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番外編 深遠な王太子 メイヴィス & 周囲の人々
突然始まるお茶会
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その日メイヴィスはダルトンの離宮を訪れた帰りに、王太子宮へ戻る近道の庭園に足を踏み入れた。
「あらメイヴィス、貴方も一緒にお茶をしましょう、此方へいらっしゃい」
「メイヴィス!!、久し振りね、相変わらず色男だわ、ここへ座りなさい」
「………母上、叔母上」
メイヴィスは庭園でお茶をしていた二人に捕まった。そして突然のお茶会が始まった。
抵抗するより従う方がマシだろうと判断したメイヴィスは、逆らわずに指定された席へ着いた。
「叔母上、相変わらずお元気そうで何よりです、お二人はどのようなお話しをされていたのですか?」
メイドが紅茶を準備している間に、叔母上に挨拶をする。
「そろそろジュール王国で花祭りがあるでしょう、その話をしていたのよ」
うきうきと楽しそうな叔母上がお喋りの内容を教えてくれ、それを踏まえて母上が私に問うてくる。
「メイヴィス、貴方は花祭りを見た事があったかしら?」
近隣の国々にも知られる有名な祭りで、人気も高く観光客が多く訪れる事は知っている。
「いえ一度もありません、ただ大層美しい祭りだとは聞いています」
私はメイドから紅茶を受け取り、香りを楽しむ。どうやら叔母上の好きな銘柄のようだ。
「即位したら外遊するのは難しくなるから、今の間に行ってみてはどうかしら?」
母上も難しいと分かっているのだろう、遠慮がちに外遊を勧めてきた。
「シャーロットは神殿の仕事がありますから、二人で行くのは難しいですね」
王都中が花で飾られるロマンティックで美しいそれは、若者や恋人達に大人気の祭りで、一人で行くのはやや気が引ける。
「貴方のお祖母様の国のお祭りですからね、一度位は見てもらいたいわ」
母上が珍しく何度も勧めてくる、どうやら私にも花祭りの楽しい思い出を作って欲しいらしい、私はある事を思い出してその話をした。
「実はジュール王国から、王や王妃の制圧を解いた件で改めて御礼をしたいと、花祭りの招待状が届いているのです」
叔母上と母上は顔を見合わせて、にっこり微笑みあい、益々私をけしかけてきた。
「凄いわ!、メイヴィス、王家の招待なら特等席で楽しめるわ!、絶対、行きなさい!」
「素晴らしいわ、是非、招待を受けなさい、この機会を逃しては駄目よ」
母上と叔母上は幼少の頃から何度も花祭りを楽しんでいる、その幸福な思い出が心に残っているのだろう、熱心に薦めてくる。
「日程調整の必要も有りますから、どうなるかは分かりませんが、一応考えて見ます」
前向きに返答をしたものの、ウィリーの前で外遊という言葉を発すれば、確実に彼の黒いオーラを見る事になるだろう。
「お二人は花祭りがお好きですね、母上は無理でしょうが、叔母上は行かれないのですか?」
普段はかしましい二人だが、花祭りで気分が高揚してはしゃいでいる姿は、少女のようで可愛らしい。
「若い方々に楽しんで貰いたいお祭りなのよ、私は遠慮しておくわ。若い頃に散々楽しんだしね」
叔母上が少し寂しげに話すので、私は思わず慰める言葉を掛けた。
「お年はともかく、叔母上は弾ける程お元気で充分お美しいですよ」
すると叔母上が途端に元気になる。
「ほほほほ、当たり前ですよ。貴方の子供を見る楽しみが、私を元気にしてくれるのです」
「まあ、おほほほ、メイヴィス、それは私も楽しみです、期待していますよ」
御婦人方は朗らかに笑って、メイヴィスに強烈な圧力を掛けてくる。
「母上、叔母上、私はまだ婚姻もしていません、それは婚姻後の話です」
苦笑しつつ答えて紅茶を口に含む。
「あら、もう彼女と寝室を共にしてるでしょ」
「母上、口を慎んで下さい」
何故それを母上が知っているのか、王太子の個人情報が筒抜けとは由々しき問題だ、メイヴィスは憮然とする。
「照れない、照れない」
横から叔母上が笑顔で茶化してきた、その楽しそうな顔を見たら気持ちが緩む。
叔母上は幼少の頃から私を可愛がってくれた、子供好きの彼女は本当に楽しみにしているのだろう。
「母上、叔母上、そう揶揄わないで下さい、いずれ必ずその時は来ますので、緩りとお待ち下さい」
「そんなに待てないわよ!」
「そうよ、早く見たいわ!」
のんびり構えている私に、叔母上と母上が勢い込んで催促してくる。
