世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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42話

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試験2日目、カンニング者が出た。

2年Sクラス。
化学の試験中に机の中に紙が入っていたため確認すると、化学の試験対策プリントだったそうだ。

その場で別室に連れて行かれたのは若松比呂。

本人は否定しているが、日頃の態度や、元々成績の合っていないクラスだということで疑われているそうだ。

いじめられている、これは誰かに嵌められたんだと言い続ける若松に、拉致があかないと先生方に呼び出された俺は生徒指導室へと向かっている。


目的地に辿り着き、3回ノックをするとすぐに、誰だと中から問われ答える。

「風紀の仲神です。呼び出しに応じて来ました。」

「仲神か、入ってくれ。」

「失礼します。」

中には生徒指導と学年主任、2年Sクラスの担任に囲まれるようにパイプ椅子に座らされている若松くんがいた。

ぶすっとむくれていた若松くんが、俺が来たことに気づき立ち上がろうとしたが、生徒指導に止められる。

「勝手に立つな!容疑が晴れるまで大人しくしておけ!それともさっさと認めるか?」

「俺じゃない!嵌められたんだって!化学なんてカンニングしたところで意味わかんねーよ!」

ぎゃいぎゃい言い合っている2人の側から学年主任が俺の方へとやってくる。

「煩わせてすまんな仲神。事実確認をしたいのだが、若松はいじめられていたのか?」

「本人から聞いた話では、物が隠され陰口を言われると。物的証拠はありません。
 また同じクラスの古田と目黒からは、物がなくなったと騒いでいる若松を見てはいるが、隠されている現場は見たことがないと。」

俺の報告を聞いた学年主任は顔をクラス担任に向け、話を聞いていたクラス担任はその通りだと同意した。

「日頃の生活態度からして、確かに嵌められている可能性もなくはないが、全てが自作自演の可能性もある。」

はぁと頭を押さえため息を吐く学年主任、心中お察しします。

いじめている奴らも、生徒会と風紀を敵に回したくはないから、目黒と古田には気づかれないようにしているのだろう。

咲山兄弟が自宅学習の今、1人で学園内を行動している若松くんだ。目黒たちにバレない死角なんていくらでもできる。


「蛍!蛍は分かってくれるよな!俺はやってない!じいちゃん呼んでくれよ!こうなったら誰が俺を嵌めたのか調べてもらう。」

とうとう理事長召喚か。

だが、先生たちの顔色は変わらず、むしろ呆れている。

「残念だが、理事長はもうその地位にはいない。娘さんを探すのに莫大な額を使い、またお前をこの学園に転入させるのにも無理をしたし、数々の問題を揉み消そうとした。
 それを知った京本財閥が、この学園を買い上げて理事長就任が控えている。休暇明けに知らせる予定だったからな、風紀にも伝えてない。」

生徒指導が若松くんに憐みの目でそう伝えると、情報処理が追いついてないのか、若松くんは目を白黒させている。

「ということなので、仲神くん。暫く秘密ですよ。これが広まったらいじめが加速してしまいます。」

クラス担任が秘密だと言いながら人差し指を口元に当てる。茶目っ気たっぷりの笑顔が怖い。

「了解です。今回の処分はどうするつもりで?」

「それが問題だ。仲神に意見を聞こうと思ってな。どうするべきだと思う。」

学年主任に尋ねられ、少し考える仕草をとり俺の考えを告げる。

「今後の試験、別室でとりあえず受けさせましょう。化学だけ作り直してもらい、それを踏まえて今回の成績評価をしてください。カンニングだろうと嵌められたのだろうと、まずは成績です。
 いじめの件は風紀で調査します。が、カンニングであった場合、夏期休暇中の学園ボランティアをお願いしますね。」

「そうしよう。調査は頼んだ。よし、別室の用意と化学の新しい試験問題を作るよう頼んでくれ。」

「わかりました。ありがとう仲神くん。」

学年主任に指示された、クラス担任はそのまま部屋を後にする。

「それでは、俺も試験があるのでここで失礼します。調査は終了次第、報告を渡しますのでまた後日。」

「ああ、呼び出してすまなかった。行ってくれ。」

失礼しました、と一声かけ部屋を後にする。
最後にちらりと中を見たが、まだ放心状態の若松くんを生徒指導が声をかけている。


まさか理事長が退任させられるとはな……
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