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12話
しおりを挟む運動場に設営した風紀のテントに辿り着くと、常在している委員と休憩中の委員、その中に目黒の姿があった。
「委員長?どうしてそんなに慌てて……もしかして襲われたとか?!」
「おい、なんでちょっと嬉しそうなんだ。」
嬉々として聞いてくる目黒だが、お前そんなキャラだったか?
「すみません。で?走って戻ってくるなんて、実際何かありました?」
机に置いてあったペットボトルを渡してくれる目黒が、口元を押さえながら、つい願望が…なんて小声で言っているのが聞こえた。
お前の願望って俺が襲われることなのか?
信頼している副委員長に、もしかしたら恨まれているのかもしれないと内心びくびくしながらも、渡されたお茶で口の中を潤す。
一息つくと、さっきあったことを掻い摘んで目黒に報告する。キスのことは絶対言わない。犬に噛まれたと思うことにする。
「会長が……」
そう呟いた目黒は手で目を覆い天を仰いだ。
「俺のことはもういい、それより何も問題はなかったか?」
思考が何処かに行っている目黒を引き戻し、尚且つ話題を逸らすために問いかける。
「ああはい、怪我もなく順調ですよ。今バスケのブロック決勝が行われているそうです。」
目から手を離してこっちを向き、現状を報告してくれた。
バスケがブロック決勝か…この調子なら時間通りに決勝まで進みそうだな。
チラッと視線を移したのはテントに設置したホワイトボード。
トーナメント表が貼られており、その横に終了時間目安として、12時まで!と大きく書かれている。
この表を見ながら、負けた者の把握や勝ち進んでいる者が試合に遅れないように目配りする。
「ドッジボールの方はどうだ?」
「それは俺から。Sクラスが粘っているらしくて、他の試合が遅れている。」
挙手をして報告をする、茶色の短髪の男。
3年風紀の青山虎徹。会計を担っている、みんなの頼れる兄貴みたいなやつ。
実際、後輩から慕われていてきゃあきゃあ騒がれると、その男前な顔を困ったように顰めているものだ。
Sクラスって…若松くんがドッジボールのチームに加入したって聞いたけど、まさかな。
「あ、委員長。それ例の転入生が色々やってるらしいですよ。」
「俺のとこにも報告あった、いちゃもんつけてるとかって険悪なムードで試合してるらしいぞ。」
……なんでこう問題を起こすんだ。
「いちゃもんは解決したのか?」
報告をしてくれた青山に確認を取る。
「いや、若松の言い分は相手チームが外野から戻ってきたとか。」
「……ルール説明したよな?」
「したねぇ、内野を倒したら外野は復帰ありって。」
お互いに目を合わせて大きなため息をつく。
困ったものだな。
「委員長!!!」
「ん?お帰り蜂須賀。」
般若の顔で見回りから戻ってきた蜂須賀が、殺気を纏い俺に近づいてくる。
少し機嫌が悪いのだろうと特に気にせずいつも通りに接した。原因が俺だと知らずに。
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