先に荷物を運んで部屋で休ませるか…と考えていたら、リビングから怒鳴りながら嵐雪が飛び出して来た。
「あーもう!葉山うざい!俺はすることあんだから、お前に構ってる暇ないの!」
脇目も振らずに廊下を走って来た嵐雪は、足元のボストンバッグに気づかず、思いっきりつまづいた。
「嵐雪!」
そのまま前のめりに転びそうになった嵐雪を、どうにか支えることができた。
一瞬何が起きたのか理解できていない嵐雪が瞬き、我に返って立ち上がった。
「兄貴ありがと。」
「いや、あの荷物は俺が置いてしまったものだからな。すまなかった。」
玄関先にまで走って来たということは、このまま2階へ行き、部屋に籠るつもりなのだろう。
それにしても、ここまで嫌がるなんて葉山は一体何をした。
玄関でそんな一悶着が起き、静まり返ると口を開いたのは蜂須賀だった。
「蛍様の弟さんっすね。初めまして蜂須賀流星っす。お世話になります。長い付き合いになると思うんで今後ともよろしくお願いします。」
自己紹介を済ませると、深々とお辞儀をする蜂須賀に嵐雪が少し慌てる。
「あ、はい。嵐雪です。」
礼儀正しい嵐雪、少し兄バカなのかもしれないが2人のやりとりを微笑ましく眺めていたらリビングからのそっと現れた葉山が、こちらをみてから蜂須賀に怪訝な目を向けつつ近づいてくる。
「嵐雪くーん、俺はダメなのにそいつはいいんだ。へー…」
蜂須賀を上から下までじろじろと観察をした葉山が、何かに満足したのか嵐雪の肩に腕を置き一応と言いたげな挨拶をする。
「俺は嵐雪の兄ポジだから、あんたの邪魔はしねーよ。」
「そうっすか、それならいいです。」
「おい、肩!重いんだよ!」
「いつまで玄関で話すつもりだ、流星上がってくれ。」
葉山からの逃亡に失敗した嵐雪はそのままリビングに連れて行かれ、俺は蜂須賀を部屋に案内するため2階へ向かう。
……葉山、嵐雪の兄ポジとか言ってたような気がするがそれ以上の感情はないよな?
学園で生活してから、恋愛に結びつけてしまいそうになるが、違うよな?
20
お気に入りに追加
1,085
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

推しを擁護したくて何が悪い!
人生1919回血迷った人
BL
所謂王道学園と呼ばれる東雲学園で風紀委員副委員長として活動している彩凪知晴には学園内に推しがいる。
その推しである鈴谷凛は我儘でぶりっ子な性格の悪いお坊ちゃんだという噂が流れており、実際の性格はともかく学園中の嫌われ者だ。
理不尽な悪意を受ける凛を知晴は陰ながら支えたいと思っており、バレないように後をつけたり知らない所で凛への悪意を排除していたりしてした。
そんな中、学園の人気者たちに何故か好かれる転校生が転入してきて学園は荒れに荒れる。ある日、転校生に嫉妬した生徒会長親衛隊員である生徒が転校生を呼び出して──────────。
「凛に危害を加えるやつは許さない。」
※王道学園モノですがBLかと言われるとL要素が少なすぎます。BLよりも王道学園の設定が好きなだけの腐った奴による小説です。
※簡潔にこの話を書くと嫌われからの総愛され系親衛隊隊長のことが推しとして大好きなクールビューティで寡黙な主人公が制裁現場を上手く推しを擁護して解決する話です。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる