父への手紙

オオトリ

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八枚目

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父はあれ以降、私の様子を気にしてくれているようでした。

父がいち早く私の様子がおかしいことに気づいても直接は言わず「体調悪そうだ」と母に伝えるだけなのは、相変わらずの不器用さです。

ただ、なにを聞かれても「頭が痛いから寝る」としか答えない私を、母は気にしていません。
私がやたら寝るのは昔からなので。

一応、何度も発作を起こしている父には、普通の風邪すら命取りなので、不調時は近づかないように気をつけているので、多少は異変に気づきやすいのでしょうが。
顔に不調を出さないことには自信があるのに、家族というのはありがたいものです。

どれくらい私が鉄仮面かというと、足を捻って受診した先の医師が「痛くないの?!」と驚くほどの無表情さです。
ちなみに、足は完全骨折していました。

普段は、風邪や胃痛なら一人で病院にこっそり行くか、病院に行けないほどなら動けるまで黙って寝る派の私ですが、このときばかりはさすがに足なので運転できず父に送ってもらいました。
まさか骨折とは思わず、捻挫だろうと思っていたのですが、足が物理的に持ち上がらず「おかしいなー?」と思っての受診でした。

レントゲンを見たときの医師と看護師の驚いた表情が忘れられません。
仕事中ですよね?と突っ込みたくなるほどでした。
もちろん言いませんが。

しかし、恐る恐る険しい顔で「一人で来たの?」と聞かれ、車で父が待っていると答えた時に心底優しい表情で「良かった」と言ってくれたので、純粋に心配してくれたのでしょう。
良い先生でした。


母から聞きましたが、父さんは繰り返しの入院の中で、看護師さんたちから人気だったそうですね。
色んな検査や、繰り返しの手術にも文句を言わず、時に不器用なひょうきんさを見せる父さんのところには、手の空いた看護師さんがただ話をしにくるほどだったと。

痛みに耐える癖も、医療関係者の当たりの引きが強いのも父さん譲りでしょうか。

ちなみに、私が骨折時に無表情を貫いたのは、捻挫だと思っていたので「捻挫くらいで派手に痛がるのはみっともない」という謎のカッコつけ心理も在りました。

もしかして、父さんも看護師さんの前でカッコつけてたんですか…?
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