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第七章 王太子の偏愛 王国騎士団 & 王国民
4・異母兄弟至上主義
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「監視していたイザベラ・アルジオンだけど、近々坊ちゃんの離宮に出仕するらしいぞ」
マーリオが報告書をメイヴィスに渡しながら言う。
「そうか」
書類を受け取ったメイヴィスは、パラパラと中を確認しつつ返事をする。
「驚かないんだな、予想してたのか?」
もっと強い反発があると思っていたマーリオは、淡白な返事をしたメイヴィスを訝しんだ。
「まあな」
あの舞踏会の日、イザベラ・アルジオンはシャーロットを睨みつけた後、ダルトンに強い興味を示していた。
危険を感じたからこそ監視をさせていたのだ、何らかの動きがあるのは想定内だ。
「このまま監視を続けてくれ、それとアルジオン家が保持する債権の債務者を調べろ」
メイヴィスは他にも幾つか追加の指示を出すとマーリオを下がらせ、報告書の続きを読み進める。
イザベラ・アルジオンは毒花だ、ダルトンに害を及ぼす前に早々に排除すべきだな。
…ダルトンを脅かす者は絶対に許さない…
「……離宮での監視は珊瑚にさせるか」
メイヴィスもダルトンも自分より異母兄弟の身を案じている。
正反対の容姿を持つ二人だが、中身は同じ異母兄弟至上主義の思想の持ち主だった。
ガースから届いた宿屋間の情報提供書を読んだ後で、メイヴィスは各国から届いた広域窃盗団の資料を読み始めた。
そして事件について考察をしていた時にギガがやって来た。
「メイ!、俺様が来てやったぞ!」
ギガがハイテンションで入室して来た、彼は明るく元気な男で、それは長所でも有るのだが時に騒々しい。
「呼び出してすまない、ギガ」
マーリオに伝言を頼んでギガに来てもらったのだ、メイヴィスは彼を対面に座らせると早速、魔導具の相談を始めた。
「女性が勝手に体に触れてきたり、抱きついてきた時に、それを弾く魔導具が作れるか?」
「何だそれ、自意識過剰だな、具体的な相手でもいるのか?」
ギガが何故か憐れんだ顔で聞いてきた。
「まあな、女性から迫られて自分が逃げられない場合を想定して、備えておきたい」
ギガが更に深く憐れんだ顔で諭してきた。
「メイ、残念だけど、女にモテないお前には必要ない、無駄な心配はするな」
ギガの率直な意見にメイヴィスの心は若干傷付いたが、何食わぬ顔で彼の誤解を解いた。
「違う、変な勘違いをするなギガ、必要なのは私じゃなくてダルトンだ」
「ああ何だそうか、確かにダルトンなら必要だな、早速試作品を作ってみるよ」
ダルトンの名前を出すとギガは直ぐに納得して快諾した、そんな彼の態度にメイヴィスは複雑な気持ちになる。
……待て、どういう事だ、ダルトンには負けるが、私だってそれなりに女性に人気があると思うのだが……
メイヴィスの腑に落ちない表情に気付いたのか、ギガが慰める言葉をかけた。
「メイ、女性に人気が無くても気落ちするな、俺はお前が大好きだぞ!」
何気にギガがメイヴィスの心を抉ってくる。
……いや、だから私だってそれなりに人気があると…………………もしかして、無いのか?
メイヴィスが何か納得できないモヤモヤした気持ちを抱えていると、騎士団長のグリードが執務室を訪れた。
「どうしたグリード、何かあったのか?」
グリードを見たギガはメイヴィスの隣に座り直した、グリードはメイヴィスの対面に座ると話をし始める。
「先日 王都の外れでジョンとショーネシーが捕縛した野盗達が、幾つかの商会や貴族の名前を連ねたリストを所持していました、作成者は不明ですが、リストは襲撃のし易さで区別されており、明らかに窃盗を目的として作られた物です」
グリードの話の内容にギガもメイヴィスも驚いた、メイヴィスはリストについてグリードに問う。
「そのリストが窃盗目的と云うのは、確実性が高いのか?」
「はい、念の為に騎士達にリスト先を巡回させると、リストの貴族邸が夜盗に襲われる所に行き当たり、賊を捕縛するという事が有りました」
どうやらグリードの言う通り、窃盗目的のリストに間違い無さそうだ。
「そのリストを見せて貰えるか?」
メイヴィスはグリードからリストを受け取ると、そこに連ねられている名前を視認する。
「評判の良くない者達ばかりだな」
「はい、悪評の多い富裕層ばかりです」
メイヴィスが感じたままを言うと、グリードも同調してきた、興味をそそられたギガが横からリストを覗き込む。
「それで、どうするつもりだ、グリード」
「暫くリストアップされた場所を、騎士達に交代で見回りをさせます」
「そうだな、実害を予防しつつリストの作成者を探るしか無いか」
グリードの現実的な案にメイヴィスも頷いた、襲われる相手が分かっている分、逆に対処がし易いとも言える。
「それと、別件でもう一つ気掛かりな事が、御前試合の予選で不正が行われている可能性が有るのです」
