世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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20話

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未だに呆然として叩かれた頬を押さえている若松くん。パーマがかった黒髪がズレている様な気がするのだが……


「ちょっと失礼。」


若松くんの髪の毛に触れてみると、明らかに人工毛、つまりカツラだ。ぱっと見わからないものだな。


「カツラか……申告はしているか?」
「委員長、ウィッグです。」

すぐに訂正を入れてくる目黒に『そ、そうか。』と少し恥ずかしかった。カツラでいいじゃないか別に。

病気などの理由で、カツラをしての生活は許可されている。だが風紀と生徒会には申告の義務がある。
しっかりと納得のできる理由であるかを判断し、対応をしなければならないからだ。


「生徒会は許可してるけど?文句あるの?」

きーきー言ってくるのは真斗。

「理事長が被れって言ったらしいからいいじゃん。」

眼鏡を拾ってきたのは塁斗。


そんな双子の言い分だが、そういう問題じゃない。
そんな理由で許可が下りるなんてことあってはならない。理事長の職権濫用が凄まじいな。


確かな情報だが、駆け落ちしていなくなった娘が最近になって見つかり、孫がいることを知った理事長。
母親に似ている孫をとても可愛がっているとのこと。

ここからは俺の推測だが、母親似の孫を手元に置きたい。だが、学園は同性愛の傾向がある。母親のように男と駆け落ちなんてされたら悔しい。そうだ顔を隠せばいいって具合か?


あの眼鏡も伊達だろう。度が入っているようには見えない。

あの性格じゃ、ここに転入してくる前も同じような感じでハーレム築いていたんだろうな。
当たり前のように好きだと言われて、貢がれて、自分が王様みたいに思っちゃったのか?


そんな絶頂期に古田の告白と青山の拒絶だからな……高いお鼻がぽっきーんしたんだろ。


「若松くん、正当な理由と申告がないなら、カツ…ウィッグは許可できない。今日は許すから、月曜からは外してきなさい。」

聞こえているかわからないな。

「若松くん、分かったかい?」

再び問うと、顔を上げてはいと小さく答えた若松くん。

「頬が赤くなっているね。可哀想に、痛いか?早く冷やした方がいいな……これに懲りたら、ルールは守るんだよ。人の恋路を邪魔して馬に蹴られたくないだろ?」

「ひっ痛い…痛いよぉ…俺は…うえぇ。」

痛みを自覚したのか、痛がり、泣いてしまった若松くん。咲山兄弟が反発したそうに俺を見ていたが、分が悪いのを悟ってか、若松くんを連れて保健室へと足早に去った。


「さて、午後の部は始まっているな。見回り当番だが昼を食べそびれたやつがいるなら今食べろ。変わりに俺が行く。」
「蛍様、俺もついてくっす!」


なんだか今まで以上に付きっきりになったな。
ここで一問答するのは時間が惜しい、仕方ない。

「わかった。じゃあ行ってくる。目黒他のことは任せたぞ。ついて来い流星。」

「了解です委員長。いってらっしゃい。」


1番の問題若松くんが片付いたようなもんだからな、後はもうすんなり行くだろうと高を括り、蜂須賀を伴って見回りへと向かう。
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