67 / 88
番外編 深遠な王太子 メイヴィス & 周囲の人々
副団長は胃が痛い
しおりを挟む
フィリップ・ショーネシーは騎士団棟の一室で自分の身を嘆いていた、若き副団長の胃はシクシクと痛んでいる。
原因はある部下が、ほぼ八つ当たりに近い苦情を言ってくる事にあった、しかしその主張にも一理あり筋違いとも言えない。
そう、ショーネシーの実力が副団長として不十分だと、ジョンが責めている件だ。
ショーネシーの実力は充分に有るのだが、ジョンに比べれば劣る、他の部下が言うなら筋違いだが、ジョンが言うなら一理ある。
そもそもジョンの方が実力が上なのだ、自分は水の魔力、ジョンは氷の魔力、魔力戦なら水の上位の氷が勝つに決まってる、剣術や体術どれを取ってもジョンの方が上だ。
そう俺は圧倒的に弱い
……立場も年齢も上なのに、呼び捨てにされるのはそのせいなのか?……
ショーネシーはシクシクと痛む胃を押さえながら、埒も無い事をダラダラと考える、覇気の無いその姿はとても頼りない。
……大体、あの二人は勝手が過ぎる……
ジョンとチャーリーは本当なら小隊長になっている筈なのに、ただの騎士の方が自由が効くと断り続けているのだ。
……グリード団長も色々と丸投げしてくるし、西の辺境だって団長が残って俺とあの二人で良かったじゃないか、恨みを買ったのは団長のせいだ……
グリードが王太子命令で同行した事を知っていても、ショーネシーの心の愚痴は止まらない、胃のシクシクも止まらない。
…仮面伯爵の時だって、伯爵家の事以外は全部俺に丸投げしてきたし、王都の警護全部だぞ!………頑張ったな、偉いぞ、俺………よくやった、俺……すごいぞ、俺!、やれば出来るぞ、俺!!
頑張っても誰も褒めてくれないショーネシーは、自分で自分を褒めた。
気分が良くなり胃のシクシクも落ち着いた。
金髪碧眼で整った容姿を持つショーネシーと、藍色の髪と瞳をした涼やかな容姿のジョンは、巷の女性人気を二分している。
「ショーネシー、鍛錬するぞ!」
……………今日も来た
ショーネシーはここ最近、ジョンに扱かれる日が続いている、再びシクシクと胃が痛み始めた時に、部下が急ぎの報告をしに来る。
「副団長!、王都の外れで商隊が襲われて、警ら隊から至急の応援要請が入りました、風魔法の使い手がいるそうです」
それを聞いたショーネシーの顔がピリリッと引き締まり、別人のように凛とした雰囲気になる。
「団長には報告したか?」
部下に確認しつつ自身の装備を確認して足早に移動する。早さについていけず部下は小走りに後を追いかけて報告を続ける。
「いえ、団長は王太子殿下の元に行かれたままで、まだ報告出来ていません」
「分かった、俺とジョンで応援に向かう、お前は団長が戻ったらその旨を報告しろ、聞いたかジョン、出るぞ!!」
ショーネシーは近くにいる筈のジョンに声を掛ける、その姿は胃痛に嘆いていた先程までとは違い、力強さと威厳に満ちている。
「ああ、早くしろ、ショーネシー」
どちらが上か分からない物言いだが、ジョンは既に準備万端で、二人が乗る馬まで連れていた。
……流石はジョン初動が早い、正に疾風……
ショーネシーは内心舌を巻いたが、そんな素振りは見せずに、詳しい場所を部下に確認すると、二人で現地まで早駆けした。
「ショーネシー、風魔法の使い手を目視出来たら、直ぐに水浸しにしろ」
馬上でジョンが指示をしてくる、立場も年も俺の方が上だが、まあいい。
「それは良いが、どうする気だ?」
「戦う間、邪魔されないよう先に凍らせておく。僕一人でも充分出来るが、水を凍らせる方が早くて楽だからな」
自分だけで出来るのに何故ワザワザ俺を使う、俺の心のモヤモヤを感じたのかジョンが真顔で言う。
「これも鍛錬だ、ショーネシー」
……お前は俺の師匠なのか?……
暫く黙って早駆けすると、前方に小さく小競り合いをしている姿が見えてきた。
窃盗団が馬車の荷を持ち出し、風魔法の使い手が応戦する警ら隊の邪魔をしていた、商隊は物陰に隠れているようだ。
「ショーネシー」
ジョンが催促をしてくる、俺は風魔法の使い手を球形の水で包んだ。
「ウォータースフィア」
「氷結縛弾」
俺が放った水魔法を使って、すかさずジョンが相手を凍らせる。
突然の出来事に現場は混乱した様だが、訓練された警ら隊は直ぐに盛り返して、俺達がつく頃には片がついていた。
警ら隊の隊長が挨拶をしてくる。
「ショーネシー殿、応援有難うございます、魔力持ちさえいなければ早々に取り押さえられたのですが、あれに苦戦しまして面目有りません」
「いや、皆んな怪我が無くて良かった、では後の事は任せたぞ」
俺は馬上から会話を交わした、ジョンは魔力持ちの氷を解かして魔力封じの手枷を付けている。
「御前試合を楽しみにしております、お二人とも頑張って下さい」
「ああ、有難う、では失礼する」
励ましの言葉を受け取って馬の向きを変えると、戻ってきたジョンと一緒に来た道を引き返す、その道すがら横に並んだジョンが一言放った。
「戻ったら、鍛錬だ」
実に執念深い男だ。
原因はある部下が、ほぼ八つ当たりに近い苦情を言ってくる事にあった、しかしその主張にも一理あり筋違いとも言えない。
そう、ショーネシーの実力が副団長として不十分だと、ジョンが責めている件だ。
ショーネシーの実力は充分に有るのだが、ジョンに比べれば劣る、他の部下が言うなら筋違いだが、ジョンが言うなら一理ある。
そもそもジョンの方が実力が上なのだ、自分は水の魔力、ジョンは氷の魔力、魔力戦なら水の上位の氷が勝つに決まってる、剣術や体術どれを取ってもジョンの方が上だ。
そう俺は圧倒的に弱い
……立場も年齢も上なのに、呼び捨てにされるのはそのせいなのか?……
ショーネシーはシクシクと痛む胃を押さえながら、埒も無い事をダラダラと考える、覇気の無いその姿はとても頼りない。
……大体、あの二人は勝手が過ぎる……
ジョンとチャーリーは本当なら小隊長になっている筈なのに、ただの騎士の方が自由が効くと断り続けているのだ。
……グリード団長も色々と丸投げしてくるし、西の辺境だって団長が残って俺とあの二人で良かったじゃないか、恨みを買ったのは団長のせいだ……
グリードが王太子命令で同行した事を知っていても、ショーネシーの心の愚痴は止まらない、胃のシクシクも止まらない。
…仮面伯爵の時だって、伯爵家の事以外は全部俺に丸投げしてきたし、王都の警護全部だぞ!………頑張ったな、偉いぞ、俺………よくやった、俺……すごいぞ、俺!、やれば出来るぞ、俺!!