そして、親密度が高い方が子供を授かり易いと云う持論から、親密度を高める方法をアレコレと私に指南し始めた。
母上と叔母上の熱血指導は長時間に及び、私の戻りが遅い事を心配したウィリーが探しに来て、ようやく私は解放されたのだった。
「あらメイヴィス、貴方も一緒にお茶をしましょう、此方へいらっしゃい」
「メイヴィス!!、久し振りね、相変わらず色男だわ、ここへ座りなさい」
「………母上、叔母上」
メイヴィスは庭園でお茶をしていた二人に捕まった。そして突然のお茶会が始まった。
抵抗するより従う方がマシだろうと判断したメイヴィスは、逆らわずに指定された席へ着いた。
「叔母上、相変わらずお元気そうで何よりです、お二人はどのようなお話しをされていたのですか?」
メイドが紅茶を準備している間に、叔母上に挨拶をする。
「そろそろジュール王国で花祭りがあるでしょう、その話をしていたのよ」
うきうきと楽しそうな叔母上がお喋りの内容を教えてくれ、それを踏まえて母上が私に問うてくる。
「メイヴィス、貴方は花祭りを見た事があったかしら?」
近隣の国々にも知られる有名な祭りで、人気も高く観光客が多く訪れる事は知っている。
「いえ一度もありません、ただ大層美しい祭りだとは聞いています」
私はメイドから紅茶を受け取り、香りを楽しむ。どうやら叔母上の好きな銘柄のようだ。
「即位したら外遊するのは難しくなるから、今の間に行ってみてはどうかしら?」
母上も難しいと分かっているのだろう、遠慮がちに外遊を勧めてきた。
「シャーロットは神殿の仕事がありますから、二人で行くのは難しいですね」
王都中が花で飾られるロマンティックで美しいそれは、若者や恋人達に大人気の祭りで、一人で行くのはやや気が引ける。
「貴方のお祖母様の国のお祭りですからね、一度位は見てもらいたいわ」
母上が珍しく何度も勧めてくる、どうやら私にも花祭りの楽しい思い出を作って欲しいらしい、私はある事を思い出してその話をした。
「実はジュール王国から、王や王妃の制圧を解いた件で改めて御礼をしたいと、花祭りの招待状が届いているのです」
叔母上と母上は顔を見合わせて、にっこり微笑みあい、益々私をけしかけてきた。
「凄いわ!、メイヴィス、王家の招待なら特等席で楽しめるわ!、絶対、行きなさい!」
「素晴らしいわ、是非、招待を受けなさい、この機会を逃しては駄目よ」
母上と叔母上は幼少の頃から何度も花祭りを楽しんでいる、その幸福な思い出が心に残っているのだろう、熱心に薦めてくる。
「日程調整の必要も有りますから、どうなるかは分かりませんが、一応考えて見ます」
前向きに返答をしたものの、ウィリーの前で外遊という言葉を発すれば、確実に彼の黒いオーラを見る事になるだろう。
「お二人は花祭りがお好きですね、母上は無理でしょうが、叔母上は行かれないのですか?」
普段はかしましい二人だが、花祭りで気分が高揚してはしゃいでいる姿は、少女のようで可愛らしい。
「若い方々に楽しんで貰いたいお祭りなのよ、私は遠慮しておくわ。若い頃に散々楽しんだしね」
叔母上が少し寂しげに話すので、私は思わず慰める言葉を掛けた。
「お年はともかく、叔母上は弾ける程お元気で充分お美しいですよ」
すると叔母上が途端に元気になる。
「ほほほほ、当たり前ですよ。貴方の子供を見る楽しみが、私を元気にしてくれるのです」
「まあ、おほほほ、メイヴィス、それは私も楽しみです、期待していますよ」
御婦人方は朗らかに笑って、メイヴィスに強烈な圧力を掛けてくる。
「母上、叔母上、私はまだ婚姻もしていません、それは婚姻後の話です」
苦笑しつつ答えて紅茶を口に含む。
「あら、もう彼女と寝室を共にしてるでしょ」
「母上、口を慎んで下さい」
何故それを母上が知っているのか、王太子の個人情報が筒抜けとは由々しき問題だ、メイヴィスは憮然とする。
「照れない、照れない」
横から叔母上が笑顔で茶化してきた、その楽しそうな顔を見たら気持ちが緩む。
叔母上は幼少の頃から私を可愛がってくれた、子供好きの彼女は本当に楽しみにしているのだろう。
「母上、叔母上、そう揶揄わないで下さい、いずれ必ずその時は来ますので、緩りとお待ち下さい」
「そんなに待てないわよ!」
「そうよ、早く見たいわ!」
のんびり構えている私に、叔母上と母上が勢い込んで催促してくる。
そして、親密度が高い方が子供を授かり易いと云う持論から、親密度を高める方法をアレコレと私に指南し始めた。
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