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18話
しおりを挟む蜂須賀との話を済ませ、残りの弁当を食べ終える。
片している丁度その時、目黒を含めた数人の見回り組が戻ってきた。
若松くんと2年トリオを連れて……
「委員長、出場者の調整をしたいとの申し出です。」
先頭の目黒が、苦虫を噛み潰したような顔で古田を前にと促す。
「午後の部のサッカーに比呂を入れます。それに当たりまして、該当の3年風紀の青山先輩を外したいという旨をお伝えにきました。」
「ん?俺?」
渦中に巻き込まれた、休憩中だった青山は虚をつかれた顔で自身を指して、古田たちに向き合う。
「虎徹、頼む!俺ドッジボール負けたの悔しくって……絶対勝つから、サッカー変わってくれ!」
厚かましくも、手を合わせてお願いする若松くんには敬服だ。
なんとも自分本位の考え方。寧ろ天晴れ。
頼まれている張本人の青山は、頬をぽりと掻いてから一言。
「俺さ、お前さんと初めましてじゃねぇか?初対面で名乗らず、年長者の名前を呼び捨て、敬語もなし……頼んでるつもりか?」
……そうだった、こいつキレたら怖いんだ。
普段優しくて、懐の深い男だが、1度常識外れなそこそこの家柄の後輩にブチ切れたときがあった。
あー、あの時は本当に敵に回したくないと思ったな。
なんて遠い目をしていたら、背後から蜂須賀に抱きしめられた。
「あいつら馬鹿っすよね。青山先輩怒らせるなんて。」
こいつも目撃者だったな。
風紀の指導ということで片がついたが、相手は泣き叫び、周囲も怯える阿鼻叫喚。何が1番怖かったかと言うと、一通りキレて説教しまくったあと、いつもの笑顔で『分かってくれたか?』なんて言ったこと。
あの笑顔に恐怖を覚えた。
それ以来、青山を怒らせるなという暗黙の了解みたいなものが出回っていたのだが……若松くんは地雷を見つけて踏み抜く才能があるな。
「あ、いや確かに初めてだけど、俺としては有名な先輩でよく見かけて名前も知ってたし。」
流石に空気読めたのか、慌てて弁解を始める若松くんだが、時すでに遅し。
「俺もお前のことは知っている。ブラックリストだからな。だが顔を合わせるのは初めてだ、ならまずは自己紹介からだろう?ん?」
あぁ説教が始まってしまった。
止めるべきか、どうしようかと悩んでいたら、蜂須賀が提案をした。
「青山先輩、本題に入んないと午後の部始まっちゃうっすよ。その礼儀知らずは置いといて、古田と話進めた方がいいと思うっす。」
天才!完璧な模範解答!ナイスだ蜂須賀!
青山を刺激せず、論点を戻した。
蜂須賀の提案にふむ、と納得したのか青山は若松くんから目を外し、古田と向き合う。
「取り巻きのリーダーはお前さんだろ、信彦。一体何を考えている。」
古田と青山は従兄弟である。家柄的には古田の方が本家に当たるが、昔からの付き合いで、古田は青山に頭が上がらないらしい。
「信彦、お前さんなんで取り巻きやってる。惚れてるのか?こんな奴に?好きならその人の唯一になれって昔から言ってるよな?」
顔を合わせるのはバツが悪いのか、項垂れている古田に、遠慮なく青山は説教を始める。
「おっと…ターゲット変わっただけっすねコレ。」
頭上でぽそりと呟いた蜂須賀に大きく同意する。
あと10分後には午後の部が始まるのだが……まあ初戦はSクラスじゃないしいいか。
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