父への手紙

オオトリ

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五枚目

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そうして、少しずつ体力を取り戻せた父は、知人の紹介で仕事を始めました。

その時も、色々な苦労があったことも私は知っていますが、まあ割愛しましょう。

新しい職場の人とは、親しくしている様子が見えて、楽しそうにしていましたね。
一緒にお酒を飲みに行けないのは残念そうでしたが。

しかし、その生活も長くは続きませんでした。
再び発作を起こしてしまった父は今度も、大変な手術で、なんとか一命を取り留めることができました。

けれど、今度こそ本当に無理が出来なくなってしまったので、いよいよ行動の制限がついてしまいました。

それでも、外に働きに出ていた母に変わり、家で私を迎えてくれる人がいる…というだけで、私にはありがたいことでした。

徐々に思春期と呼ばれる年齢になった私はですが、しかし様々な経験のせいでしょうか反抗期と言えるほどのものはなく。
相変わらず、父と図書館に行ったり、時折散歩に付き合ったり…という日々でした。

でも、やっぱり参観日に父母が揃って来てくれる…というのは気恥ずかしさが勝ってしまい、変な態度になってしまいました。
当時は父親が来る人など稀だったので、余計に照れてしまったのです。

その態度を見て、父は私を気遣ったのでしょうか。
それとも、傷ついたのでしょうか。
もしくは、自身も母親たちに交じるのが気恥ずかしかったのでしょうか。

相変わらず、甘えるのが下手な私は、仕事が忙しくなった母から「参観日に行くのが難しい」と言われたときに、迷わずもうこなくてもいいと返事をしましたので、父もそれ以降は来なくなってしまいました。

甘えるのが下手なのも理由ですが、数少ない反抗期らしいエピソードでしょうか。

忙しい母と居心地の悪そうな父を思ってのことですので、反抗期らしさには欠けますか?



自身がまだ高校生の頃に父親が亡くなっている父さんには、私が「父母が生きてるだけでありがたい」と思っていることは、理解できたと思います。

でも、それを素直に言えない不器用さは、多分今も変わらないので。父さん譲りの性格なのでしょうね。
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