父への手紙

オオトリ

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九枚目※

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私の仕事の話に戻りますが、実のところ、私は高校を出てすぐ働いたところは腰掛けで、3年ほどで辞めてしまうつもりでした。

しかし、思わぬ収穫と、思わぬ責任と。
あとは、姉がせっかくの専門学校卒業後の就職先をあっさり辞めて一人暮らしをしながら引きこもってしまったことと。

様々な理由から、思わぬ長居をしてしまいました。

部下や同僚世代には大変に恵まれていましたが、上司とどうしても気が合わず、何度も衝突をしていたのが面倒で、早く辞めたかったのですが。

それも、やっと姉が再就職してくれたことで、私の肩の荷もおりました。
それを機に引っ越した姉の、住宅契約と入社書類の保証人にサインしながら、私も転職を考え始めました。

ほどほどに心身の疲労も感じていたので、無事に仕事を辞めてからは、半年ほどゆっくりと過ごすことにさせてもらいました。

母の心身の疲労は計り知れないところで申し訳無さを感じながらも、私が倒れてしまっては先が困ると判断してのことでした。

休養期間中は、日中は父と私だけの家になりましたが、私は就職してから休日は昼食を食べない習慣になっていたので、ほとんど顔を合わせることもありません。
ふらっとスウェットで出掛けても、スーツを着て出掛けても。
気づかないフリをしてくれることが、とても心地良かったのです。

なにせ、高校から一発の就職活動しかしたことがなかったので、いくつか練習がてらの冷やかし面接を受けるというなかなかの酷いことをしながら決めた次の仕事は、私が「やりたい」と思える仕事でした。

それは、子供の頃から見ていた父を取り巻く環境の理不尽さを。
母にのしかかった苦労の重さを。
姉の言動に振り回された家族の日々を。

私が私たらしめる要因のそれらを、無駄にしない仕事でした。

再就職してからも、甘え下手なところもカッコつけ
ところも変えられない私は、この仕事を両親に説明はしませんでした。

内容を聞いても、あまり理解しにくいだろうということと、もし理解してしまうと、私の育った環境に対する責任を感じてしまうのでは…と不安もあるからです。

一度、妙な縁の流れからテレビの取材対象にされてしまい、家族親戚に見られたらどうしようかと思いましたが、誰からも何も言われなかったので本当に安心しました。


見られたくないのは、単純に恥ずかしいからですが。
もし、父さんが見てても多分黙ってくれてただろうと思うのですが。
父さん、本当に見てませんよね?
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