予選で騎士が不正とは、にわかには信じ難い話だ、グリードの表情も強張っている。
「可能性という事は未だ疑いの段階なのか、具体的な話を聞こう、続けてくれグリード」
メイヴィスがグリードに続きを促した、ギガも静かに話を聞いている。
「ある若い団員が年上の実力者を倒して、四回戦まで勝ち上がりました」
「凄いな、強くなったんだな」
若者の成長が嬉しくてメイヴィスは顔を綻ばせる、反対にグリードは苦々しげな顔で答える。
「いえ、彼は弱いです」
「言っている事が変だぞ グリード、弱かったら勝てないだろう」
チグハグな問答にメイヴィスも話を聞いていたギガも困惑するが、グリードは真面目な顔で話を続ける。
「明らかに実力が劣る者が、弱いまま勝ち上がると云う、謎の現象が起きているのです」
「謎の現象?、また変な事を言い出したな」
メイヴィスとギガは話の先が見えずに困惑するが、グリードは真剣で眼光も鋭く語気を強めて言葉を発した。
「彼が強くなったのでは無く、対戦相手が弱くなったのです」
「…………それ真面目な話か?」
最早グリードの話は現実味がなさ過る、勿論グリードがふざけている筈は無いが、メイヴィスはつい口に出た。
「私も半信半疑ですから、信じて頂けなくても仕方有りません。しかし、何らかの不正が行われているのなら怪しい動きが有るはずです、それで暗部に彼の身辺調査を依頼したいのです」
グリードの真剣な様子に、暗部の長を務めるメイヴィスも気を引き締めた。
「良いだろう、身辺は暗部に探らせるとしても、先に不正行為自体を暴いて失格にした方が良いのではないか?」
メイヴィスがグリードに質問をすると、グリードは困った様な、情けない様な顔で答えた。
「不正の方法が特定出来ないのです、まだ疑いの段階ですから失格にも出来ません、次の試合を見て不正方法を探る予定です」
本当に不正を働いているがどうかも分からないのだ、慎重に行動をしなくてはいけない。
「丁度ギガもいる事だし一緒に考えよう、彼の話を聞かせてくれないか、不正を疑い始めたきっかけは何だ?」
「きっかけは、一番隊の小隊長が二回戦で彼に敗北した事でした……」
グリードから予選の試合について話しを聞き、三人で不審な点を考察し始めた。
マーリオが報告書をメイヴィスに渡しながら言う。
「そうか」
書類を受け取ったメイヴィスは、パラパラと中を確認しつつ返事をする。
「驚かないんだな、予想してたのか?」
もっと強い反発があると思っていたマーリオは、淡白な返事をしたメイヴィスを訝しんだ。
「まあな」
あの舞踏会の日、イザベラ・アルジオンはシャーロットを睨みつけた後、ダルトンに強い興味を示していた。
危険を感じたからこそ監視をさせていたのだ、何らかの動きがあるのは想定内だ。
「このまま監視を続けてくれ、それとアルジオン家が保持する債権の債務者を調べろ」
メイヴィスは他にも幾つか追加の指示を出すとマーリオを下がらせ、報告書の続きを読み進める。
イザベラ・アルジオンは毒花だ、ダルトンに害を及ぼす前に早々に排除すべきだな。
…ダルトンを脅かす者は絶対に許さない…
「……離宮での監視は珊瑚にさせるか」
メイヴィスもダルトンも自分より異母兄弟の身を案じている。
正反対の容姿を持つ二人だが、中身は同じ異母兄弟至上主義の思想の持ち主だった。
ガースから届いた宿屋間の情報提供書を読んだ後で、メイヴィスは各国から届いた広域窃盗団の資料を読み始めた。
そして事件について考察をしていた時にギガがやって来た。
「メイ!、俺様が来てやったぞ!」
ギガがハイテンションで入室して来た、彼は明るく元気な男で、それは長所でも有るのだが時に騒々しい。
「呼び出してすまない、ギガ」
マーリオに伝言を頼んでギガに来てもらったのだ、メイヴィスは彼を対面に座らせると早速、魔導具の相談を始めた。
「女性が勝手に体に触れてきたり、抱きついてきた時に、それを弾く魔導具が作れるか?」
「何だそれ、自意識過剰だな、具体的な相手でもいるのか?」
ギガが何故か憐れんだ顔で聞いてきた。
「まあな、女性から迫られて自分が逃げられない場合を想定して、備えておきたい」
ギガが更に深く憐れんだ顔で諭してきた。
「メイ、残念だけど、女にモテないお前には必要ない、無駄な心配はするな」
ギガの率直な意見にメイヴィスの心は若干傷付いたが、何食わぬ顔で彼の誤解を解いた。
「違う、変な勘違いをするなギガ、必要なのは私じゃなくてダルトンだ」
「ああ何だそうか、確かにダルトンなら必要だな、早速試作品を作ってみるよ」
ダルトンの名前を出すとギガは直ぐに納得して快諾した、そんな彼の態度にメイヴィスは複雑な気持ちになる。
……待て、どういう事だ、ダルトンには負けるが、私だってそれなりに女性に人気があると思うのだが……
メイヴィスの腑に落ちない表情に気付いたのか、ギガが慰める言葉をかけた。
「メイ、女性に人気が無くても気落ちするな、俺はお前が大好きだぞ!」
何気にギガがメイヴィスの心を抉ってくる。
……いや、だから私だってそれなりに人気があると…………………もしかして、無いのか?
