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閑話:京本誠一郎
しおりを挟む高等部に進学した春、外部からの新入生が増えた。
中等部から同じ内部生は既にグループができているためか、外部生たちは大人しく席に座っている。
各言う俺も、誰かと話す訳でもなく席に座ったまま、ぼーっと窓の外を眺めていた。
親に入れられた寮生活、家柄だけを気にする生徒、揉め事に関わりたくない教師、媚び諂う親衛隊。
くだらねぇ、俺の人生。
決められたレールを決められた通りに進んでいく。そこに俺の意思はない。
こうすれば喜ぶだろう。こうすればできる奴だと思われる。
なんて、相手に合わせてばっかしてると、いつの間にか生徒会長候補なんて言われて生徒会に入れられた。
まだ1年生。だが、もうとも言える。
親の目から離れていられるのもあと3年間。
そんなことを考えていたら、俺に話しかけてきた奴がいる。
「初めまして、仲神蛍です。ねぇ、君内部生だよね。俺高校からなんだ、よかったら学園について教えてくれないかい?」
黒髪で自身の左側を耳の後ろにピシッと撫でつけた、いかにも優等生の風貌の男。
そいつが柔和な表情で俺に問いかける。
俺のこと知らないのか?
思わず目を見張る。
これでも京本財閥の御曹司としてそこそこ顔が知れてることを自負している。
それに、こいつは仲神を名乗った。
仲神グループは会長の仲神政宗を筆頭に親族経営をしている大企業だろ。パーティーで見かけたこと……ないな、この顔を忘れるわけがない。
それほどに目の前の男は存在感があった。
整った顔立ち。
175以上はあるだろう身長。
一挙一動を見逃したくないと思わせる、人を惹きつけるオーラ。
男同士でヤり合うこの学園で、すぐにどちらからもモテるだろう。
考えを巡らせていたため、無言で見つめ合う形になっていた俺たちに、仲神が困ったように言葉を続ける。
「えっと…仲良くしてもらいたいんだが、まずは名前を教えてもらってもいいかな?」
こいつまじか、本気で俺に……ただの俺に話しかけてる。御曹司の俺じゃなくて、クラスメイトってだけで。
「京本、誠一郎だ。」
どうせ名前を聞いたら態度を変えるんだろう、そうなったら惜しいな。
なんて思っていたが仲神は、なんてことなさそうに言った。
「そうか、よろしくな京本。」
態度を変えるどころか、握手を求めてきた。
それも屈託ない笑顔で。
俺の心にガツンときた。
一目惚れはまるで雷に打たれたようだと先人達は言うが、まさにそれだ。
何を置いてもコレが欲しい。
コイツの唯一になりたい。
その心を認識すると、頭の霧がスーッと晴れたようにやるべきことを考えはじめた。
この3年間でコイツの思考の中に必ず俺を居座らせてやる。
そして卒業しても、今後の人生において、俺なしでは生きていけないようにしてやる。
「ああ、よろしくな仲神。外部生にはこの学園は特殊だろ、俺が教えてやるよ。」
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