9 / 14
九枚目※
しおりを挟む
私の仕事の話に戻りますが、実のところ、私は高校を出てすぐ働いたところは腰掛けで、3年ほどで辞めてしまうつもりでした。
しかし、思わぬ収穫と、思わぬ責任と。
あとは、姉がせっかくの専門学校卒業後の就職先をあっさり辞めて一人暮らしをしながら引きこもってしまったことと。
様々な理由から、思わぬ長居をしてしまいました。
部下や同僚世代には大変に恵まれていましたが、上司とどうしても気が合わず、何度も衝突をしていたのが面倒で、早く辞めたかったのですが。
それも、やっと姉が再就職してくれたことで、私の肩の荷もおりました。
それを機に引っ越した姉の、住宅契約と入社書類の保証人にサインしながら、私も転職を考え始めました。
ほどほどに心身の疲労も感じていたので、無事に仕事を辞めてからは、半年ほどゆっくりと過ごすことにさせてもらいました。
母の心身の疲労は計り知れないところで申し訳無さを感じながらも、私が倒れてしまっては先が困ると判断してのことでした。
休養期間中は、日中は父と私だけの家になりましたが、私は就職してから休日は昼食を食べない習慣になっていたので、ほとんど顔を合わせることもありません。
ふらっとスウェットで出掛けても、スーツを着て出掛けても。
気づかないフリをしてくれることが、とても心地良かったのです。
なにせ、高校から一発の就職活動しかしたことがなかったので、いくつか練習がてらの冷やかし面接を受けるというなかなかの酷いことをしながら決めた次の仕事は、私が「やりたい」と思える仕事でした。
それは、子供の頃から見ていた父を取り巻く環境の理不尽さを。
母にのしかかった苦労の重さを。
姉の言動に振り回された家族の日々を。
私が私たらしめる要因のそれらを、無駄にしない仕事でした。
再就職してからも、甘え下手なところもカッコつけ
ところも変えられない私は、この仕事を両親に説明はしませんでした。
内容を聞いても、あまり理解しにくいだろうということと、もし理解してしまうと、私の育った環境に対する責任を感じてしまうのでは…と不安もあるからです。
一度、妙な縁の流れからテレビの取材対象にされてしまい、家族親戚に見られたらどうしようかと思いましたが、誰からも何も言われなかったので本当に安心しました。
見られたくないのは、単純に恥ずかしいからですが。
もし、父さんが見てても多分黙ってくれてただろうと思うのですが。
父さん、本当に見てませんよね?
しかし、思わぬ収穫と、思わぬ責任と。
あとは、姉がせっかくの専門学校卒業後の就職先をあっさり辞めて一人暮らしをしながら引きこもってしまったことと。
様々な理由から、思わぬ長居をしてしまいました。
部下や同僚世代には大変に恵まれていましたが、上司とどうしても気が合わず、何度も衝突をしていたのが面倒で、早く辞めたかったのですが。
それも、やっと姉が再就職してくれたことで、私の肩の荷もおりました。
それを機に引っ越した姉の、住宅契約と入社書類の保証人にサインしながら、私も転職を考え始めました。
ほどほどに心身の疲労も感じていたので、無事に仕事を辞めてからは、半年ほどゆっくりと過ごすことにさせてもらいました。
母の心身の疲労は計り知れないところで申し訳無さを感じながらも、私が倒れてしまっては先が困ると判断してのことでした。
休養期間中は、日中は父と私だけの家になりましたが、私は就職してから休日は昼食を食べない習慣になっていたので、ほとんど顔を合わせることもありません。
ふらっとスウェットで出掛けても、スーツを着て出掛けても。
気づかないフリをしてくれることが、とても心地良かったのです。
なにせ、高校から一発の就職活動しかしたことがなかったので、いくつか練習がてらの冷やかし面接を受けるというなかなかの酷いことをしながら決めた次の仕事は、私が「やりたい」と思える仕事でした。
それは、子供の頃から見ていた父を取り巻く環境の理不尽さを。
母にのしかかった苦労の重さを。
姉の言動に振り回された家族の日々を。
私が私たらしめる要因のそれらを、無駄にしない仕事でした。
再就職してからも、甘え下手なところもカッコつけ
ところも変えられない私は、この仕事を両親に説明はしませんでした。
内容を聞いても、あまり理解しにくいだろうということと、もし理解してしまうと、私の育った環境に対する責任を感じてしまうのでは…と不安もあるからです。
一度、妙な縁の流れからテレビの取材対象にされてしまい、家族親戚に見られたらどうしようかと思いましたが、誰からも何も言われなかったので本当に安心しました。
見られたくないのは、単純に恥ずかしいからですが。
もし、父さんが見てても多分黙ってくれてただろうと思うのですが。
父さん、本当に見てませんよね?
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

おれ、ユーキ
あつあげ
現代文学
『さよならマユミちゃん』のその後を描くスピンオフ作品。叔母のマユミちゃんが残してくれた家でシェアハウスを始めた佑樹、だがやってきたのは未知の感染症だった。先の見えない世界で彼が見つけたものとは――?80年代生まれのひりひり現在進行形物語!
大人への門
相良武有
現代文学
思春期から大人へと向かう青春の一時期、それは驟雨の如くに激しく、強く、そして、短い。
が、男であれ女であれ、人はその時期に大人への確たる何かを、成熟した人生を送るのに無くてはならないものを掴む為に、喪失をも含めて、獲ち得るのである。人は人生の新しい局面を切り拓いて行くチャレンジャブルな大人への階段を、時には激しく、時には沈静して、昇降する。それは、驟雨の如く、強烈で、然も短く、将に人生の時の瞬なのである。
無垢で透明
はぎわら歓
現代文学
真琴は奨学金の返済のために会社勤めをしながら夜、水商売のバイトをしている。苦学生だった頃から一日中働きづくめだった。夜の店で、過去の恩人に似ている葵と出会う。葵は真琴を気に入ったようで、初めて店外デートをすることになった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


🍶 夢を織る旅 🍶 ~三代続く小さな酒屋の主人と妻の愛と絆の物語~
光り輝く未来
現代文学
家業を息子に引き継いだ華村醸(はなむら・じょう)の頭の中には、小さい頃からの日々が浮かんでいた。
祖父の膝にちょこんと座っている幼い頃のこと、
東京オリンピックで活躍する日本人選手に刺激されて、「世界と戦って勝つ!」と叫んだこと、
醸造学の大学院を卒業後、パリで仕事をしていた時、訪問先のバルセロナで愛媛県出身の女性と出会って恋に落ちたこと、
彼女と二人でカリフォルニアに渡って、著名なワイナリーで働いたこと、
結婚して子供ができ、翔(しょう)という名前を付けたこと、
父の死後、過剰な在庫や厳しい資金繰りに苦しみながらも、妻や親戚や多くの知人に支えられて建て直したこと、
それらすべてが蘇ってくると、胸にグッとくるものが込み上げてきた。
すると、どこからか声が聞こえてきたような気がした。
それは、とても懐かしい声だった。
祖父と父の声に違いなかった。
✧ ✧
美味しいお酒と料理と共に愛情あふれる物語をお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる