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番外編 深遠な王太子 メイヴィス & 周囲の人々
魔法省の友人ギガ❷
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雑談を始めて直ぐに、ギガが小瓶に入った液体を持ってきた。
「メイ、ちょっと疲れてるだろ、元気になるからこれを飲め」
ギガは喋りながらピンク色の飲み物をメイヴィスに渡す、メイヴィスは得体の知れない液体を胡散臭げに見る。
「何だこれは、新作か?」
ギガは一種の変人で、食べ物から魔導具まで色々研究して、見た事が無い物を生み出している。
「これは元気が出る回復薬だ、材料はお前の孤児院にある薬草園から貰った。安全だから黙って飲め」
メイヴィスは一口飲んでみた、不味くはない寧ろ飲みやすくて、万人受けする味だった。
「回復薬としてのランクはどれ位だ?」
「初級から中級位か、頑張れば孤児院の収入の足しに出来るかもな」
それは喜ばしい、ある程度の収入が見込めれば大人の保護施設としても機能する希望がみえる。
メイヴィスはピンク色の回復薬を飲み干した、確かに疲労回復の効果を感じる。
体の疲れを取ってくれたギガが、心を疲れさせる話を始めた。
「窃盗団?」
雑談していたギガの口から物騒な話が出てきて、懸念を感じたメイヴィスが聞き返す。
「さっきの盗難じゃ無いけど、窃盗団が遂にアストラルにも来たらしい、その内この国にも来るかもな」
ギガが話しているのは、ここ最近各国に出没している広域窃盗団の事だ。
貴族邸や裕福な商家を狙って、乱暴な手口で襲うと金目の物を奪い去る。
北の方から南下して、各国を移動しながら犯行を繰り返す、殺人も厭わない凶悪な窃盗集団だ。
「そうか、とうとうアストラルまで来たのか」
各国を移動しての犯行と、一ヶ国での犯行期間が数日間と短い為に、中々窃盗団の尻尾が掴めずにいる、被害にあった国々も何も出来ずに、手をこまねいていた。
「ああ、王国記念日の祭りで国全体が浮かれていた所を狙われたんだ、国民が楽しみにしていた祭りの日に、血が流れるなんて酷い話だ」
自国で起きた蛮行が許し難いのだろう、ギガは険のある顔をしていた。メイヴィスは窃盗団について思慮をする。
「どこも祭りやそれに準じた日が狙われていたな、我が国も御前試合の日は王都の警護が手薄になる」
メイヴィスの独り言にギガが答える。
「確か、ジュールでも近く有名な祭りがあるんじゃなかったか?」
ギガのアストラルはラグランドの隣国だが、その反対側に位置する隣国がジュールだ。
「ああ、花祭りだ。うちも危険だがジュールも危険だな、今のうちに何らかの対策をしておく必要が有りそうだ」
窃盗団の話で深刻な空気だった二人だが、ここでギガが気分を一新させた。
「そうだな、話しは変わるが遠隔魔法陣の件はどうする?、必要なら改良して試作品を作って見るか?」
メイヴィスは軽く悩んでギガに相談する。
「どうするかな。今の守護石とは全く違う別物にしたい、守護と合わせて攻撃も加える事が出来るか?」
「今のは守護で攻撃を弾いているが、攻撃する事で守護すると言う事か?」
ギガはメイヴィスの言わんとしている事を確認する。
「守護の力で攻撃を弾き飛ばしてはいるが、守護出来るのは一回で、弾き飛ばされた相手や別の相手にまた襲われた場合は護れない」
「今の守護石ではそうだな、それで?」
「攻撃を受けた瞬間にこちらも攻撃を発動する、そして何度かそれを繰り返せるようにしたい、出来るかな?」
メイヴィスの提案に今度はギガが軽く悩んだ。
「色々組込むと石が大きくなり過ぎる、メイの魔力を多く込める必要があるし、石の選定も難しいな、実用的じゃない」
悩むギガを相手にメイヴィスが続けて提案する。
「遠隔魔法陣と守護を外して、攻撃のみで作れないか?」
「ああ、それなら出来るかもな、でもまず試作して見ないと分からない」
悩みつつ妥協点を見つけた二人は、それで合意して、幾つか試作品を作る事になった。
「それじゃ頼むよ、ギガ、試作品が出来たら連絡をくれ」
