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10話
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親睦会当日、金曜日。
生徒会長が開幕宣言をしてスタートした、午前の部。
体育館ではバスケを、運動場ではサッカーが行われているところだ。
長袖の指定ジャージを着て、左腕に風紀の腕章をつけ見回りを行う。
今のところサボっている生徒はいないようだったが、若松くんに恥をかかせようと目論んでいた、西條の親衛隊の1人を捕まえた。
「だって!辰也様があいつにばっか構って、今まで順番だった閨が一切なくなったんですよ!僕悔しくって…分かってくれますか?」
あいつの好きそうな背の低い従順そうな子だ。
瞳を潤ませ、両手を交差して祈りのポーズ。
可哀想なやつだと思って欲しいんだろうが、甘いな。
「どんな理由があろうと、手を出して仕舞えば君が加害者になる。そこまでする価値が西條にはあるのか?自分の人生を捨ててもいいほど惚れているのか?そうなら真っ向から話し合え。」
肩に手を置き、諭す。
ここで頭ごなしに言っても反発するだけだ。まずは意思の確認をして、どうしようもなければ処罰と親衛隊の脱退を告げなくてはならない。
大元として、西條が手綱を握っていないのが悪い。
うん。
「そう…ですよね。僕ちょっと頭にきてて自分を見失ってたみたいです……辰巳様と話し合ってきます。それでその…もしだめだったら……」
段々と頬を染めていき、最後は意を決したように何かを告げようとしたその子だが、その瞬間。
俺の両耳が背後から塞がれた。
「おい誰だ。」
結構な力で塞がれている。というより押さえつけられているため首を後ろに向けることができない。
普通に痛いんだが。
目の前の生徒は顔を青ざめて、会釈をした後逃げるように去って行った。
「仲神、お前こんな所で何してる。」
「京本か。見回りだが……お前こそどうして。」
生徒が完全に去ったのを待ってから後ろの人物、京本はようやく俺の耳から手を離した。
京本はジャージ姿で袖を通さずに羽織っているだけの上着がすこし揺れる。
そんなことより、生徒会は主催者だ。
体育館か、運動場のどちらかにいるはずなのに、何故こいつはここにいる。
去年同様、親衛隊の誰かと致しに来たのか?ここは人気もなく穴場だろうな。
そうよぎるがこいつは1人だ。……本当に何しに来た。
「若松から逃げててな。」
溜息をついて、何故か俺を抱きしめる。
純粋な力だけではこいつに負けるため、無駄な抵抗はしない。口は動くからな。
「離れろ、俺はまだ仕事がある。暇なお前を構ってる時間なんてない。」
「つれないこと言うな、俺とお前の仲だろ?」
そう言うと一層キツく抱擁をする京本。
ほぼ同じ身長のため、俺の肩に京本の頭が潜り込んで生温かい息が首に当たる。
こいつの方が1センチ上だなんて認めない。誤差だそんなもの。
「どんな仲だ。生徒会と風紀は代々対立するというのも、そっちから突っかかっているらしいな。そういうのも先輩から教わるのか?」
「よく回る口だな……ああ、口でしか抵抗できないからか。」
分かっているなら離せよ。という意思表示をしたくても腕も抱擁の中のため、全く動けない。
そんなとき、京本がふっと腕の力を緩めたかと思えば、俺を壁際に追い詰めた。
京本の肩からぱさりと上着が落ちる。
抱擁からは逃れられたのだが、今度は両手を壁に押し付けられ、足の間には京本の右足が入り込み、俺は再び捕らえられた。
くっ、流れ作業で捕まえやがって。
思考が追いつかず、逃げる隙がなかった。
向かい合う形になった今の格好はお互いの顔がよく見える。
俺の悔しい表情をみて、京本は楽しそうににんまりとした表情だ。
悪魔かこいつは。
生徒会長が開幕宣言をしてスタートした、午前の部。
体育館ではバスケを、運動場ではサッカーが行われているところだ。
長袖の指定ジャージを着て、左腕に風紀の腕章をつけ見回りを行う。
今のところサボっている生徒はいないようだったが、若松くんに恥をかかせようと目論んでいた、西條の親衛隊の1人を捕まえた。
「だって!辰也様があいつにばっか構って、今まで順番だった閨が一切なくなったんですよ!僕悔しくって…分かってくれますか?」
あいつの好きそうな背の低い従順そうな子だ。
瞳を潤ませ、両手を交差して祈りのポーズ。
可哀想なやつだと思って欲しいんだろうが、甘いな。
「どんな理由があろうと、手を出して仕舞えば君が加害者になる。そこまでする価値が西條にはあるのか?自分の人生を捨ててもいいほど惚れているのか?そうなら真っ向から話し合え。」
肩に手を置き、諭す。
ここで頭ごなしに言っても反発するだけだ。まずは意思の確認をして、どうしようもなければ処罰と親衛隊の脱退を告げなくてはならない。
大元として、西條が手綱を握っていないのが悪い。
うん。
「そう…ですよね。僕ちょっと頭にきてて自分を見失ってたみたいです……辰巳様と話し合ってきます。それでその…もしだめだったら……」
段々と頬を染めていき、最後は意を決したように何かを告げようとしたその子だが、その瞬間。
俺の両耳が背後から塞がれた。
「おい誰だ。」
結構な力で塞がれている。というより押さえつけられているため首を後ろに向けることができない。
普通に痛いんだが。
目の前の生徒は顔を青ざめて、会釈をした後逃げるように去って行った。
「仲神、お前こんな所で何してる。」
「京本か。見回りだが……お前こそどうして。」
生徒が完全に去ったのを待ってから後ろの人物、京本はようやく俺の耳から手を離した。
京本はジャージ姿で袖を通さずに羽織っているだけの上着がすこし揺れる。
そんなことより、生徒会は主催者だ。
体育館か、運動場のどちらかにいるはずなのに、何故こいつはここにいる。
去年同様、親衛隊の誰かと致しに来たのか?ここは人気もなく穴場だろうな。
そうよぎるがこいつは1人だ。……本当に何しに来た。
「若松から逃げててな。」
溜息をついて、何故か俺を抱きしめる。
純粋な力だけではこいつに負けるため、無駄な抵抗はしない。口は動くからな。
「離れろ、俺はまだ仕事がある。暇なお前を構ってる時間なんてない。」
「つれないこと言うな、俺とお前の仲だろ?」
そう言うと一層キツく抱擁をする京本。
ほぼ同じ身長のため、俺の肩に京本の頭が潜り込んで生温かい息が首に当たる。
こいつの方が1センチ上だなんて認めない。誤差だそんなもの。
「どんな仲だ。生徒会と風紀は代々対立するというのも、そっちから突っかかっているらしいな。そういうのも先輩から教わるのか?」
「よく回る口だな……ああ、口でしか抵抗できないからか。」
分かっているなら離せよ。という意思表示をしたくても腕も抱擁の中のため、全く動けない。
そんなとき、京本がふっと腕の力を緩めたかと思えば、俺を壁際に追い詰めた。
京本の肩からぱさりと上着が落ちる。
抱擁からは逃れられたのだが、今度は両手を壁に押し付けられ、足の間には京本の右足が入り込み、俺は再び捕らえられた。
くっ、流れ作業で捕まえやがって。
思考が追いつかず、逃げる隙がなかった。
向かい合う形になった今の格好はお互いの顔がよく見える。
俺の悔しい表情をみて、京本は楽しそうににんまりとした表情だ。
悪魔かこいつは。
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