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番外編 深遠な王太子 メイヴィス & 周囲の人々
赤い蜥蜴は散歩中
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執務室に居たメイヴィスは、ふと左手に違和感を感じてそちらを見た、左手の小指に赤い蜥蜴がくっ付いていた。
「久し振りに来たな、赤い蜥蜴」
◆◇◆◇◆◇
騎士団長室で執務をこなしていたグリード・ベルクマンは、ふとサラマンディアの気配がない事に気付いた。
「サラマンディア?」
先程までは確かに書類の上にいた筈が、赤い蜥蜴はいつの間にか姿を消していた。
訝しく思ったグリードは、サラマンディアが乗っていた書類を確認する。
身元不明遺体の検分記録書。
「……ああ、またか」
召喚すれば戻るのだが、相手に失礼があってはいけない。グリードは団長室を後にして、心当たりの場所へ向かった。
サラマンディアはベルクマン家の使い魔で、使役する対価としてグリードの魔力を糧としている。
ラグランド王国にある、四つの公爵家の内の一つベルクマン家は、特殊なルールで後継者を決めている。
ベルクマン家と契約しているサラマンディアが選んだ者が当主になるのだ。
グリードには兄と妹がいる、他家ならば長子が嫡子となるが、サラマンディアがグリードを選んだ為、グリードが時期当主となり、兄は当主代理として家を守る事になった。
サラマンディアがどんな基準で選んでいるのかは不明だが、美食家らしい。
蜥蜴なりに美味しい魔力が有るらしく、気に入った魔力があれば時々食べに行く。
目的地についたグリードは、見張りに声をかけて扉をノックをするが返事がない。
蜥蜴の有無を確認するだけなので不在でも構わず入室すると、部屋の主人と蜥蜴が仲良く昼寝をしていた。
「……ふぅ」
グリードは思わず溜め息をこぼす。
部屋の主人、メイヴィス殿下が長椅子に寝転がり、その体の上に赤い蜥蜴が眠っている。
蜥蜴は殿下の魔力を好きなだけ食べたらしく、常より1.5倍位大きくなっている。
「ん、グリードか、赤い蜥蜴を迎えに来たのか?」
メイヴィス殿下が目を覚ました。
「殿下、当家の使い魔が度重なる失礼を致して、申し訳ありません」
グリードは頭を下げて謝罪をする。
「気にするな、ペットみたいで可愛いし、多少魔力を取られても大丈夫だ」
メイヴィスの持つ魔力は膨大で、多少どころか蜥蜴がどれだけ貪ろうと全く問題無い。
殿下は蜥蜴を掴むと起き上がり、テーブルの上へ置いた、蜥蜴は食べ過ぎか未だ眠たいのか動きが鈍い。
ヨロヨロしている蜥蜴を殿下がつつく。
赤い蜥蜴は殿下の魔力が大好物らしく、時々殿下の元を訪れては腹一杯食べている、今回は書類に残った殿下の魔力を嗅ぎつけ、食指が動いたようだ。
「騎士団員の魔力は食べないのか?」
つつかれた蜥蜴が殿下の指を咥える、殿下が指を上げると蜥蜴の体が持ち上がり、自重に負けてボトッと落ちる。
「コレなりに好き嫌いがある様で、騎士団員の魔力は食べませんが、魔法省には出入りをしています」
「グルメな蜥蜴だな?、サラマンディア」
殿下が蜥蜴の口を指でつつくと、パクッと指を咥える、殿下が指を左右に振っても離さない。
「そう言えば、そろそろ御前試合だな」
メイヴィスが赤い蜥蜴を初めて見たのも御前試合だった、陛下の横で観戦していると指に違和感があり、見たら蜥蜴がくっ付いていたのだ。
「はい、近く予選が始まります、騎士団では血気盛んな奴らが騒いでいます」
御前試合は抽選で王国民も観戦出来る、一種のお祭りだ。
「今年は誰が本戦に上がれそうだ?」
「やはり、ジョンとチャーリーは危なげ無く本戦に勝ち上がるでしょう、後は副団長と小隊長あたりでしょうか」
御前試合は娯楽の面もあるが、騎士団の強さを見せて犯罪を防止する目的もある。
「そうか、楽しみだな。グリードは参加しないのか?」
「私は万が一の為に騎士団で待機します、犯罪者にとって試合中はある意味狙い目ですから」
「そうか、グリードの試合も観たかったが仕方がないな、サラマンディア」
メイヴィスの言葉でグリードは赤い蜥蜴を見た。
殿下の指を咥えたままだった赤い蜥蜴は、魔力を食べ過ぎて体が2倍にまで膨らんでいる。
