世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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閑話:仲神嵐雪

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俺には自慢の兄がいる。
なんでもできる凄い兄。

仕事ばっかりの両親に代わって、俺の勉強を見たり遊びに誘い出してくれた。
中学の時、沢山のチョコを貰って帰ってきた兄を見て誇らしかった。
だが、聞いたところによると兄は誰とも付き合わないらしい。

きっと、家のために政略結婚をするって思ってるんだろう。賢くて優しい兄、そんな役目は俺に任せて、自由に恋愛をしてほしい。
兄が選ぶ相手はきっと、優しくて素敵な可愛い女性だろう。その子供におじさんと呼ばれたい。

ずっとそばにいて当たり前だった兄が、全寮制の学園に行くと知らされて泣いて止めたのを覚えている。

仕方のないことだと諦めたように笑う兄、きっと俺にはわからないと思って、その表情をしたのだろう。

兄を奪うのかと親に泣きついたが、これも家のためだと言われ松田さんに慰められた。

「蛍様は嵐雪様のために、お家のために3年間だけここから離れます。長い人生でたった3年。ずっと会えないわけじゃありません。泣いて困らせても蛍様は行かなくてはいけません。それならせめて、泣かずに見送りましょう。」

納得はいかなかったが、困らせたいわけじゃない。だが、俺が泣かないだけで兄は安堵している。

「兄ちゃん、頑張るからな。」

そう告げた兄は、その日から家にいない。
電気が灯されない兄の部屋にたまに侵入するようになった。

長期休暇の際、確かに帰ってくるが話すには時間が足りない。
空いた時間で連絡を取る。そんなことを続けて3年目。兄から連絡が着た。内容は恋話。

待て待て、男子校だろう。何で恋愛が始まる。
急いで電話の内容を書き留め、状況を整理する。

知り合いの話、は自分の話。
2人の男に告白された、2人を特定する。
返事をどうしようか悩んでいる、断る1択。

電話を切り、聞き出した情報から2人の男を特定。
最近仲神グループといい関係になっている京本財閥の御曹司、京本誠一郎。
出版社を経営している蜂須賀家の庶子、蜂須賀流星。

「あーあ、壁に画鋲刺しちゃって…ドラマの見過ぎですよ。」

壁に貼り付けた学園の情報や、京本関係と蜂須賀関係の情報を呆れたように見る、お茶を持ってきてくれた松田さん。

「松田さん知ってた?兄さんの通う都塚学園内で同性愛が広がってるの。」

「そりゃ、蛍様が通うところですからね。でもま、学園のうちだけですよ。」

学園内だけで収まればいい、だが電話で聞いた内容は「将来のことも考えてくれてる」だった。

つまり、仲神グループに影響する。

そんなことさせない。
ただでさえグループを継ぐという重圧を背負っている兄に余計な荷物を増やすなんて……

絶対に後悔させてやる。
京本誠一郎なんて、親衛隊?っていうやつらとヤりまくりらしいじゃん!そんな手で兄に触るな!

蜂須賀流星ってやつは家との関わりも薄いし、いきすぎた忠誠心だったらまだマシだ。
でも、蜂須賀家の特徴として独占欲が強いって報告貰ったから要注意人物。

「うー……兄さんは優しいから、慕ってくれてるのを断れないはず。その弱みに漬け込むとはなんて非道な!」

「1人の世界に入ってないで、蛍様のお気持ちも確認するんですよ。」

気持ちなんて!……え?まさか惚れてるとか?俺には将来義姉じゃなくて義兄ができるのか?

「やだやだぁ!兄さんには可愛い奥さんができて一緒に俺を甘やかしてくれるんだ!こんな大男なんてやだ!この顔見てよ!性格が顔に出てるでしょ!」

「嵐雪様……短時間で調査するほど自立ができたと思ってましたのに、結局甘えん坊ですね。」

何とでも言えばいい、出来の良い兄に比べられてはいたが、卑屈にならなかったのはその兄が俺を褒めてくれてたからだ。
俺が同世代から凄いと言われるのは兄の知識をそのまま話しているから。
(まあそのせいでブラコンって言われてるけど…)
兄が俺の先にいてくれないと、俺には道がない。

「こうなったら父さんとじいちゃんから情報引き出してやる。絶対どっかに悪い噂があるはずだ!完璧御曹司の面の皮ひっぺがしてやる!蜂須賀家の内情も知れて一石二鳥だ!あーっはっはっは!」

「高笑いって…もはや悪役ですね。どうでも良いですけど夕飯までに部屋の掃除しといてくださいよ。紙の切れ端ばっかりじゃないですか…全く。」


待ってて兄さん!俺が兄さんの純潔を守るから!
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