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22話
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その後、親睦会は無事に終了して、各競技で優勝したクラスには気持ち程度の褒賞が与えられていた。
京本と蜂須賀の告白は、とりあえずその場での返事は有耶無耶にしておいた。
急に言われても困る。今までずっと、政略結婚をすると思っていたのだ。選べというのは無茶だ。
それに、結局のところ、この恋愛は学園を出れば世間に認められないものになる。
親に反対されるに決まっているし、拒絶されるだろう。俺にそんな勇気はない……
親睦会の後片付けも終わり、各委員会に労いの言葉をかけて、風紀委員会も解散する。
空も赤く染まり、最後までいい天気でよかった。
寮へと戻り、ふと気づく、蜂須賀が大人しかったことに。
泊まりを断ったからな、きっとそのせいだろう。
なんて、自己完結をして風呂をシャワーだけで済ませる。
明日は休日だからと、夕飯も食べずにそのままベッドに沈む。
たいして乾かしていない濡れた髪をシーツが吸い取っていき冷たくなる。
濃い1日だった、というのは今日のことを言うのだろう。
真剣な2人のためにも、中途半端な答えでなく、しっかりと答えを出さなくてはいけない。
何で俺なんだろうか。
一体自分のどこに惹かれたのかが全くわからない。
京本とは1年の時、内部生に話しかけた相手だった。自信のある人間で、嫌な顔せず軽口を交えて学園について教えてもらった。
当時から生徒会入りしていた京本は、俺が風紀委員になった辺りから、よく嫌味を言ってくるようになった。
何で生徒会に入らなかったんだとも言っていたな。
それからクラスはずっと同じだったが、話すと言っても授業の内容や、生徒会と風紀についての業務くらい。
そんな問題も解けないのか、と馬鹿にされた時はその後京本に解答を提出してやった。
……本当に分からない。
蜂須賀のこともだ。
神様呼びなのは擦り込みだと結論付けたが、ずっと側にいる宣言もされたし、恋人になってほしいとまで言われた。
出会いは、1年生同士の喧嘩。相手を殴ったとして指導の対象になったのが蜂須賀だった。
何故か弟を思い出させる蜂須賀はよく反抗していた。暴力沙汰を起こしては指導、俺に喧嘩を売って返り討ちにされては指導、まずは挨拶をと更生のためのプログラムを勝手に作っていた。
夏休みの泊まり週間が終わると、まるで人が変わったように懐いた。
ブラックリスト者が風紀に入るという前代未聞の伝説を創り、字が綺麗だなと褒めると、書記を立候補した。
現在はBクラスだが、成績も伸びてきて、来年はきっとSクラス行きだろう。目黒に教わり、自身でも勉強を頑張っていると聞く。俺もたまに勉強を教えたこともあったな。
泊まりのたびに、世話を焼いてくれるなぁと思っていたが、まさか下心があったとは。
好意は素直に嬉しい。
思えば、俺は初恋がまだなのかもしれない。
幼稚園、小学校、中学校は共学だった。
女の子にモテていたが、友達の好き止まりで、特別好きな子というのはいなかったな。
告白されたこともなかったし、バレンタインは義理と言われて渡された。
男同士でつるんでいたのが楽だったのは確かだ。
中学の頃、女の子の香水が苦手だった。
甘くむせ返るような薔薇の匂い。
1度嫌な記憶となって仕舞えば、苦手なものだと克服しなくなる。
その点、京本と蜂須賀からはいい匂いがする。
香水かもしれないが、日常に差し支えのない香りだった。
……比べている時点で俺はダメかもしれない。
人の細かいところが気になるくせに、自分のことを気にしたことがなかったな。
そんな俺に好意を持ってくれるなんて貴重な存在だ。
返事…か。
京本と蜂須賀の告白は、とりあえずその場での返事は有耶無耶にしておいた。
急に言われても困る。今までずっと、政略結婚をすると思っていたのだ。選べというのは無茶だ。
それに、結局のところ、この恋愛は学園を出れば世間に認められないものになる。
親に反対されるに決まっているし、拒絶されるだろう。俺にそんな勇気はない……
親睦会の後片付けも終わり、各委員会に労いの言葉をかけて、風紀委員会も解散する。
空も赤く染まり、最後までいい天気でよかった。
寮へと戻り、ふと気づく、蜂須賀が大人しかったことに。
泊まりを断ったからな、きっとそのせいだろう。
なんて、自己完結をして風呂をシャワーだけで済ませる。
明日は休日だからと、夕飯も食べずにそのままベッドに沈む。
たいして乾かしていない濡れた髪をシーツが吸い取っていき冷たくなる。
濃い1日だった、というのは今日のことを言うのだろう。
真剣な2人のためにも、中途半端な答えでなく、しっかりと答えを出さなくてはいけない。
何で俺なんだろうか。
一体自分のどこに惹かれたのかが全くわからない。
京本とは1年の時、内部生に話しかけた相手だった。自信のある人間で、嫌な顔せず軽口を交えて学園について教えてもらった。
当時から生徒会入りしていた京本は、俺が風紀委員になった辺りから、よく嫌味を言ってくるようになった。
何で生徒会に入らなかったんだとも言っていたな。
それからクラスはずっと同じだったが、話すと言っても授業の内容や、生徒会と風紀についての業務くらい。
そんな問題も解けないのか、と馬鹿にされた時はその後京本に解答を提出してやった。
……本当に分からない。
蜂須賀のこともだ。
神様呼びなのは擦り込みだと結論付けたが、ずっと側にいる宣言もされたし、恋人になってほしいとまで言われた。
出会いは、1年生同士の喧嘩。相手を殴ったとして指導の対象になったのが蜂須賀だった。
何故か弟を思い出させる蜂須賀はよく反抗していた。暴力沙汰を起こしては指導、俺に喧嘩を売って返り討ちにされては指導、まずは挨拶をと更生のためのプログラムを勝手に作っていた。
夏休みの泊まり週間が終わると、まるで人が変わったように懐いた。
ブラックリスト者が風紀に入るという前代未聞の伝説を創り、字が綺麗だなと褒めると、書記を立候補した。
現在はBクラスだが、成績も伸びてきて、来年はきっとSクラス行きだろう。目黒に教わり、自身でも勉強を頑張っていると聞く。俺もたまに勉強を教えたこともあったな。
泊まりのたびに、世話を焼いてくれるなぁと思っていたが、まさか下心があったとは。
好意は素直に嬉しい。
思えば、俺は初恋がまだなのかもしれない。
幼稚園、小学校、中学校は共学だった。
女の子にモテていたが、友達の好き止まりで、特別好きな子というのはいなかったな。
告白されたこともなかったし、バレンタインは義理と言われて渡された。
男同士でつるんでいたのが楽だったのは確かだ。
中学の頃、女の子の香水が苦手だった。
甘くむせ返るような薔薇の匂い。
1度嫌な記憶となって仕舞えば、苦手なものだと克服しなくなる。
その点、京本と蜂須賀からはいい匂いがする。
香水かもしれないが、日常に差し支えのない香りだった。
……比べている時点で俺はダメかもしれない。
人の細かいところが気になるくせに、自分のことを気にしたことがなかったな。
そんな俺に好意を持ってくれるなんて貴重な存在だ。
返事…か。
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