世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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11話

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「京本、おい京本!離せ!……マジで寝たのか?嘘だろ?」


壁に押し付けられたとき、京本は俺の首元に顔を埋めて、信じられないが匂いを嗅いでいた。
驚きすぎて固まっていると今度は舐められた。
ひっと小さく声が漏れたが、京本はその反応で興が乗ったのか首元から耳にかけてキスの雨を降らす。

うぅ、ぞわぞわした。

暫くすると満足したのか、その場に俺を座らせて膝枕を強要したのだ。それが今に至る。

運動場寄りの校舎裏、つまり外だ。
俺は地面に座らされ、膝に京本の頭。
しかも顔が腹側に向いており、両腕でがっしりと掴んでいる。

寝てるはずだろ?なんでこんなに力強いんだ!


「あーもう、連絡さえできれば。」


ズボンのポケットに入れていた携帯は、京本が硬いと言って奪いとり、自身のポケットに入れた。

チラッと京本のポケットを見やるが、しがみつかれた状態では届きそうにない。
再び溜息を吐く。

「えっち、どこ見てんだよ。」
「お前狸寝入りかよ!何がしたいんだこの馬鹿!」

視線を落とすとしたり顔の京本が俺を見上げていた。先ほどまでの規則正しい寝息は嘘だったらしい。

「俺は仲神の結婚を前提とした恋人になりたい。」
「……はい?」

空耳だろうか、京本が俺の何になりたいって?

「仲神の恋人になりたい、ゆくゆくは俺の家に嫁いで来てほしい。」
「はぁぁぁ?!お前俺のこと嫌いだろ?なんでそんな考えになるんだよ!」

膝枕をしている俺が言うのもなんだが、こいつ起きようとしない。寧ろ密着してくる。


「俺は1年の時にお前に一目惚れした。」

「嘘つけぇぇ!!お前その時くらいからずっと、会えば嫌味ばっかじゃないか!」


未だかつてこいつに対してここまで声を荒げたことがあるだろうか。いや、ない。

嫌味の言い合いみたいな関係で、淡々と業務連絡のようなことしか話したことはない。


「嘘じゃねぇよ、長期戦のつもりが邪魔が入ったからな。少し早目に計画を変更した。」


邪魔?一体何を言っている。
抱きついている片方の腕を腰から外して、俺の頬を手の甲でなぞる京本。
こちらを見ている目は熱を帯び、本心で言っているかのように錯覚させられる。


「……困る。俺は仲神を継ぐつもりだ、学生の間だとしても生産性のない男同士で恋愛をするつもりはない。」


逆上されないように、一応言葉は選んだつもりだ。
だが京本は、怒った顔をして。

「は?生産性がないなんて誰が言った。学生の間だけじゃない、俺との繋がりは将来の為になる。
 それにお前には弟がいるんだから、そいつに継がせればいい。」

上半身を起こし、頬を撫でていた手は髪に触れ、京本の顔が近づく……

「嫌じゃねえなら、俺と付き合え。俺は一途だからな、生涯お前だけを愛するよ、蛍。」
「っ!」

軽いキスを唇にされた。
咄嗟のことで目を開けたままで、それに気づいた京本が意識的に俺と目を合わせる。

獲物を捕らえたような眼であり、煽情的な眼。

その瞳に捕らえられた俺は抵抗するということを一瞬忘れていた。
だがその一瞬が大事だったのだ。

見逃さなかった京本は、瞬時に舌を滑り込ませ、軽いキスから深いキスへと変わる。

口の中で自分の意思とは違い、勝手に動く異物にパニックに陥り、呼吸ができない。

「はっ、かーわいー。息できねぇの?」

慣れたもんだと離れていく京本の舌は、どちらのものかわからない唾液が糸となって伸びている。

酸素不足になった俺は突っ込む気力も失せ、息を整えることに専念する。


「お前、何をしたのか分かっているのか?」


キッと京本を睨むが、奴は悪びれる様子もなく言い放つ。


「これからお前の身体に仕込んでやるよ。ハジメテは全部俺が予約してるから、他のやつにやられるなよ?」


最後に殺気の篭った視線を向けてきたため、思わずはいと答えてしまった。
こう言うところが人の上に立つカリスマ性なのかもしれない。


「はっ!ち、違う!さっきのは思わず出ただけだ、俺に命令するな!」


京本を押し除け、言い捨てるようにその場から逃げる。あのままだとまた襲われかねない。


「俺が何したって言うんだ……」


後ろを気にしつつ一目散に風紀の設営テントへと走る。
置き去りにされた京本がどんな顔をしているのか見るのが怖い、追いかけてきてないことが幸いだ。
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