世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ

文字の大きさ
上 下
2 / 93

2話

しおりを挟む

名家や権力者の子息たちが通う私立都塚学園。

都心から離れた山に校舎を構え、全寮制であるための豪華な寮を設備。


……監獄を彷彿とさせる閉鎖空間、というのは俺の感想だ。


寮では協調性や最低限の生活能力を養うために、基本は2人部屋。

だが、『役員持ち』つまり会長や委員長、副委員長など、委員会で何かしらの役員を務めている者は、1人部屋を選択できる。まあ拒否するやつはいないが……


つまるところ、俺は1人部屋を確保している。

まあ2人部屋でも良かったのだが、キッチン付きなのは1人部屋だからな。
風紀副委員長を務めていた2年の時から1人部屋を選択させてもらっている。

役員棟寮のとある1室で生活する俺は、毎朝早くに起きて弁当の準備をしながら自身を覚醒させていくのがルーティンみたいなものだ。


「くぁ…あふ……今日なんかあったっけ?」


欠伸を噛み殺し、フライパンを温めながら風紀の仕事を思い出す。

あぁ…転入生だ。
2年だから直接の関わりはないだろうが気には留めておく事柄だろう。


慣れた手つきで卵焼きを作り、冷ましている間に冷蔵庫から作り置きしていた品を弁当に詰めていく。


明らかに寝起きの状態、いつも整えている髪は邪魔になる前髪だけをピンで留め、他は無造作だ。

服装も寝るときに着ているTシャツにジャージという格好。きっちりと制服を着こなしている堅物の風紀委員長という姿からはまったく想像のつかない、気の抜いた格好。

こんな姿を見られたら慕ってくれている奴らに幻滅されるだろうな。

_______
なんて的外れな主観をこの男は浮かべているが逆である。

いつも隙のない人の気の抜けたところはギャップになり、とてつもなく萌えるということをこの男は知らない。




「よし、こんなもんだろ。」


作り終わった弁当の熱を取るためテーブルに置き、その間に自身の準備を始める。

寝室のクローゼットを開き、制服を順に手にする。

シュルッと白いワイシャツに腕を通し、第1ボタンまで留め、濃緑のネクタイを締める。そして同色のチェック柄のズボンを履き、ブレザーを手に持ってリビングへと向かう。


「さて、どうしたものか。」


いつも通り早く学校に着くのもいいが、転入生と鉢合わせすることは避けたい。

正門で行なっている風紀の仕事、身だしなみチェック兼挨拶運動も当番制のため行かなくてもいい。

まあ当番じゃなくても行っているが、今日は何故か行く気がない。



……裏門から校内に行けば誰にも見つからないな。ホームルームまで執務室にいればいいか。


そう思い至った俺は前髪を留めていたピンを外し、いつもの髪型、左耳にかけた髪をワックスで固定して撫で付ける。右側の前髪は少し目にかかるくらいだが、オールバックにするのはなぁ……将来禿げそうだし。


身だしなみを完璧に整え、弁当を鞄に詰めたことを確認して部屋を後にする。



裏門に行くなんて思ったのは、所謂虫の知らせというやつだったのかもしれない。


習慣を乱すことなどなかったのに、裏門へ誘われるように俺は向かってしまった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

龍神様の神使

石動なつめ
BL
顔にある花の痣のせいで、忌み子として疎まれて育った雪花は、ある日父から龍神の生贄となるように命じられる。 しかし当の龍神は雪花を喰らおうとせず「うちで働け」と連れ帰ってくれる事となった。 そこで雪花は彼の神使である蛇の妖・立待と出会う。彼から優しく接される内に雪花の心の傷は癒えて行き、お互いにだんだんと惹かれ合うのだが――。 ※少々際どいかな、という内容・描写のある話につきましては、タイトルに「*」をつけております。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

監獄にて〜断罪されて投獄された先で運命の出会い!?

爺誤
BL
気づいたら美女な妹とともに監獄行きを宣告されていた俺。どうも力の強い魔法使いらしいんだけど、魔法を封じられたと同時に記憶や自我な一部を失った模様だ。封じられているにもかかわらず使えた魔法で、なんとか妹は逃したものの、俺は離島の監獄送りに。いちおう貴族扱いで独房に入れられていたけれど、綺麗どころのない監獄で俺に目をつけた男がいた。仕方ない、妹に似ているなら俺も絶世の美形なのだろうから(鏡が見たい)

色彩色盲

カミーユ R-35
BL
非王道もの語?

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

処理中です...