世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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58話

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「兄貴、スーツ3階だった。」

モール案内板を眺めていると嵐雪が目的地を見つけてくれた。

ここに来るのは久しぶりで、何処に何があるか全く分からない。
夏期休暇も相まって、人で溢れている。

「じゃあ行こうか。」

身動きが取れないでいた嵐雪の腕を俺が引っ張り、エスカレーターへと連れて行ってくれる。

3階に着き、スーツ店へと到着すると、にこやかな営業スマイルを貼り付けた店員がさっと現れる。

「いらっしゃいませ、本日は何をお求めですか?」

「兄貴のスーツ、最近流行のとか見せてくれますか。」

「畏まりました、どうぞどちらへ。」

店員と嵐雪だけが会話し、俺はマネキンとして身体に当てられたり、時には試着をさせられた。

嵐雪が悩むこと30分。

「よし、こっちのスーツとシャツにしよう。ネクタイはこれで。兄貴、カード出して。」

「よしきた。選んでくれて助かった、ありがとう嵐雪。」

ようやく決まったスーツ1式、支払いのためクレジットカードを店員に渡す。

「弟様、お目が高いですね。」

「ええ、自慢の弟です。」

紙袋にまとめてもらった商品を肩にかけて、店員に見送られて店を後にする。

「さて、1番の用事は終わったが……どこか行きたいところあるか?」

店から離れた場所で、隣に並び歩きながら今後の予定を聞くと、携帯を取り出し時間を確認し始めた。

「いい時間だし、フードコート行こ。腹減った。」

「フードコート…4階か、先に荷物を預けてしまおうか。」

コインロッカーが確か近くにあったはず、人で溢れているから持ち歩くのは邪魔になるだろう。

そう思って周りをキョロキョロと見渡すと、後方に見知った顔が居た。地元のとき、仲良くしていた奴だ。

まあ、向こうは俺に気付いてないし、わざわざ話しかけなくてもいいだろう。

コインロッカーに荷物を預け、フードコートへ向かう。
色んな店舗が集められ、どれを食べようか悩んでしまう。

「俺バーガーにする!兄貴は?」

「そうだな…うどんにしよう。先に買っておいで。」

2人がけの席を確保して、嵐雪に先に買いに行かせる。列もあったから暫く時間かかるだろう。

空き時間、携帯で蜂須賀への返信をしていたら向かいの席に座る気配がした。
嵐雪が戻ってきたのかと思って、早かったな、と顔を上げると、さっき見つけた中学までの同級生、葉山が座っている。

「よう、仲神。久しぶり。」

「久しぶり、葉山。すまないが弟と来ていてな、席を外してもらえると助かる。」

3年ぶりに再会した葉山は、最後に見た時より大人びて、肌も黒く、髪はより茶色くなっていた。
高校のジャージを着ていかにも部活帰りの風貌。

水泳でよく賞をもらっていたから、きっと今も続けているのだろう。
昔を懐かしんでいると、少し不機嫌になった葉山がテーブルをトントンと指先で叩く。

「俺がいちゃダメなのか?嵐雪とも顔見知りだろ、あいつだって再会を喜んでくれるだろ。」

席を外せと言ったことに怒っているのだと把握したが、実際俺たちは昼飯のためにここにいるのであって、話すためじゃない。

「なら、お前の椅子を持ってこい。このままだと座れないだろ。」

「兄貴の膝の上でもいいけど?」

トレーの上にバーガーセットを運んできた嵐雪、葉山を避けるようにテーブルに近く。

とりあえず、俺もうどんを買いに行きたいため、戻って来た嵐雪と席を代わる。

「じゃあ昼飯買ってくるから。嵐雪、先に食べてていいからな。」

「はーい。いってら~。」

「ごゆっくり~。」
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