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30話
しおりを挟む惚れさせてくれと宣言したら、2人して天を仰いでいる。返事はないのか?
「提案は却下か?なら大人しく待っていろ。」
ソファから立ち上がり、応接室の扉に向かおうとすると制服の裾をぱしっと掴まれた。
掴んだのは蜂須賀だ、困惑顔で俺を見上げている。
「ちがっ、違うっす。蛍様が前向きに考えてくれてるのが嬉しくって…あんな小悪魔発言、蛍様じゃなかったら何様だって思うところっすけど…」
結構なクズ発言したのは自覚している。
確かに何様だって感じだが、合理的だ。
「蛍様に惚れられるって考えただけで最高に幸せ…だから俺頑張る。とりあえず明日ラブレター書いてくるっすね!」
「ああ、楽しみに待ってる。」
狂気的な感情が浄化でもされたのか爽やかな笑顔の蜂須賀の金髪が窓から差し込む夕陽でキラキラしてる。
「お、俺もだ!仲神嫡男じゃなくて蛍だから好きになったんだ。絶対惚れさせるからな覚悟しとけ!」
赤面して人差し指をビシッと俺に向け宣言した京本。
「人に向かって指を指すな。俺はお前との馴れ合い結構気に入ってた、今後も期待してる。」
指のことを指摘するとゆっくり下ろして膝の上に手を戻していた。何故か口からあうあうと聞こえるが、これで用は済んだだろう。
「それじゃ、失礼する。またな。」
「はいっす…」
「おう…」
上手いこと事が進んだ、と思いつつ応接室を後にする。その背後で2人がぽそっと快諾の言葉を言っていたが、どんな顔をしていたかは知らない。
その後、風紀執務室で書類整理をしていた目黒に蜂須賀のことを聞かれ、一緒にいたことを告げると、会話内容まで根掘り葉掘り聞いてきた。
「今日はもう遅いし、急ぎのものも片付いたな。帰るぞ。」
「待って下さい委員長。まだ一つ残ってますよ。」
目黒の質問攻撃にうんざりしていたため、逃げるために仕事を切り上げようと片付けを始めたら、目黒自身から待ったがかかった。
疲れ顔の俺とは打って変わって意気揚々とした表情の目黒。
「何かあったか?」
「事前に青山先輩から報告頂いていたものです。西條先輩の件、最近の様子を聞き込みしたんですが、親衛隊と距離を置いて1人が多いらしいですよ。」
早いな。さっきの今で、聞き込みをしてくれたのか。
「転入生に飽きたと聞いたから、前の西條に戻ると踏んでいたが違ったか…」
「あと、隈が酷い。寝れてないなら親衛隊相手じゃないので、別の原因がありそうです。そのためか保健室に行ってます。利用記録もありました。」
不眠症か?
ぺらっと渡された保健室の利用記録表には確かに、最近の利用が目立つ。
親睦会の時も保健室に居たのか……ん?
ちょっと待て、親睦会の時若松くんをいじめようとして俺が指導したのは西條の親衛隊のやつだった。
だが、既にその時西條は若松くんに飽きていて距離を置いてる。いじめる必要なんてないだろう。
考えすぎか?情報収集が遅かっただけで、まだ構われていると思っていたのか。それとも今までの恨みを当てつけようと……思い出せ、あの子はなんて言っていた。
『あいつにばっか構って、順番だった閨が一切なくなった。』
その言葉と、捕まえた際の視線の先に若松くんがいたことで、俺は『あいつ』というのを若松くんだと認識していたのだが……もしかしてそこから違うのか?
その時の視線の先に居たのは……確かドッジボールのチームが運動場に集まっていた。若松くんの周囲はいつもと同じメンバーで、西條関係の人間なんていたか?
わからない。
「目黒、西條関係の人間でドッジボールに参加していたやつ分かるか?」
「どういうことですか?」
真面目な顔をしてその先の説明を促してきた目黒に対して、親睦会ときに指導していた相手のことを教えた。
「ああ、報告にあった西條先輩の親衛隊ですか。確かにその時は若松だと認識してしまいますね…わかりました。洗い出してみます。」
「頼んだ、俺も何か思い出したら共有する。今日はこの辺りで、今度こそ帰るぞ。」
鞄を手に取り、帰り支度を始める目黒を待つ。
素早く書類の保管と施錠を終えた目黒を執務室から出し施錠をする。
鍵は俺が管理しているため、そのまま鞄に仕舞う。
2人で寮へ帰るかと、校舎を後にする。
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