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43話
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「おかえり。なんだその顔、もしかして理事長の退任を知ったか?」
教室に戻ると、次の試験のために必死に教科書をめくっているクラスメイトの中で、目立っているのはロッカーの前で余裕そうに談笑している青山と京本。
2人に近づくと青山にそう声をかけられる。
「知ってたのか…いや、そうだよな。お前の情報網なら朝飯前だな。」
「いつ仕掛けたかも教えてやろうか?俺はつくづく青山を敵に回したくない。」
京本が戯けてから肩を竦める。嘘だろ、退任に追い込んだの青山かよ…
「……それって古田が関わってるのか?」
恐る恐る聞きたくないが一応聞いてみると、青山は何も言わず、ただにこっと意味深に微笑むだけ……転入してからすぐに動いているなこれは。
頭が痛い、考えるのを放棄しよう。
「とりあえず、風紀で若松くんのいじめを一任することになった。試験後に動く。頭に留めておいてくれ。」
「はいよ。」
青山の方を向いて、さっき決まった事項を報告しておく。
用も済んだし席に戻るかと、その場を離れようとしたら京本に蛍!と呼び止められた。
「なんだ?」
京本を見ると、隣の青山が肘で小突き言葉を促している。
意を決したように、俺の目を見つめて発言する。
「あ、明日物理があるだろ?勉強教えてやってもいいぜ?」
腕を組み、話終わると顔を背けて目だけでこちらを窺う京本。
明日は物理の試験がある。確かに俺は物理が苦手で、学年1位の京本に教わるというのは理にかなっているが、その言い方が気にくわない。
「その言い方で言われても、じゃあ頼むとはならない。それなら青山に頼みたい。」
「俺はダメだ。信彦専属の先生なんでな。」
だと思って頼んでなかったんだ。
俺に指摘されて、うっ…と唸る京本を、言い直せと目で言う。
これが京本なりのアプローチなのだろう。
そう考えたら、前にもこんなことあったな……
「蛍が苦手な物理、対策教えるから俺の部屋来ないか?」
くっ、言い方にまだ嫌味っぽさがあるのに、目がまるで子犬だ。潤ませて見つめてくるくせに、断るなよと暗に匂わせてくる。
事実、今回の物理は今まで以上に自信がない。
使えるものは使おう。
「では頼む。いつ行けばいい?」
承諾すると、わざとらしいほどに喜ぶ京本。
青山はどうでもよさそうに、よかったなと言っている。
「寮に帰り次第すぐ来い!」
「分かった、また後で。」
京本に教えてもらえることになったということは、今回の物理、期待していいんじゃないか?
なんて、心の中でるんるん気分になりつつ席に戻る。
_______
今日の試験終了後、ちょっとした事件が起きた。
普段、自動販売機を使わないのだが、今日に限って飲み物を忘れてしまい、水分補給は大事だと思い買いに行った。
そしたら、初めて見る缶ジュースを見つけ、折角だからとそれを買ったのがいけなかったのだ。
ガコンッと音を立てて落ちてきた缶ジュース。
飲もうとプルタブを起こした瞬間、プシューッと勢いよく頭からシャツまで飛び散った。
胸の前で開けたのに、勢い強すぎないか?
「炭酸だったか…べたべたする。」
髪の毛から滴る甘い匂いのジュースが頬を伝い首筋に流れる。
勢いは徐々に収まるが、缶を持っていた手を伝い地面にぽたぽたと垂れる。
とりあえずジュースを飲み干し、近くの手洗い場でジュースがかかったところを洗う。その後ハンカチを水で濡らしてシャツを叩き、シミにならないよう対処しておく。
「このまま行く予定だったが、1度シャワー浴びてからにしよう…」
炭酸が飛び散ったのは不幸だったが、味は美味しかったから良しとしよう。
教室に戻ると、次の試験のために必死に教科書をめくっているクラスメイトの中で、目立っているのはロッカーの前で余裕そうに談笑している青山と京本。
2人に近づくと青山にそう声をかけられる。
「知ってたのか…いや、そうだよな。お前の情報網なら朝飯前だな。」
「いつ仕掛けたかも教えてやろうか?俺はつくづく青山を敵に回したくない。」
京本が戯けてから肩を竦める。嘘だろ、退任に追い込んだの青山かよ…
「……それって古田が関わってるのか?」
恐る恐る聞きたくないが一応聞いてみると、青山は何も言わず、ただにこっと意味深に微笑むだけ……転入してからすぐに動いているなこれは。
頭が痛い、考えるのを放棄しよう。
「とりあえず、風紀で若松くんのいじめを一任することになった。試験後に動く。頭に留めておいてくれ。」
「はいよ。」
青山の方を向いて、さっき決まった事項を報告しておく。
用も済んだし席に戻るかと、その場を離れようとしたら京本に蛍!と呼び止められた。
「なんだ?」
京本を見ると、隣の青山が肘で小突き言葉を促している。
意を決したように、俺の目を見つめて発言する。
「あ、明日物理があるだろ?勉強教えてやってもいいぜ?」
腕を組み、話終わると顔を背けて目だけでこちらを窺う京本。
明日は物理の試験がある。確かに俺は物理が苦手で、学年1位の京本に教わるというのは理にかなっているが、その言い方が気にくわない。
「その言い方で言われても、じゃあ頼むとはならない。それなら青山に頼みたい。」
「俺はダメだ。信彦専属の先生なんでな。」
だと思って頼んでなかったんだ。
俺に指摘されて、うっ…と唸る京本を、言い直せと目で言う。
これが京本なりのアプローチなのだろう。
そう考えたら、前にもこんなことあったな……
「蛍が苦手な物理、対策教えるから俺の部屋来ないか?」
くっ、言い方にまだ嫌味っぽさがあるのに、目がまるで子犬だ。潤ませて見つめてくるくせに、断るなよと暗に匂わせてくる。
事実、今回の物理は今まで以上に自信がない。
使えるものは使おう。
「では頼む。いつ行けばいい?」
承諾すると、わざとらしいほどに喜ぶ京本。
青山はどうでもよさそうに、よかったなと言っている。
「寮に帰り次第すぐ来い!」
「分かった、また後で。」
京本に教えてもらえることになったということは、今回の物理、期待していいんじゃないか?
なんて、心の中でるんるん気分になりつつ席に戻る。
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今日の試験終了後、ちょっとした事件が起きた。
普段、自動販売機を使わないのだが、今日に限って飲み物を忘れてしまい、水分補給は大事だと思い買いに行った。
そしたら、初めて見る缶ジュースを見つけ、折角だからとそれを買ったのがいけなかったのだ。
ガコンッと音を立てて落ちてきた缶ジュース。
飲もうとプルタブを起こした瞬間、プシューッと勢いよく頭からシャツまで飛び散った。
胸の前で開けたのに、勢い強すぎないか?
「炭酸だったか…べたべたする。」
髪の毛から滴る甘い匂いのジュースが頬を伝い首筋に流れる。
勢いは徐々に収まるが、缶を持っていた手を伝い地面にぽたぽたと垂れる。
とりあえずジュースを飲み干し、近くの手洗い場でジュースがかかったところを洗う。その後ハンカチを水で濡らしてシャツを叩き、シミにならないよう対処しておく。
「このまま行く予定だったが、1度シャワー浴びてからにしよう…」
炭酸が飛び散ったのは不幸だったが、味は美味しかったから良しとしよう。
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