世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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31話

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次の日、蜂須賀は本当にラブレターなる手紙をしたため、雰囲気を出すためなのか俺の教室の机の上に置かれていた。

封筒は白、封蝋の柄はハート。
封蝋を使うとは凝っているな。

ラブレターにざわつくクラスメイトをBGMに、一緒に添えられていたペーパーナイフで封を切る。

中身を改めると、周りが葉で縁取られた用紙に、自分がどのくらい俺のことを好きなのか、好きになったきっかけや恋人になったときにしたいことなど未来のことを美しい字で綴られていた。

ふ、可愛らしいアプローチだな。
手紙と一緒に入っていた写真については物申したいが、隠し撮りも混じっているなこれ。

「おい、別に対抗してる訳じゃないが……ん。」

傍観していたクラスメイトの群れの中から京本で割って現れ、封筒を渡してきた。

「なんだ、京本もラブレターか?ありがとう、授業が始まるからな、後で読ませてもらう。」

「おう。」

照れ隠しか、ぶっきらぼうにそう言い、自分の席に戻っていく京本の背中を見つめ少し笑いが零れる。

親衛隊と一通り、事を致しているだろう男がラブレター……純情かよ。

なんて思っていて、授業終わりの休憩で内容を改め、断言しよう。あいつはロマンチシストだ。

詩的な表現の文章で、気持ちを綴っている。男らしい字体で、顔に似合わず愛を綴る京本を想像してしまい、思わず声を出して笑ってしまった。

自席でそわそわしていた京本にも笑い声が聞こえてしまったのか、視界の端でびくっと肩を震わせていた。

すまん、そんなつもりじゃなかった。

いつも威厳ある態度の京本が、俺のために書いてくれたという手紙が意外だったんだ。
今年で3年目の付き合いだが、こんな面があったとは…くくっ新たな発見だな。


「なに弄んでるんだ仲神……程々にしておけよ?」

1人で笑っている俺が怖いのか誰も近づいてこなかった中、今日の席替えで前にきた青山が振り返って呆れ顔を向けてきた。

「弄んでるつもりは無い、がお前にそう言われるとそんな気がしてくるな。」

「失礼だな……お前さんは普段から無意識に誑かしてる。それを意識してやってみろ、とんだ人たらしだろ。八方美人だな。」

……それは若松くんと同じ道を辿ってしまっているということでは?
楽しかった気持ちがどんどん消え去っていく。

「考えてることが手にとるように分かるぞ。そう落ち込むな、人たらしっていうのは一種の才能だ。上に立つ者としての武器だ、そのままのお前さんでいい。」

「青山…お前いい男だな、惚れそうだ。」

「俺は信彦が全てなんでな、断る。」

そんな冗談を言い合いつつ、次の授業の準備をする。


まさかこの会話を京本が聞き耳立てていたなんて気づかなかった。
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