「ああ、またな。メイ」
ギガから良い返事を貰った所で時間切れになったメイヴィスは、魔法省を後にして執務室へ戻って行った。
「メイ、ちょっと疲れてるだろ、元気になるからこれを飲め」
ギガは喋りながらピンク色の飲み物をメイヴィスに渡す、メイヴィスは得体の知れない液体を胡散臭げに見る。
「何だこれは、新作か?」
ギガは一種の変人で、食べ物から魔導具まで色々研究して、見た事が無い物を生み出している。
「これは元気が出る回復薬だ、材料はお前の孤児院にある薬草園から貰った。安全だから黙って飲め」
メイヴィスは一口飲んでみた、不味くはない寧ろ飲みやすくて、万人受けする味だった。
「回復薬としてのランクはどれ位だ?」
「初級から中級位か、頑張れば孤児院の収入の足しに出来るかもな」
それは喜ばしい、ある程度の収入が見込めれば大人の保護施設としても機能する希望がみえる。
メイヴィスはピンク色の回復薬を飲み干した、確かに疲労回復の効果を感じる。
体の疲れを取ってくれたギガが、心を疲れさせる話を始めた。
「窃盗団?」
雑談していたギガの口から物騒な話が出てきて、懸念を感じたメイヴィスが聞き返す。
「さっきの盗難じゃ無いけど、窃盗団が遂にアストラルにも来たらしい、その内この国にも来るかもな」
ギガが話しているのは、ここ最近各国に出没している広域窃盗団の事だ。
貴族邸や裕福な商家を狙って、乱暴な手口で襲うと金目の物を奪い去る。
北の方から南下して、各国を移動しながら犯行を繰り返す、殺人も厭わない凶悪な窃盗集団だ。
「そうか、とうとうアストラルまで来たのか」
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「ああ、王国記念日の祭りで国全体が浮かれていた所を狙われたんだ、国民が楽しみにしていた祭りの日に、血が流れるなんて酷い話だ」
自国で起きた蛮行が許し難いのだろう、ギガは険のある顔をしていた。メイヴィスは窃盗団について思慮をする。
「どこも祭りやそれに準じた日が狙われていたな、我が国も御前試合の日は王都の警護が手薄になる」
メイヴィスの独り言にギガが答える。
「確か、ジュールでも近く有名な祭りがあるんじゃなかったか?」
ギガのアストラルはラグランドの隣国だが、その反対側に位置する隣国がジュールだ。
「ああ、花祭りだ。うちも危険だがジュールも危険だな、今のうちに何らかの対策をしておく必要が有りそうだ」
窃盗団の話で深刻な空気だった二人だが、ここでギガが気分を一新させた。
「そうだな、話しは変わるが遠隔魔法陣の件はどうする?、必要なら改良して試作品を作って見るか?」
メイヴィスは軽く悩んでギガに相談する。
「どうするかな。今の守護石とは全く違う別物にしたい、守護と合わせて攻撃も加える事が出来るか?」
「今のは守護で攻撃を弾いているが、攻撃する事で守護すると言う事か?」
ギガはメイヴィスの言わんとしている事を確認する。
「守護の力で攻撃を弾き飛ばしてはいるが、守護出来るのは一回で、弾き飛ばされた相手や別の相手にまた襲われた場合は護れない」
「今の守護石ではそうだな、それで?」
「攻撃を受けた瞬間にこちらも攻撃を発動する、そして何度かそれを繰り返せるようにしたい、出来るかな?」
メイヴィスの提案に今度はギガが軽く悩んだ。
「色々組込むと石が大きくなり過ぎる、メイの魔力を多く込める必要があるし、石の選定も難しいな、実用的じゃない」
悩むギガを相手にメイヴィスが続けて提案する。
「遠隔魔法陣と守護を外して、攻撃のみで作れないか?」
「ああ、それなら出来るかもな、でもまず試作して見ないと分からない」
悩みつつ妥協点を見つけた二人は、それで合意して、幾つか試作品を作る事になった。
「それじゃ頼むよ、ギガ、試作品が出来たら連絡をくれ」
「ああ、またな。メイ」
ギガから良い返事を貰った所で時間切れになったメイヴィスは、魔法省を後にして執務室へ戻って行った。
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