このままではサラマンディアが際限なく殿下の魔力を食べ続けるかも知れない、グリードは慌てて蜥蜴を引き離すと、メイヴィスの執務室を早々に後にした。
「久し振りに来たな、赤い蜥蜴」
◆◇◆◇◆◇
騎士団長室で執務をこなしていたグリード・ベルクマンは、ふとサラマンディアの気配がない事に気付いた。
「サラマンディア?」
先程までは確かに書類の上にいた筈が、赤い蜥蜴はいつの間にか姿を消していた。
訝しく思ったグリードは、サラマンディアが乗っていた書類を確認する。
身元不明遺体の検分記録書。
「……ああ、またか」
召喚すれば戻るのだが、相手に失礼があってはいけない。グリードは団長室を後にして、心当たりの場所へ向かった。
サラマンディアはベルクマン家の使い魔で、使役する対価としてグリードの魔力を糧としている。
ラグランド王国にある、四つの公爵家の内の一つベルクマン家は、特殊なルールで後継者を決めている。
ベルクマン家と契約しているサラマンディアが選んだ者が当主になるのだ。
グリードには兄と妹がいる、他家ならば長子が嫡子となるが、サラマンディアがグリードを選んだ為、グリードが時期当主となり、兄は当主代理として家を守る事になった。
サラマンディアがどんな基準で選んでいるのかは不明だが、美食家らしい。
蜥蜴なりに美味しい魔力が有るらしく、気に入った魔力があれば時々食べに行く。
目的地についたグリードは、見張りに声をかけて扉をノックをするが返事がない。
蜥蜴の有無を確認するだけなので不在でも構わず入室すると、部屋の主人と蜥蜴が仲良く昼寝をしていた。
「……ふぅ」
グリードは思わず溜め息をこぼす。
部屋の主人、メイヴィス殿下が長椅子に寝転がり、その体の上に赤い蜥蜴が眠っている。
蜥蜴は殿下の魔力を好きなだけ食べたらしく、常より1.5倍位大きくなっている。
「ん、グリードか、赤い蜥蜴を迎えに来たのか?」
メイヴィス殿下が目を覚ました。
「殿下、当家の使い魔が度重なる失礼を致して、申し訳ありません」
グリードは頭を下げて謝罪をする。
「気にするな、ペットみたいで可愛いし、多少魔力を取られても大丈夫だ」
メイヴィスの持つ魔力は膨大で、多少どころか蜥蜴がどれだけ貪ろうと全く問題無い。
殿下は蜥蜴を掴むと起き上がり、テーブルの上へ置いた、蜥蜴は食べ過ぎか未だ眠たいのか動きが鈍い。
ヨロヨロしている蜥蜴を殿下がつつく。
赤い蜥蜴は殿下の魔力が大好物らしく、時々殿下の元を訪れては腹一杯食べている、今回は書類に残った殿下の魔力を嗅ぎつけ、食指が動いたようだ。
「騎士団員の魔力は食べないのか?」
つつかれた蜥蜴が殿下の指を咥える、殿下が指を上げると蜥蜴の体が持ち上がり、自重に負けてボトッと落ちる。
「コレなりに好き嫌いがある様で、騎士団員の魔力は食べませんが、魔法省には出入りをしています」
「グルメな蜥蜴だな?、サラマンディア」
殿下が蜥蜴の口を指でつつくと、パクッと指を咥える、殿下が指を左右に振っても離さない。
「そう言えば、そろそろ御前試合だな」
メイヴィスが赤い蜥蜴を初めて見たのも御前試合だった、陛下の横で観戦していると指に違和感があり、見たら蜥蜴がくっ付いていたのだ。
「はい、近く予選が始まります、騎士団では血気盛んな奴らが騒いでいます」
御前試合は抽選で王国民も観戦出来る、一種のお祭りだ。
「今年は誰が本戦に上がれそうだ?」
「やはり、ジョンとチャーリーは危なげ無く本戦に勝ち上がるでしょう、後は副団長と小隊長あたりでしょうか」
御前試合は娯楽の面もあるが、騎士団の強さを見せて犯罪を防止する目的もある。
「そうか、楽しみだな。グリードは参加しないのか?」
「私は万が一の為に騎士団で待機します、犯罪者にとって試合中はある意味狙い目ですから」
「そうか、グリードの試合も観たかったが仕方がないな、サラマンディア」
メイヴィスの言葉でグリードは赤い蜥蜴を見た。
殿下の指を咥えたままだった赤い蜥蜴は、魔力を食べ過ぎて体が2倍にまで膨らんでいる。
このままではサラマンディアが際限なく殿下の魔力を食べ続けるかも知れない、グリードは慌てて蜥蜴を引き離すと、メイヴィスの執務室を早々に後にした。
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