メイヴィスが何か納得できないモヤモヤした気持ちを抱えていると、騎士団長のグリードが執務室を訪れた。
「どうしたグリード、何かあったのか?」
グリードを見たギガはメイヴィスの隣に座り直した、グリードはメイヴィスの対面に座ると話をし始める。
「先日 王都の外れでジョンとショーネシーが捕縛した野盗達が、幾つかの商会や貴族の名前を連ねたリストを所持していました、作成者は不明ですが、リストは襲撃のし易さで区別されており、明らかに窃盗を目的として作られた物です」
グリードの話の内容にギガもメイヴィスも驚いた、メイヴィスはリストについてグリードに問う。
「そのリストが窃盗目的と云うのは、確実性が高いのか?」
「はい、念の為に騎士達にリスト先を巡回させると、リストの貴族邸が夜盗に襲われる所に行き当たり、賊を捕縛するという事が有りました」
どうやらグリードの言う通り、窃盗目的のリストに間違い無さそうだ。
「そのリストを見せて貰えるか?」
メイヴィスはグリードからリストを受け取ると、そこに連ねられている名前を視認する。
「評判の良くない者達ばかりだな」
「はい、悪評の多い富裕層ばかりです」
メイヴィスが感じたままを言うと、グリードも同調してきた、興味をそそられたギガが横からリストを覗き込む。
「それで、どうするつもりだ、グリード」
「暫くリストアップされた場所を、騎士達に交代で見回りをさせます」
「そうだな、実害を予防しつつリストの作成者を探るしか無いか」
グリードの現実的な案にメイヴィスも頷いた、襲われる相手が分かっている分、逆に対処がし易いとも言える。
「それと、別件でもう一つ気掛かりな事が、御前試合の予選で不正が行われている可能性が有るのです」
予選で騎士が不正とは、にわかには信じ難い話だ、グリードの表情も強張っている。
「可能性という事は未だ疑いの段階なのか、具体的な話を聞こう、続けてくれグリード」
メイヴィスがグリードに続きを促した、ギガも静かに話を聞いている。
「ある若い団員が年上の実力者を倒して、四回戦まで勝ち上がりました」
「凄いな、強くなったんだな」
若者の成長が嬉しくてメイヴィスは顔を綻ばせる、反対にグリードは苦々しげな顔で答える。
「いえ、彼は弱いです」
「言っている事が変だぞ グリード、弱かったら勝てないだろう」
チグハグな問答にメイヴィスも話を聞いていたギガも困惑するが、グリードは真面目な顔で話を続ける。
「明らかに実力が劣る者が、弱いまま勝ち上がると云う、謎の現象が起きているのです」
「謎の現象?、また変な事を言い出したな」
メイヴィスとギガは話の先が見えずに困惑するが、グリードは真剣で眼光も鋭く語気を強めて言葉を発した。
「彼が強くなったのでは無く、対戦相手が弱くなったのです」
「…………それ真面目な話か?」
最早グリードの話は現実味がなさ過る、勿論グリードがふざけている筈は無いが、メイヴィスはつい口に出た。
「私も半信半疑ですから、信じて頂けなくても仕方有りません。しかし、何らかの不正が行われているのなら怪しい動きが有るはずです、それで暗部に彼の身辺調査を依頼したいのです」
グリードの真剣な様子に、暗部の長を務めるメイヴィスも気を引き締めた。
「良いだろう、身辺は暗部に探らせるとしても、先に不正行為自体を暴いて失格にした方が良いのではないか?」
メイヴィスがグリードに質問をすると、グリードは困った様な、情けない様な顔で答えた。
「不正の方法が特定出来ないのです、まだ疑いの段階ですから失格にも出来ません、次の試合を見て不正方法を探る予定です」
本当に不正を働いているがどうかも分からないのだ、慎重に行動をしなくてはいけない。
「丁度ギガもいる事だし一緒に考えよう、彼の話を聞かせてくれないか、不正を疑い始めたきっかけは何だ?」
「きっかけは、一番隊の小隊長が二回戦で彼に敗北した事でした……」
グリードから予選の試合について話しを聞き、三人で不審な点を考察し始めた。
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