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1話
しおりを挟む放課後の都塚学園
夕陽が差し込む風紀委員会の執務室、机越しに向かい合う2人の男。
「委員長、明日の転入生が来る件ですが……」
「ああ…明日だったな。」
書類に目を通していた俺、仲神蛍は手を止め話しかけてきた相手を見る。
一言で言えば色素の薄い儚い系美人、風紀副委員長の目黒環はさらりとした髪を煩しそうに耳にかける。
絵になる所作だな。
なんて呆けている俺に、その美しい顔をいかにも面倒くさそうに歪ませ1枚の報告書を渡してきた。
「理事長の孫らしく、しばらく生徒会預かりとなるそうです。」
「ふぅん、ならそいつが事をしでかしても全責任が生徒会にあるという事だな、ふふ最高だ。」
気に食わない生徒会たちに仕事を押し付けた理事長に内心感謝し、奴らの余裕顔を崩すところを想像して思わず笑みが溢れる。
報告書に書かれているのはまるで履歴書だった。
_______
若松比呂、県立春日高校から転入、転入先は2-Sへ……etc.
特に不審な点はない、むしろ簡潔すぎて怪しい。
「……目黒、この件風紀は動くな。下手に関わると厄介なことになりそうだ。」
「やはりそうですか、探っても必要以上に情報が出てこなかったので…力不足ですみません。」
申し訳なさそうに項垂れる目黒。その頭には見えるはずのない耳がしゅんと垂れている。ふむ、別に怒っていないのだが気にしすぎだなこいつは。
「気にするな、理事長が噛んでるなら仕方ない。お前は十分やっている。それにしても転入でSクラスとは……転入試験の結果を見た限り無謀だと思うが、これもコネか?」
1年生は外部入学もあるため、ランダム分けをされているが、2年と3年は成績順でクラス分けをされている。
SからDの5クラス編成、Sクラスが1組という立場だ。
成績優秀者の勉強を妨げないためなのだが、転入生がSに行くのはおかしい。
「でしょうね。よくてC、下手したらD相当の学力です。おそらく古田に任せるためでしょう。」
2-Sにいる副会長の古田か、あいつが人を世話をするなんて想像できないな……まあ頼まれたなら問題なく進めるだろう。仕事に関しては信頼している。
頭に浮かんでいるのは澄まし顔の後輩。
短めの黒髪に眉毛までの長さに切り揃えられた真ん中分けの前髪、シルバーで縁取られたメガネをくいっと直し、こちらを睨み付ける、かっちりと制服を着込んだ男の姿。
「そういえば入寮は今日からの筈だが、それはまだか?」
明日から転入だとしても寮には今日来るはずだ、入寮にあたり決まり事もある。守らなければ風紀の指導対象になるが、説明くらいは俺らの仕事に入るのか?
「委員長、転入生は生徒会預かりです。学園のルールも全て奴らがするのが道理でしょう。むしろしなかったら職務怠慢ですよ。」
「よく考えてることがわかったな、まあそれもそうか。はぁ恒例の親睦会も迫っているのに……京本め。」
生徒会は仕事しているのか?
月末の親睦会の概要も検閲しなくてはいけないのに案の提出すらまだだ。
とりあえず会長の京本に一言嫌味でも言いに行って、催促もして、親睦会の準備も他の委員会と連絡をとって……
「転入生、大人しいやつならいいんだが。」
(委員長、それフラグって言います。)
目黒がそう思っているなんて知らず、ただ切実に願ったことが口から溢れた。
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