世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

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3話

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「はぁ?なにをしてるんだあいつは……」

今通ってきたばかりの裏門からガシャンッと物音がしたため振り返ると、そこにいたのは車が出入りする大門の方を登ろうとしている奴がいた。

すぐ傍に人の通用口があるのに、何故そっちを登ろうとしている。馬鹿なのか?


「おい、君……」


踵を返し、仕方なくその人物に通用口の存在を知らせようと声をかけ…る前に門の向こうで動きがあったようだ。

登ろうとしていた奴は門から降り、視線の先にはきっと注意した人物がいるのだろう。


誰か知らんが、風紀で責任を取った方がいいな。制服を着ているならうちの生徒だろう。
もし叱ったのが教師だとしたら、どのみち風紀として案内しろとか言われるな、なんて思考を廻らせ門へと近づく。


「おい、通用口はこちらだ。見たところ身だしなみに引っかかる箇所もないようだが……転入生か。それに古田もいたんだな。」


通用口から中へと手招きすると、立っていたのは転入生の若松比呂とその世話係を任されただろう副会長の古田信彦のぶひこだった。


転入生は毛量の多い少しパーマのかかった黒髪に分厚いメガネをかけ、制服は間に合わせたのだろううちの制服を着ていた。

その隣にはいつもの澄まし顔…じゃなく真っ赤。
動揺しているのか、かけているメガネを何度も直している古田がいる。


「おはよう、顔が赤いぞ古田。熱でもあるのか?」
「なっ!ちっ違います!私が体調管理できない奴だと思ってるのですか!」

ただ心配しただけなのにこの言われよう、そんなに普段から嫌味を言う奴だと思われていたのか?心外だな。

まあ確かに、古田の目の前でよく京本と嫌味の言い合いをしていたからな。



「なああんた誰?信彦の先輩?」



おっと転入生を放置していたな。
関わらないと決めていたがこれはイレギュラーだ、今後は気をつけよう。


「初めまして、風紀委員長をしている仲神蛍だ。あと年上には敬語を使うように、転入生くん」


あの警戒心の強い古田を初対面で名前呼びとは、ただの馬鹿か、計算か……まあ古田の親衛隊が黙ってないだろう。
その辺のルールは態々教えてやる道理じゃないと、昨日目黒にも言われたな。


「敬語ってなんか壁ある感じするだろ?だから俺は使わない!よろしくな蛍!」


おっとしまった、ただの馬鹿だこいつは。
転入生が笑顔で握手を求めてきたのを無視して困ったように答える。


「すまない、初対面で名前呼びされるのは好きじゃないんだ。礼儀のない子は嫌いだな。」


事前に名前を知っているにしても、こいつ名乗ってないよな?名乗らずにしかもタメ口なのはちょっとな……

うん古田に押し付けてさっさと退散しよう。


「転入生くんの案内は古田かな?早く馴染めるようにしっかり教えなさい。お先に失礼する。」

古田に挨拶を済ませ、頑張れよの意味を込めて手を振る。

あーだめだ、ああいうタイプ生意気なやつは礼儀を1から教え込みたくなる。よく耐えた俺!

「分かってます!お気遣いどうも。」
「は?なにあいつ、嫌な感じ。」

聞こえてるぞ、転入生。

背後の掛け合いを無視して、そのまま自分のクラスへと向かう。執務室はもういいな。時間も潰れたし、避けたはずの転入生には遭遇してしまった。

あの転入生、風紀のブラックリスト候補に入れておこう。

この学園は金持ち子息らしい思考の上に規則が成り立っている。

家柄重視の上下関係は絶対。
見目麗しい役員を独り占めしないための親衛隊。
性に興味あるお年頃の奴らが手を出す同性愛。

……始め以外別に金持ち関係ないな、ただ閉鎖された学園内で自然と始まった学園恋愛。


卒業したら自然解消が多いと先輩たちから教わった。
学生のうちのお遊びだと、だからと言って俺はしない。恋愛で堕落していく者を風紀対象でよく見かけるからだ。


遊びだと言うなら、しなくていいだろう。
いつかは家のために政略結婚するのだから。
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