頑張っても誰も褒めてくれないショーネシーは、自分で自分を褒めた。
気分が良くなり胃のシクシクも落ち着いた。
金髪碧眼で整った容姿を持つショーネシーと、藍色の髪と瞳をした涼やかな容姿のジョンは、巷の女性人気を二分している。
「ショーネシー、鍛錬するぞ!」
……………今日も来た
ショーネシーはここ最近、ジョンに扱かれる日が続いている、再びシクシクと胃が痛み始めた時に、部下が急ぎの報告をしに来る。
「副団長!、王都の外れで商隊が襲われて、警ら隊から至急の応援要請が入りました、風魔法の使い手がいるそうです」
それを聞いたショーネシーの顔がピリリッと引き締まり、別人のように凛とした雰囲気になる。
「団長には報告したか?」
部下に確認しつつ自身の装備を確認して足早に移動する。早さについていけず部下は小走りに後を追いかけて報告を続ける。
「いえ、団長は王太子殿下の元に行かれたままで、まだ報告出来ていません」
「分かった、俺とジョンで応援に向かう、お前は団長が戻ったらその旨を報告しろ、聞いたかジョン、出るぞ!!」
ショーネシーは近くにいる筈のジョンに声を掛ける、その姿は胃痛に嘆いていた先程までとは違い、力強さと威厳に満ちている。
「ああ、早くしろ、ショーネシー」
どちらが上か分からない物言いだが、ジョンは既に準備万端で、二人が乗る馬まで連れていた。
……流石はジョン初動が早い、正に疾風……
ショーネシーは内心舌を巻いたが、そんな素振りは見せずに、詳しい場所を部下に確認すると、二人で現地まで早駆けした。
「ショーネシー、風魔法の使い手を目視出来たら、直ぐに水浸しにしろ」
馬上でジョンが指示をしてくる、立場も年も俺の方が上だが、まあいい。
「それは良いが、どうする気だ?」
「戦う間、邪魔されないよう先に凍らせておく。僕一人でも充分出来るが、水を凍らせる方が早くて楽だからな」
自分だけで出来るのに何故ワザワザ俺を使う、俺の心のモヤモヤを感じたのかジョンが真顔で言う。
「これも鍛錬だ、ショーネシー」
……お前は俺の師匠なのか?……
暫く黙って早駆けすると、前方に小さく小競り合いをしている姿が見えてきた。
窃盗団が馬車の荷を持ち出し、風魔法の使い手が応戦する警ら隊の邪魔をしていた、商隊は物陰に隠れているようだ。
「ショーネシー」
ジョンが催促をしてくる、俺は風魔法の使い手を球形の水で包んだ。
「ウォータースフィア」
「氷結縛弾」
俺が放った水魔法を使って、すかさずジョンが相手を凍らせる。
突然の出来事に現場は混乱した様だが、訓練された警ら隊は直ぐに盛り返して、俺達がつく頃には片がついていた。
警ら隊の隊長が挨拶をしてくる。
「ショーネシー殿、応援有難うございます、魔力持ちさえいなければ早々に取り押さえられたのですが、あれに苦戦しまして面目有りません」
「いや、皆んな怪我が無くて良かった、では後の事は任せたぞ」
俺は馬上から会話を交わした、ジョンは魔力持ちの氷を解かして魔力封じの手枷を付けている。
「御前試合を楽しみにしております、お二人とも頑張って下さい」
「ああ、有難う、では失礼する」
励ましの言葉を受け取って馬の向きを変えると、戻ってきたジョンと一緒に来た道を引き返す、その道すがら横に並んだジョンが一言放った。
「戻ったら、鍛錬だ」
実に執念深い男だ。
1
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【R18】赤ずきんは狼と狩人に食べられてしまいました
象の居る
恋愛
赤ずきんは狩人との待ち合わせに行く途中で会った狼に、花畑へ誘われました。花畑に着くと狼が豹変。狼の言葉責めに赤ずきんは陥落寸前。陰から覗く狩人は……。
ほぼエロのハッピー3Pエンド!
いろいろゆるゆるな赤ずきん、狼はケモノタイプ、狩人は赤ずきんと7歳違い。
ムーンライトノベルズでも公開してます。
【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される
Lynx🐈⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。
律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。
✱♡はHシーンです。
✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。
✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる