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閑話:蜂須賀流星
しおりを挟む俺には最も敬愛する人がいる。
1つ歳上の仲神蛍様だ。
代々続く名家の蜂須賀家の庶子であり、三男坊として産まれた俺は、小さい頃から期待なんてされず、お手伝いさんの手によって育てられた。
都塚学園に入れられたのは中等部の時。
亡き母親譲りの金髪が生意気だとか、庶子のくせにとか遠巻きにされる日々。
寮の同室のやつすら話しかけてこない。
高等部でも同じことの繰り返しになるのだろう、それならいっそ派手に暴れたらスカッとするのだろうか。
高等部1年の春。
外部入学のこれまたどこぞのボンボンに、蜂須賀家の庶子がなぜこの学園に、なんて絡んできたからぶん殴った。
スカッとはしなかったし、なんなら殴った拳が痛い。
それ以来、風紀に目をつけられたらしく、事あるごとに声をかけられ指導されてきた。
それが当時副委員長の蛍様だった。
真面目で、世話焼きで、よく人の相談に乗っていた。本人が親衛隊は要らないと言ったから隠れファンが沢山いる人気者。
1学期中、喧嘩を仕掛けて、あっさりと躱されて、逆に取り押さえられる、そんなことが続き、挨拶させられる関係になった。
相変わらず風紀のブラックリストには載っているらしいが、蛍様は嫌な顔せず俺と関わりを持ってくれた。
俺でも知っている、あの仲神グループの子息なのに、御曹司なのに……この人は汚れていない。とても綺麗だ。
夏期休暇のとき、帰省したくないとこぼすと、『じゃあ一緒にご飯を食べるか?』といつもの世話焼きが始まった。
夜遅くになると、『部屋まで戻るのは面倒だろう。客用布団あるからここで寝ろ。』と風呂まで入れてもらった。
遠慮する俺に、蛍様は『俺が寂しいから居てくれると嬉しい。』なんて困った笑顔で言うものだから。
週に何度かお邪魔して、お盆の期間は帰るという蛍様はその前日に、『すぐ帰ってくる。土産買ってな。』懐いた俺の心中を察したのだろう。
帰省しないと決めた俺が、人のいない寮で静かに過ごすことを。
ある日俺は蛍様に聞いた、なんでそんなに優しくしてくれるんだ。俺は蜂須賀家の庶子だ、利益なんて何もない。
すると蛍様はいつもの困った笑顔で『弟の世話を焼いていたからかな、ほっとけなかったんだ。蜂須賀、これは俺の自己満足だ。お前が嫌なら離れろ。』
嫌なら離れろ。
は?え?
そんな一言で切り離せるほど、蛍様の心に俺はいないのか?
俺はもう、あんたなしじゃ呼吸もできないのに。
だから決めた。
蛍様にとって必要な人間。
使える人間になって、蛍様の人生に居座るため。
そのためなら嫌いだった実家の仕事にも、顔を出す。
勉強をして、風紀に入って、蛍様の世話をする。
世話焼きなあんたを、俺がデロデロに甘やかして、俺なしじゃ駄目になってしまえ。
助けたんだから、最後までお世話してくださいっすよ俺の神様♡
応援ありがとうございます!
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