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14話
しおりを挟む「そっか、着替えないのに脱げって言うのは無しっすよね……じゃあ上着だけでも俺の羽織ってて、ぶかいかもだけど。」
「わかった。」
自分の上着を脱ぎ、半袖姿になった蜂須賀から渡された一回り大きいジャージを素直に着る。
180近い俺と10センチも違えば、ここまで体格に差が出るのか……
「これでいいか?」
「完璧っす。今日は1日その格好で過ごしてくださいっすね。」
着ていたジャージを畳み、持ち帰ろうとしたら蜂須賀に奪い取られた。
「蛍様、このジャージにはバイ菌ついちゃってるっすから、俺が洗って返しますね。」
笑顔のはずだが、どこか引っかかる。
だが、好意を無碍にするのもと思い甘えることにした。
「なら頼む。」
「はーい♡任されたっすよ。」
着用した上着の袖口を2回ほど折り込みながら、時間を確認する。もうすぐ昼休憩が始まる頃だ。
午前の部は予定通りに終わったのだろうか。
仕事のことを考えているとさっきまでご機嫌だった蜂須賀が、また不機嫌になり無表情でこちらを覗いてきた。
「蛍様?俺がいるのに考え事?」
「っ馬鹿、お前も関係ある。風紀の仕事だ。」
一瞬言葉が詰まったが、嘘は言っていない。
俺の答えに納得したのか、蜂須賀はふーんと言いながら近づけていた顔を離して背筋を戻す。
「お仕事大事っすもんねー。じゃあ最後に1つだけしてから戻りましょっか。」
「何をするんだ?」
ご機嫌な顔で俺を抱きしめたかと思えば、首筋、鎖骨、頸の3箇所に痛みが走る。
これはまさか……噂のキスマークか?
「蜂須賀、跡を付けたのか?」
「はい、俺の蛍様って印っす。隠しちゃダメっすよ?」
愛おしそうに跡を指でなぞる蜂須賀に、わかったとだけ伝える。
その答えに満足したのか、俺の手を引いて教室の外へ促される。
出る直前でもう一度軽いキスを口にされたが、あんなことがあった後なら安いもんだ。
「じゃ、テントに戻るっすよ。」
いつの間にか恋人繋ぎされている手は、慣れずもぞもぞ動かしていたらぎゅっと握られ睨まれた。
今日は厄日なのだろうか……
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