世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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61話:蜂須賀流星

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「はぁぁ…蛍様に会いたい。」

実家の俺の部屋、母屋じゃなくて離れにある。
ちょっとやそっと騒がしくしても向こうには聞こえないから問題ない。

あと4日、4日経てば蛍様に会える、家に泊まれる。

離れてから3日、欠かさずメールしてるし電話もしてる。
いつもは夜に返信をしてくれる蛍様が、今日は昼のメールに返信してくれた。
なんと写真付きで。弟さんに選んでもらったスーツで、今晩は家族で外食だから電話はできないと添えられていた。

蛍様の魅力を引き出し、尚且つ流行も取り入れるという完璧なセンスのスーツ。
似合ってる、でもそれよりもフォーマルに決めている蛍様が大人びてて、色気たっぷり。

たった1年の年の差だけど、大きな壁が見えた。
早く大人になりたい。
そんで蛍様と暮らして、お世話して、俺なしじゃ生きていけない身体にしたい。

執務室で蛍様の体液を飲んだことを思い出す。
よく我慢できたな俺…でも受け入れてもらうのは大変だから準備もせずに成り行きでするなって目黒からめちゃくちゃ言われてるし。

俺だって調べたよ、男同士のやり方。
ただでさえ学園でヤってる奴いて、風紀の指導で止める前に流れを密かに見学させてもらったこともある。どうでもいい奴らのなんて気持ち悪かったけど、蛍様が俺に縋り付いてくれるのを想像したら全然イケる。

お泊り…ちょっと強引に迫ってみよう。
最後まではしなくても前戯までなら許されるはず。気持ちいいことだけを教えて、好きだって耳元で囁いて……

蛍様の実家の部屋、どんな感じだろ。
アルバムとかあったりして?

そんな妄想だけで、幸せになれる。
ここ数日の嫌な記憶を上書きできる。


『帰って来たんだな…居てもいいけど母屋には来んなよ。』
『うわ、何でお前いんの?最悪徹夜明けだってのに、見たくないもん見た。』
『……うちの会社について聞いていたが、将来はどうするつもりなんだ。蜂須賀である限り、それにふさわしい振る舞いをしろ。』


昨日寮から帰った時、家の奴らに言われた言葉。

痛くも痒くもないが、煩わしい。
たかが血縁関係の他人だ。
引き取られた当初はびくびくあいつらの顔色を伺ってばかりだったが、今は何の感情も湧かない。

ただ、この世界には蛍様がいる。
同じ空の下のどこかで息をしている。

その事実のおかげで、心が安らぐ。


あと4日…
完璧な計画を、やり遂げなくては。
お猿会長になんて奪われてたまるか。

どうせあいつは誰でもいいんだ、でも俺には蛍様だけ。

「旅行に誘うなんて…いい度胸してるよなぁ。」

カレンダーに書かれた、お泊まりの次の週。
蛍様は海に行く。
何としてでも、蛍様の口から俺も誘ってもらわなくては。
偶然を装って行くにしても、プライベートビーチに潜入は難しい。

それなら堂々とついて行った方が早い。

「俺に勝ったつもりなのかな…まあ水着見たいだけか。」

本命には手を出せないヘタレ会長。
絶対に邪魔してやる。
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