世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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39話

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目黒がいい仕事をしたみたいだ、隈も薄くなり晴れやかな顔をした西條が食堂で目黒と向かい合わせで昼食を摂っている。

普段食堂になんてこないが、昨日蜂須賀を説教して追跡アプリは入れたままでいいなんて結論になり、勝手に入れたお詫びに昼食を奢ると言われほいほい釣られたのが現状だ。

本音を言うと、1度くらい食堂で食べてみたかった。だが1人で行くのはと思っていたから丁度いい誘いだったのだ。


「蛍様、役員ルームはレストランみたいな感じっす。席に座ってからオーダーするんっすよ。」


ご機嫌な蜂須賀から食堂の利用方法を教えてもらいつつ、内装を観察する。ちょっとしたレストランみたいで光沢がかった木材の机と椅子が美しい。2人がけの空いている席を見つけて向かい合わせで座ると、すっとウェイターが現れて水を置いてくれた。

本当にレストランだな。


「蛍様何食べるっすか?俺のお勧めとしては和食定食とか蛍様の好きな味付けだと思うっす。」

「そうか、ならそれも頼もう。」


メニュー表を見せられお勧めしてもらったのは、焼鮭と肉じゃがを中心にした和食定食。
写真も見る限り食欲を唆られる。

ウェイターに和食定食と魚介カレーを頼んだ蜂須賀が、水を一口含んだ後尋ねてきた。


「蛍様、ラブレターどうでしたか?」


もじもじする目の前の男……後輩フィルターなのか、加算されて可愛く見える。

しかしラブレター…昨日もらったが感想を聞かれるとは。
読んだときの気持ちを素直に伝えると、緊張していた蜂須賀はみるみる安堵の表情に変え、目が潤んでいる。

「よかった…俺の考えてること、少しは蛍様に伝わったんすね。」

「ああ、疑っていたわけじゃないが、お前の気持ちがよく分かったよ。」

会話の最中、丁度頼んだ定食とカレーが届く。
一旦、昼食に集中しよう。

程よいボリュームの定食に舌鼓を打っているとだんだんと周囲がざわつき始めた。
方向からすると、目黒と西條が座っている方だ。

箸を置き何の騒ぎだと顔をやると、若松くんが1人で役員ルームに現れ、あろうことか西條のちょっかいかけている最中だ。

「本当に西條がターゲットになったな……」

そこまでして学園内の権力が欲しいのか?
仲裁しに行くかと、席を立とうとしたらぱしっと蜂須賀に腕を掴まれ止められた。

「蛍様が行かなくても、あそこには目黒がいるんで大丈夫っすよ。てか西條先輩とあんな仲良かったっすか?今日なんて昼わざわざ2年の教室に来てたの見たんすけど。」

もう行く意思がないと察したのか、俺の腕を離してカレーを頬張る蜂須賀。いつ見ても一口がでかいな。

「昨日から目黒は西條の護衛だ。別の人物を警戒していたが、そう言えば若松くんのこともまだあったな…失念した。」

仲裁は目黒に任せると思いはしたが、気にはなるため、定食を食べ進めながら視線をそちらに向ける。行儀悪いがな。


声は聞こえないが、仁王立ちして座ったままの西條に話しかけている若松くんを目黒が正論で叩いてるようだな。

たじたじとしている若松くんはまだ引かない。
西條が仲裁に入ろうとしたが、若松くんに肩を小突かれる。

その小突いた腕を目黒が捉え、席から立ち上がる。目黒も若松くんより大分背が高い。俺より下だが、その身長差で見下ろされ流石にまずいとわかったのか青褪める若松くん。

そんな若松くんの耳元で何かを言ったかと思えば、すぐ離れにこっと微笑む目黒を見て、若松くんは怯えたように腕を庇いながら食堂から走り去った。

その様子を横目で見ていた蜂須賀はあーあとつぶやいた。何がだ?と聞くと口の中のカレーを飲み込んでから答えてくれる。

「目黒って2年の裏で何言われてるか知らないっすか?ゴリラっすよ、あいつリンゴ割りました。」

「その情報初耳なんだが……」

残りのカレーをかき込み、ご馳走様と手を合わせる蜂須賀。

えぇ…リンゴ割ったのか。
確かに風紀に所属するにあたって、何かしらの武道を習得していることは絶対条件なのだが……忘れていた。

目黒は戦える美人さんだということを。
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