世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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15話

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蜂須賀と恋人繋ぎをしたままテントに戻ると、サイズ違いのジャージを羽織っているのも相まって、何があったのか聞きたいけど聞けないという風紀委員たちの視線が刺さる。
多分キスマークも見つけてしまったんだろう。こんな威厳のかけらもない格好ですまない、と心で謝る。

だがそんな中、なぜか目黒は歓喜に震えていた。

「ふ、ふふ……蜂須賀って独占欲強いんですね。」

口元を隠してはいるがにやついているのがバレバレだ。


目黒と蜂須賀は仲いいからな、同級生相手にはこんな面もあったのだろう。
キャラが違うと思ったのも、もしかしたら俺には黙っていただけで、元々の性格かもしれないし……そう考えるとちょっと寂しいな。

勝手に落ち込んでいると、未だ手を離してくれない蜂須賀が、俺の顔を覗き込み、こう告げた。


「蛍様、俺もうずっと蛍様って呼ぶことにするから。蛍様も、俺のことずっと流星って呼んでね。」


目を細めて、口角を上げた笑顔。
拒否は受け付けないという言外に隠された命令。


「わかった、流星。仕事をしたいから手を離してくれ。嫌なら手は自由にして欲しいから、背後から抱きつくとかでどうだ?」


今の蜂須賀は擦り込みのようなものだろう。
反抗していたときに、世話を焼いてくれたのが俺だったってことで、親を取られるのが怖い子供みたいなものだ。

だから、逃げないように引っ付いていたい。
手を自由にしてもらう代替案も提示して蜂須賀に問う。

「いいっすよぉ、蛍様抱きしめていいなんて嬉しい。」

するとすぐに手を離してくれて、背後に回った蜂須賀を引き連れ、ホワイトボードを確認する。


ふむ、バスケは予定通りに終了したか。
ドッジボールも進んではいるが、トラブル有りと報告されているな。Sクラスは負けたのか。……若松くんが負けて喚いているなんてことないよな?


「蛍様、お昼休憩っすよね、ご飯食べましょ?」
「ああ……いや俺は見回りがある。」

昼休憩の間に、負けた腹いせで立場の弱いものをいじめる輩がいる可能性がある。
元々の当番表でも、昼休憩の時間帯で俺が入っていたはずだ。


「それならさっき目黒が代わりに行ったすよ。」


ね?だからお弁当食べましょうよ、と抱きしめたまま俺の頭に自身の頬を擦り付けて甘えてくる。

こういう所は変わらず可愛い後輩だな。


「目黒に悪いことしたな。わかった、じゃあ弁当食べるか。」


手を回して蜂須賀の頭をぽんぽんと軽く撫でてやると、手に頭を押しつけてくる。もっと撫でろとの意思表示だろう。

テントから離れることは出来ないため、休憩スペースの机に移動して弁当を広げる。
俺の弁当と、珍しく作ってきたという蜂須賀の弁当が隣に並んでいる。

「蛍様、お弁当交換しよ!俺頑張って作ったんす!」

そう言うと、並べてあった弁当をトレードして、蜂須賀の弁当が俺の目の前に置かれる。

中身は卵焼きに、唐揚げ、ミニサラダ、稲荷寿司とふりかけを混ぜ込んだおにぎりが入っていた。カラフルで可愛らしく、かつ俺の好きな卵焼きと稲荷寿司が入っているという素晴らしい弁当だった。

まずサラダを食べてから、卵焼きを食べる。うん、出汁が利いていて美味しい。その次に唐揚げを食べる。ジュワッと肉汁が溢れてとても美味しい。

「ん?もしかして唐揚げも手作りなのか?すごいな流星。とっても美味しいよ。」


破顔した蜂須賀は本当に嬉しそうで、頬を染めている。


「はぁ、蛍様が俺の作った料理を食べてるし、蛍様が作った料理を俺が食べてる。もぐもぐしてるの可愛い♡俺のももぐもぐしてほしいなぁ。」


こういうのは声に出さず、心に留めておいて欲しい。
しかも、食べている所をムービーで撮られていたらしい。蜂須賀は満足そうに携帯を見つめている。


「そうだ蛍様、今日お泊まりしに行ってもいいっすか?」
「断る。」
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