世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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17話

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絆されそうになっている俺に気づかず、蜂須賀は話し続ける。


「だから、蛍様が俺以外のやつに襲われる前に…こんな感じに、両手の自由を奪って、監禁しちゃいたい。」


縛られた袖口にはそんな意図があったのか!


絆されそうだった心は一気に凍結し警報が鳴り響いている。


「そんな引かないでくださいっす。確かに監禁はしたいっすけど、今は学生だし。そんなことしたら蛍様が色んなこと心配して、俺だけを考えてくれるなんて無理でしょ?だから、たまに軟禁するくらいが1番いいと思うんすよ。」


今はって言ったよな?学生だしって何?学園卒業したらされるのか?大人っていつからだ?


「外デートもいいっすけど…部屋で2人っきり、おうちデートもいいっすよね。」


軟禁のことをおうちデートって言うのはやめなさい。良い雰囲気になっちゃってるぞ。


「俺の本気、分かってくれたっすか?お仕事でも支えますからね、俺だけを頼ってね蛍様。」


縛られてる袖口をそのままで、両手首を掴んでいる蜂須賀に、最後の言い分だけは訂正を入れておく。


「流星だけを頼るというのは、会社として成り立たない。1番信頼するというのなら…」


上に立つ者として、社員を守り、信頼関係を築くのが大事だと教えられていたが、最も大事なのは上下関係、手綱をしっかりと握ることだと、仲神グループ創業者の祖父に幼少期教えられた。

まあ、祖父にとっては初の男孫だったから会社を継がせるために英才教育をと思っての言葉だったのだろう。祖母に見つかってすぐその教育はなくなったのだが。


「信頼も嬉しいっすけど、頼って欲しいっす。今は全部の世話をしたいって言ってるわけじゃないんで。」


全部の世話って……考えるのはよそう。


「俺、秘書目指してるんす。蛍様のお側で、スケジュール調整も牽制も出来るなんて最高じゃないっすか!」


握っている俺の両腕を、嬉しそうにゆらゆらと揺らしている蜂須賀は、将来のことを想像しているのか視線は合わない。


「それは、純粋に嬉しいよ。だが、後継と言われてはいるが、初めは一介の社員だ。秘書がすぐ必要とは……」


馬鹿真面目に蜂須賀の将来設計に水をさしてしまったか、話している途中ではっと気づき、顔を上げて蜂須賀を窺うが、予想に反しとても穏やかな顔でこちらを見ていた。


「いくつになってもずっと一緒すよ、蛍様。」



ああ、そういうことか。
俺が、秘書が必要になるほどの役員になる歳まで、ずっと。


先のことなんてなにも保証もないのに、楽しそうに未来を語る蜂須賀が眩しい。
自分の意思で決めた未来というのが、こんなにもきらきら輝くなんて……



羨ましい。
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