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60話

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うどんを持ってテーブルに戻ると、何やらご機嫌な葉山と、その正反対でどんより落ち込んでいる嵐雪。

話を聞くところ、脱走犬が葉山の犬かもしれないため、この後確認に来ることになったらしい。

「なら、食べたら帰るか。」

もし違うなら、葉山の犬はまだどこかに脱走していることになるからな、確認は早い方がいいだろう。

写真撮っておくべきだったな…でもあの時点では汚れていて判別付かないし。
松田さんのカメラスキルが高ければ、写真を転送してもらうが、そうもいかない。
呪われているのでは、と言うくらい松田さんが撮った写真は、ピンボケ、残像、フラッシュによる白飛びなどが多発。

連れて行った方が早いな、葉山の犬だった場合そのまま連れて帰ったらいいし。うん。

松田さんに迎えのメールを送り、気落ちしている嵐雪を支えながらコインロッカーから荷物を回収。

「何それ?何買ったんだ?」

興味津々の葉山が嵐雪に絡んでいる。
身長伸びたな…俺と同じくらいか?いやまさか俺より上?

嵐雪を挟んで並んでいる葉山を失礼だと分かっているが、ついマジマジと見てしまう。

「兄貴、場所代わって。」

葉山の隣が嫌だったのか、ささっと移動して俺が真ん中になる。
俺の身体に隠れるように歩き始める嵐雪を、逃すまいと葉山が再び嵐雪の隣へ移動する。

「なぁ、さっきも思ったんだけどなんで兄貴って呼んでんの?前は兄さんだったろ?」

あ、思春期だと思って触れてなかったデリケートなところを!
余計なことを言った葉山を睨みつけるが、どこ吹く風の葉山には効かない。

「あーもう!いい加減にしてよね!」

とうとうキレた嵐雪が、先々歩き、駐車場へと向かってしまう。
その背中を俺と葉山が追うことになったんだが、あんなに嫌がっているんだ、一言言っておかないとな。

「葉山、あまりからかうな。本当に嫌われるぞ。」

昔から嵐雪に絡んでいた葉山。
寧ろ嵐雪目当てで俺と仲良くしていた気がする。

弟が欲しかったって言ってたが、学園に通っている今なら分かる。
好きな子ほどいじめたいってあれだろ、多分。

でも感情的には兄弟愛だろう。
……そうだよな?

「嵐雪まじ可愛いよな。俺の弟に欲しい。」

「やらんぞ。」

「弟に欲しい。」これにどれだけ振り回されたか…

足早に嵐雪を追いかけ始めた葉山に置いて行かれたその時、ピロンッと携帯の受信音が鳴る。

メールだろう。相手は多分、流星。

画面を確認すると、本当に蜂須賀からのメールだった。内容を要約すると今日は何してる?ってことだな。

……スーツ試着した時の送ってみるか。

断じてかっこいいって言って欲しいわけではない。まあ、多少はあるが……

邪な気持ちを抑え込んで、送信ボタンを押す。
すると、1分も経たず返信が着た。
早すぎるだろう。

褒められることを期待しながら目を通すと、そこに書かれていたのはたった一言「エロすぎっす。」…失礼じゃないか?

ちょっと、これは拗ねてもいいだろう。

メールは見なかったフリをして駐車場の車へと急ぐ。

……せめてもうちょっとあると思った。
だって蜂須賀だぞ?いつも褒めてくれるのに、慣れって怖いな。
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