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59話:仲神嵐雪
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「久しぶり、嵐雪。偶然だな。」
向かいの席に座ったままの色黒の男。
兄さんの同級生、葉山なんとか。
小学校からの付き合いで、家にも数えるほどだが来てる。
こいつ嫌い。
兄さんと話してる時に邪魔してくるから。
話しかけてくる男を無視して、ダブルチーズバーガーセットのポテトを食べる。
「なぁ無視?嵐雪くーん。お兄さんとお喋りしようぜ。」
猫撫で声に鳥肌がたつ。無心でポテトを食べる俺の顔を覗き込んでくる色黒は、未だ席を立つ気配すらない。
「相変わらず可愛い顔してんな。もぐもぐしやがって。」
だから会いたくなかった、人のコンプレックスを遠慮なく!
「可愛い言うな、ガングロ。」
「お、やっと反応した。可愛いのは本当じゃん、昔っから美少年って呼ばれてたろ。仲神も美形だし、お前の家系凄いな。」
嫌味をスルーされてしまった。
寧ろ反応したことで色黒の喋りが止まらない。
兄さん早く戻ってきて!
なんて心の叫びは届かず、視線を向けたうどん屋さんの列の真ん中くらいに兄さんはいる。
まだ戻ってこないだろう。
「いや~仲神が県外の高校いったから嵐雪とも付き合いなくなっただろ?俺も強化選手に選ばれてっから時間なくて…こうして会えて良かったぜ。」
ぐいぐいくる…押しに強いやつ嫌い。
そろそろポテトなくなるし、バーガー食べてさっさと解放されよう。
食べてるから捕まってるはず。
包紙を剥がして、中から肉とチーズのいい匂いが鼻を刺激する。
唾液を呑み込み、まずは一口食べる。
こういうジャンクフードが好きだけど、食べる機会がほぼない。
仲神グループの食品が家の冷蔵庫に常備されてるし、松田さんの仕事内容にその食品のアレンジも含まれてるため、ジャンクフードなんて出ない。
ああ、幸せ。美味しいと頭の中で思っていても、顔には出ない。
それなのにこの色黒は、美味そうに食うなって笑いながら言ってくる。
一体どこをどう見てそう思ったのか教えてほしいくらいだ。
「なぁところでよ、せっかくだから一緒に遊ぼうぜ。今日がダメなら家に押しかける。」
この男は常習犯だ。
約束してないのに家のチャイムが鳴る。
昔のことを思い出して身震いする。
しかも兄さんが居なかったときばっかり。
家に入れなかったけど…
そんなとき、色黒の電話が鳴った。
出る様子が見られず、鳴り響く着信音。
「……出たら?煩いんだけど。」
「じゃあ切る。親からだし、緊急ならメールも入れるだろ。」
そう言った瞬間、メールも届いた音がする。
仕方ないというようにメールを確認し始めた色黒は、またかよとため息を吐く。
「嵐雪、帰んねーとだわ。俺ん家の犬が脱走したらしい。またな!」
犬…脱走…おん?
「ねえ、その犬って中型犬?垂れ耳?」
「そーだけど、見せたことないよな?買い始めたの3年前からだし。」
違うかもしれない、違ってて欲しい。
「うちに迷い犬がいて、今保護してるんだけど……確認しにくる?」
嫌々感満載でそう色黒に尋ねると、目を輝かせて立ち上がりかけていたが椅子に座り直す。
「行く!」
力強く答えられて、こっちはもう気力がない。
疲れた。せっかく兄さんとのショッピングだったのに、まさか知り合いに会うなんて…
松田さん、俺の運返して。
向かいの席に座ったままの色黒の男。
兄さんの同級生、葉山なんとか。
小学校からの付き合いで、家にも数えるほどだが来てる。
こいつ嫌い。
兄さんと話してる時に邪魔してくるから。
話しかけてくる男を無視して、ダブルチーズバーガーセットのポテトを食べる。
「なぁ無視?嵐雪くーん。お兄さんとお喋りしようぜ。」
猫撫で声に鳥肌がたつ。無心でポテトを食べる俺の顔を覗き込んでくる色黒は、未だ席を立つ気配すらない。
「相変わらず可愛い顔してんな。もぐもぐしやがって。」
だから会いたくなかった、人のコンプレックスを遠慮なく!
「可愛い言うな、ガングロ。」
「お、やっと反応した。可愛いのは本当じゃん、昔っから美少年って呼ばれてたろ。仲神も美形だし、お前の家系凄いな。」
嫌味をスルーされてしまった。
寧ろ反応したことで色黒の喋りが止まらない。
兄さん早く戻ってきて!
なんて心の叫びは届かず、視線を向けたうどん屋さんの列の真ん中くらいに兄さんはいる。
まだ戻ってこないだろう。
「いや~仲神が県外の高校いったから嵐雪とも付き合いなくなっただろ?俺も強化選手に選ばれてっから時間なくて…こうして会えて良かったぜ。」
ぐいぐいくる…押しに強いやつ嫌い。
そろそろポテトなくなるし、バーガー食べてさっさと解放されよう。
食べてるから捕まってるはず。
包紙を剥がして、中から肉とチーズのいい匂いが鼻を刺激する。
唾液を呑み込み、まずは一口食べる。
こういうジャンクフードが好きだけど、食べる機会がほぼない。
仲神グループの食品が家の冷蔵庫に常備されてるし、松田さんの仕事内容にその食品のアレンジも含まれてるため、ジャンクフードなんて出ない。
ああ、幸せ。美味しいと頭の中で思っていても、顔には出ない。
それなのにこの色黒は、美味そうに食うなって笑いながら言ってくる。
一体どこをどう見てそう思ったのか教えてほしいくらいだ。
「なぁところでよ、せっかくだから一緒に遊ぼうぜ。今日がダメなら家に押しかける。」
この男は常習犯だ。
約束してないのに家のチャイムが鳴る。
昔のことを思い出して身震いする。
しかも兄さんが居なかったときばっかり。
家に入れなかったけど…
そんなとき、色黒の電話が鳴った。
出る様子が見られず、鳴り響く着信音。
「……出たら?煩いんだけど。」
「じゃあ切る。親からだし、緊急ならメールも入れるだろ。」
そう言った瞬間、メールも届いた音がする。
仕方ないというようにメールを確認し始めた色黒は、またかよとため息を吐く。
「嵐雪、帰んねーとだわ。俺ん家の犬が脱走したらしい。またな!」
犬…脱走…おん?
「ねえ、その犬って中型犬?垂れ耳?」
「そーだけど、見せたことないよな?買い始めたの3年前からだし。」
違うかもしれない、違ってて欲しい。
「うちに迷い犬がいて、今保護してるんだけど……確認しにくる?」
嫌々感満載でそう色黒に尋ねると、目を輝かせて立ち上がりかけていたが椅子に座り直す。
「行く!」
力強く答えられて、こっちはもう気力がない。
疲れた。せっかく兄さんとのショッピングだったのに、まさか知り合いに会うなんて…
松田さん、俺の運返して。
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