父への手紙

オオトリ

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四枚目

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そして、病気を発症してからの父は、色んな制約の中の生活でした。

まず、タバコは止めなくてはいけません。
甘いものも、しょっぱいものも控えなくてはいけません。
激しく動くこともできませんが、少しずつ動かなくてはいけません。

でも、もともと読書も好きな父は、私と(今度は本当に)図書館に行くことはできました。
そこで、児童向けの小説も読み始めていた私に、父が読んでみて「子供も読める」と判断したものは共有したりもし始めました。

お互いにあまり口数が多くないので、感想を言い合ったりするわけでもないのに。

徐々に、私が逆に漫画を紹介したり、小説も紹介したり。
どれも読みやすく、面白いと感じたりしましたし、多分父もそうだったのでしょう。

好きな文体や物語が似ているのは、親子だからでしょうか。

また、体を動かすための散歩の距離が伸びる頃には、母からの依頼で、私が一緒に付いていくことも多くなりました。
そこでも、大した話をするわけでもなく、ただ父の体調が悪くなっていないかを横目に探りつつ。

松ぼっくりを拾ったり、すれ違う犬と挨拶を交わしたりしながら。

そんな私は、親戚や近所の大人からは大層な親孝行な子供と評価をいただいたようです。

しかし、母が私に同行を頼んだ理由は、父が一人で倒れたりしないように心配したのが半分と、近隣の住民からの不審な目を防ぐための意味が半分だったんですよ。

直接聞いたわけではありませんが、母が親戚に話すのを聞きましたので。
近隣の住民が「いい大人がフラフラと…」と噂していたのだそうです。
病気になったことは知っているのに。
そのリハビリとは想像もできないんだそうですよ。

そういった様々な経緯を私が知らないと思ってお褒めくださる大人の姿はなかなか滑稽ですね。


でも、父さんはそのへんは全部気づいていたのではないですか?
何せ、私達はよく似ているので。
何事もない顔で、情報を集めて整理するのは得意でしょう?

もちろん。私が周囲の大人を嘲笑うつもりで行動していたことも、それを含めて散歩を心から楽しんでいたことも。
気づいていたでしょう?
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