【R18】傲慢な王子

やまたろう

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第五章 王太子の愛情 メイヴィス×シャーロット❷

2・魔獣の視察と討伐

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 始まりは魔獣の被害報告で、私は参考資料を片手にグリードから話を聞いていた。


「魔獣の被害が多発しているだと?」


 我国にも魔獣は存在しているが、ほぼ棲み分けが出来ているため、人が住む場所を襲撃する事は滅多に無く、また人に害を及ぼすほど凶暴でもない。


「はい、今年に入ってから西の辺境伯領の近くにある森で数件ほど発生しています」


 私はその話にどうにも納得がいかなかった。魔獣が人の居住地を襲うと云う事は、魔獣の住処に何らかの異変が発生していると云う事では無いのか。


「現地からの討伐依頼も来ていますので、一度騎士団の方で視察に行く許可を戴きたいのです」


 魔獣の住処に何らかの異変が起きているとすれば、今後他の魔獣の森にも起きる可能性がある、ならばその異変を調査しなくてはならない。


「許可しようグリード、今回の視察と討伐には私も同行する」


「殿下、危険ですのでお止め下さい。今回の魔獣は既に人間を襲っています、今後も同様に襲って来るかも知れません」


 グリードが深刻な顔で進言してくる。


「解っている、だが如何にも気になる。今までこれほど被害が多発した事は無かった、原因を突き止めなくては今後の対策が立てられない」


 私は意見を突き通して視察と魔獣の討伐に同行する事を決め、騎士団長、騎士数名と共に現地へ赴いた。


「殿下、まず森の周辺から調査します。騎士団から逸れない様に気をつけて下さい」


「ああ、解った」


 魔獣の森は静かで特に異変はなく、近くの居住地にも報告後の被害はこれと言って出ていなかった。ただ調査をする内に森の面積がかなり減っている事に気付き、これが原因の一つではと不審に思い初めた。


 一日目の調査は何事も無く無事に終わり、翌日も異変を感じる事なく調査を終えて引き上げようとしていた所に、突然纏まった数の魔獣が森から現れて狂った様に襲いかかって来た。


「魔獣が出たぞ!」


「殿下、お下がりください!、全員殿下を守護しつつ、魔獣を討伐しろ!」


 今回の遠征には攻撃魔法を使える手練れの魔法剣士を選んで連れて来たので、我を失った多数の魔獣相手でも何とか制圧出来た。


 後方で戦いを見守っていた私の眼が、森の一点に何かを運んでいる人影を捉えた。森の面積が人為的に縮小していた事が頭を過ぎった私は確かめるべく動き出す。


「殿下、危険です。動かないで下さい、まだ魔獣が近くにいる可能性があります」


「大丈夫だ、グリード。直ぐに戻る」


 私は止めるグリードを振り切って駆け出した。だがその怪しい人影を確かめる前に、別の方向から女性の悲鳴が聞こえてきたので、そちらへ方向を切り替える。


 怯える女性の姿は確認出来たが、女性の近くにいるらしい魔獣の姿は視認出来なかった、女性は石の様に動かない。


 私は見えない魔獣の討伐よりも、先に女性を保護する事にして彼女の側へ駆け寄った丁度その時に、魔獣が爪を振り下ろす姿が目の端に入る。


 咄嗟に女性を庇って背後に深い外傷を負った、振り向くと通常のワイルドベアよりも更に大きな、デビルズベアが狂った様に暴れている。


 私は剣に雷撃を付与して一撃で魔獣を倒したが、魔獣から受けた傷が深くてそこで力尽きて倒れた、体が動かなくなり仕方なくその場で救助を待つ。


 そこで私は運命の人と出逢った。


 考えてみれば、私を見ると気絶するシャーロットが血だらけの私を良く助けられたものだと思う、不意に記憶の中にある彼女のクラクラする甘やかな香りが甦り、私は独りごちる。


「やはり彼女は聖女なのだな」


 人を助けると云う尊い精神、言わば彼女は救済する人だ。自分が雷帝だと知った時に、人を守護する存在になろうと志した私の傍らに相応しい女性だ。


 守護と救済、どちらも人の為に生きる存在。


 あの時あと少しでも私が駆け付けるのが遅かったら、生きた彼女とは出会えなかった。そして私も助けた人が彼女では無かったら、恐らく生きてはいなかっただろう。


 私とシャーロット、どちらかが欠けていたら、どちらかが死んでいた。誰でも無い私達二人だったからこそ今寄り添えているのだ。シャーロットと共に過ごす時間が増える程に私はこんな風に、彼女が私の運命の人なのだと知っていく。


 私が倒したデビルズベアはおそらく森の主だと思われた、後で調査すると森にはもう魔獣はおらず、以後魔獣の被害は出ないと判断して遠征は終了となった。


 シャーロットに治癒して貰って体の傷は塞がったが、多くの血を失った私の体は暫くは安静にする必要があり、あの森に関する些細な気掛かりは今もそのままとなっている。


 メイヴィスが物思いに耽っていると、扉をノックする音が聞こえて待っていた男が現れた。


「メイヴィス殿下、騎士団長グリード、只今参上しました」






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