父への手紙

オオトリ

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十枚目※

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転職してからは、収入は半減しましたが、無理な勤務も無くなり、父の入院や手術の立ち会いも出来るようになりました。

それまでは、例え父が命がけの手術をしていようとも休むこともなく、いつもどおりの仕事をこなしていたので。

幸い、最初の会社で荒稼ぎ出来たので、父と母の介護費用の不安もほとんどありません。
これからの将来どんと来いです。

しかし、なんでしょうね。
父の人生は、なぜこうも落ち着かないのでしょうか。

父に、今度は癌が見つかりました。
心臓への負担もあり、本当に命がけの最後のチャンスです。

病室で長時間の手術を待つ間。
私はスマホで小説を読んでいました。
父も好みそうな、時代物の人情話です。
1冊分読み終えてもまだ終わりません。

ロビーでは、母と数人の親戚が待機していましたが、手術が終われば病室に人が来るので、私は病室を離れませんでした。

2冊目をほとんど読み終える頃に、看護師さんが呼びに来てくれました。
無事に終わったそうです。

色々な管に繋がれた父が運ばれるのを見ることができました。
色んな管に繋がれた父を見るのはこれで何度目でしょうか。
管に繋がれたまま、私をチラリと視線だけで見て、父が涙を流したのはいつのことだったでしょう。

父はまだ、意識はありません。
意識があっても、不器用な私はきっと声はかけられなかったでしょうけど。

手術室へ見送るときも、母と親戚の後ろに立って、何でもない顔をして小さく手を振るのがせいいっぱいでした。

そのあと、術後の説明を聞きに医師の元へ呼ばれました。
切り取った患部を見ながら説明を聞きます。
疲れた顔の母が、噛み合わない質問をしながらも簡単に説明は終わりました。

あとは、父の体力の回復を待つだけです。

何度も大きな手術を乗り越えた父は、今回も頑張りました。
無事に手術後もくっつき、退院できたのです。

しかし、内臓を切除した負担は大きく、体力の回復は少々遅れ気味でした。
それでも、なんとか日々を過ごしていた頃。

病院からの知らせが入ります。

病理検査の結果、切断面から癌細胞が見つかり、更に大きく切除の再手術の話でした。

手術には体力が耐えきらないかもしれない。
けれど、このままにはできない。



何度も聞いたセリフです。
それを父さんは毎回乗り切ってくれたので。
今まで何度聞いても、不思議と不安にはあまりならなかったのに。

今度は、手が震えるんですよ。父さん。
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